試乗記

日産ノート オーラ「オーテック スポーツスペック」が追求する走りの“上質さ”と“爽快感”を味わう

2025年2月4日 発売

319万8800円

ノート オーラ オーテック スポーツスペックに試乗

NISMOとは異なる味付けとは?

 日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が、日産ノート オーラの「AUTECH SPORTS SPEC(オーテック スポーツスペック)」を発表した。同社はNISMOブランドとAUTECHブランドの市販モデルを同時に開発しており、今回のクルマはAURAをベースにしているという触れ込みではあるが、事実上はAURA NISMOの兄弟車といえる内容が並んでいる。中でもショックアブソーバーやバンプラバー、パワーステアリングのアシスト特性やVDC (ビークル・ダイナミクス・コントロール)の設定はNISMOと共用となっている。

 けれども「プレミアムスポーティコンパクト」をコンセプトとするこのクルマは、NISMOとは目指す方向性が大きく異なる。結果として使うアイテムもそこから先はまるで違う。タイヤはNISMOがミシュランの「パイロットスポーツ4」なのに対し、オーテック スポーツスペックはミシュランの「e-Primacy」を使用。ホイールサイズもNISMOのほうが0.5J幅広だ。

ノート オーラ オーテック スポーツスペック。ボディカラーはオーテック専用色となる「オーロラフレアブルーパールとスーパーブラックの2トーン
ボディサイズは4085×1735×1505mm(全長×全幅×全高)、全高は通常モデルより20mm低くなっているほか、最低地上高も130mmと通常モデルより15mm下がっている

 また、リアバンパー内側にある補強パーツはNISMOがバータイプなのに対し、オーテック スポーツスペックはYAMAHAのパフォーマンスダンパーをチョイスしている。さらにパワートレーンもまたVCM(ビークル・コントロール・モジュール)によりセッティングを変更。これはオーテック スポーツスペック専用となり、エコ、スタンダード、スポーツ全てがベースモデルとは異なる設定。もちろんNISMOとも違うそうだ。

専用アルミホイールは17インチ×6.5J(インセット+40、P.C.D:100の4穴)、タイヤはミシュランの「e-Primacy」
リアに大型スポイラーを備え、空力特性を向上させている
テールゲートには「AUTECH SPORTS SPEC」のエンブレムが配される
室内の専用プレートには「TUNED BY NMC」の文字が刻まれている

 AUTECHとしてお馴染みとなりつつある湘南の海をモチーフとしたエクステリアは、ガチガチのスポーツじゃなく明らかにプレミアムな世界観を狙っていると受け取れる。NISMOと共通しているのは大型のリアスポイラーくらいなもので、これは見た目だけじゃなく機能としても外せなかったのだろうと推測する。

 専用スプリングを装着することで20mmの車高ダウンをしたこともあって、かなり安定感あるスタイルに仕上がっている。ちなみにスプリングレートはベースモデルに対してフロント約30%アップ、リア40%アップとなる。

オーテック スポーツスペックの走りのコンセプト
NISMOと違い
NISMOとの性能の作り分け
達成手段……シャシー、パワートレーン
達成手段……ボディ、空力特性
走行中の車体の変形や不快なノイズ・振動を効果的に吸収してくれる「パフォーマンスダンパー(ヤマハ製)」の内部

すべての領域でクルマとの対話がきちんと行なえる

 試乗当日は走り始めた瞬間から豪雨に見舞われたが、そこでも安心して楽しめそうなところがまずは好感触だ。パワートレーンはどのモードを選択したとしてもアクセルにリニアな応答がありつつ、エコからスタンダード、スタンダードからスポーツに引き上げると程よく反応と伸び感が増してくるイメージ。とても操りやすい。

どのモードを選択してもアクセルはリニアに応答してくれるので気持ちいい

 ロールとピッチを程よく収めた足まわりは、荷重移動が理解しやすく、その一方で動きすぎないという絶妙なサジ加減があり、路面状況のわるさが苦にならずに運転を楽しめてしまう。コントロール幅が広いこともまた好感触だ。

 乗り心地がハードすぎないところも嬉しい仕上がり。すべての領域においてクルマとの対話がきちんと行なえる感覚がある。おかげで最終的には路面がわるいにも関わらず、電欠マークが出てしまうほどアクセルを踏んでしまった。それくらい悪条件であっても危うさを感じることなくドライビングに没頭できるということだろう。

どんな路面状況でもコントロール性が高い
あいにくのウェット路面だったが、楽しくてついついアクセルを踏む量が増えていた

 これはNISMOじゃハードすぎるとか、もっと大人なクルマに乗りたいというユーザーにはかなりオススメな1台じゃないかと思えた。同じAURAであっても味付けの変更によって、これだけ方向性の違うクルマがあるのも面白い。ちょっと言い過ぎかもしれないが、BMWで言うところのMとアルピナみたいな立ち位置の違いが間違いなくそこにあった。

今のノーマル オーラやオーラ オーテックに物足りなさを感じているなら、ぜひ1度試乗してみてほしい
オーラAUTECH SPORTS SPEC発表(5分55秒)
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学