山田弘樹のスバル「クロストレック」ストロングハイブリッド徹底レポート

第3回:乗り味を変えたくて「STIフレキシブルドロースティフナー リア」を装着するため、三鷹に行ってきた!

STIの柏井健太郎さん(左)に話を聞きながら、ニュルブルクリンク24時間レースに選抜メカニックとして参戦した経験もある東京スバル三鷹店の三上嵩メカニック(右)に「STIフレキシブルドロースティフナー リア」を取り付けてもらった

「クロストレック S:HEV」に“リニアリティ”が欲しい!!

 ストロングハイブリッドを搭載した「クロストレック S:HEV」の熱烈連載3回目は、「いざ、聖地へ」。クロストレック用にラインアップされる「STIフレキシブルドロースティフナー リア」を装着するために、東京スバル 三鷹店へと赴いた。

 STIフレキシブルドロースティフナーを装着しようと思ったのは、まず筆者がこれまで数々のSTIパーツ装着車を試乗して、その効果を体感していたから。そしてクロストレック S:HEVのハンドリングに、もうちょっとだけリニアリティが欲しいと常々思っていたからだ。

「リニアリティって、なに?」

 それは操舵応答性が、自然なこと。連載第1回でもインプレッションしたが、クロストレックの乗り味は、ひとことで言うと“大らか系”。クロスオーバーSUVならではのたっぷりとしたサスペンションストロークを生かして、どんな道でもふんわり・しなやかな乗り心地を実現しているのが、ひとつの大きな特徴である。

 ただこうしたクロスカントリー的な足まわりが、デコボコしていない路面だと、ステアリングレスポンスを若干鈍くしてしまっているのも事実。いったんコーナリング体制に入ってしまえば抜群の応答性を発揮するのだけれど、このふんわりとした足まわりがその領域まで縮むのに、少し時間がかかるのだ。

 結果として、ハンドルを切った初期の手応えも薄くなる。街中のように速度域が低ければタイヤのグリップ力だけでもスイスイと曲がれるけれど、速度が上がってくるに従い、応答性が鈍くなってしまうのだ。

 クロストレックはアウトドア志向のクルマだし、よりスポーティな走りを望むなら、車高が低いインプレッサを選べば良いというのもわかる。しかし、残念なことにインプレッサには、ストロングハイブリッドは設定されていない。それに、いま乗るならやっぱり、背の高いコンパクトSUVを選びたいじゃないか。

 そんなとき、STIパーツの存在を思い出した。そして、これを体験させてもらえることになったのだった。

 ちなみに筆者が今回装着したいと考えたのは、「フレキシブル系」と呼ばれるシャシー用のパフォーマンスパーツたち。しかしクロストレック S:HEVには、「フレキシブルドロースティフナー リア」の設定しかなかった。

フレキシブルドロースティフナー リアの取り付けに協力してくださったのは、同じ敷地内にSTIの本社もある東京スバル三鷹店

 というわけでCar Watch号には、「フレキシブルドロースティフナー リア」を装着することになったわけだが。ここで「フロントの応答性を上げたいのに、リア用パーツを着けても意味なくね?」と突っ込んでくれた読者のアナタ、とっても鋭い。

 最初は筆者もそう思っていて、あー企画倒れに終わっちゃったなぁ……と思ったのだけれど、STIいわく「リアに着けても、ハンドリングは良くなります!」というのである。

 え、まぢデスか? それは、興味津々。だったら根掘り葉掘り、聞いてみよう! ということになり、当日はSTIのお膝元である三鷹で、STI 車両実験部 車両実験グループの柏井健太郎さんにお話を聞けることになったのだった。

STI 車両実験部 車両実験グループの柏井健太郎さん。フレキシブルパーツのことを含め、STIパーツについて根掘り葉掘り聞いたあと、取り付けにも同席してもらってあれやこれや説明してもらった。ちなみに、フレキシブルドロースティフナー リアが初登場したのは現行レヴォーグで、そこから各車に展開。ということもあってか、数的にはレヴォーグの装着率が一番多いのだという

 柏井さんいわく、現状クロストレック S:HEVに「フレキシブルタワーバー」が設定されていないのは、衝突安全上の理由からだという。

「クリアランス的には、装着が可能です。しかしS:HEVはエンジンの上部にPCU(パワーコントロールユニット)があり、衝突時電装系に金属パーツが接触する可能性があるため、現状ではラインアップが見送られています」。

 というわけだ。だからマイルドハイブリッドの「GU」型なら、装着できる(いいなぁ)。また、ストロングハイブリッド用に、通電性のない材料を使うことも検討されている。

 フロント用のフレキシブルドロースティフナーがラインアップされていないのは、アンダーカバーがあるから。クロストレックのアンダーカバーは、車体下部を守りながら、空力性能を高めて燃費を良くするためだろう、かなりきちんと作り込まれていて、ドロースティフナーを付けるスペースが稼げないのだ。

クロストレック S:HEVのアンダーカバーは空力を強く意識した形状になっており、整流効果を高めるフィンや、NACAダクトタイプの冷却孔を備えた上で、下面がしっかりとふさがれている

 ということでようやく「フレキシブルドロースティフナー リア」の登場だが、これはリアバンパーの裏側、ボディ後端にあるサブフレームの左右両端を結ぶパーツだ。ねじ込み式のロッドを締め込んで、サブフレームを引っ張る(ドローイング)ことで、操舵応答性を高めるのが狙いである。

クロストレック S:HEVに取り付けるフレキシブルドロースティフナー リアのパーツ。これだけの部品点数でしっかりと効果を発揮する
取り付けパーツはリアバンパーの裏側(内側)になるので、隠れてしまって見た目にはわからない。ということで、装着していることを示すステッカーが付属する

 その原理は、スプリングにプリロードをかけておくのと同じだ。最初からある程度ボディのしなりを取っておく(スプリングを縮めておく)ことで、入力に対する作動時間が早くなる。だから取り付け場所がリア側でも、ハンドリングが変わるというわけである。

フレキシブルドロースティフナー リアの取り付けは、まず①リアコンビの裏プレートを外す。②バンパーのグロメットを外す。③バンパーが外れたらスティフナーを取り付けるという手順
1時間もかからずに装着されたフレキシブルドロースティフナー リア
外したバンパーを付け直すと、バンパーの内側からでないと見た目にはわからない
プリロードの調整は2mm程度が最適値で、これが5mmくらいになると剛性は上がるけれど操作性が過敏になるという。最後にものさしを使って調整を行なう

 果たしてその効果はというと、これが面白いくらいわかりやすく変わった。柏井さんは「営業所から出るとき、段差を乗り越えるだけでわかりますよ!」と言ってたけれど、まさしくその通りだ。段差を超えて“ドスッ!”と着地したときに、一発でバウンスが収まるようになった。

 そしてステアリングを切ったときの応答性が上がったから、街中での運転がとてもしやすくなった。路肩に駐車したクルマを避けたり、車線変更をするときなど、舵角が少ないときでもクルマが反応しやすくなったのだ。

 対して高速道路など、速度域が上がった状況での操舵応答性は、思ったよりもマイルドだ。ステアリングの切り始めからグーッとリアに荷重が乗って、それをアクセルとステアリングで曲げていく感じ。個人的にはもっとフロントが入っても良いと思ったけれど、変化が大きすぎないのはいいと思う。そして段階的にハンドリング性能を高めていく意味でも、フロントのスティフナーやタワーバーは、ぜひ開発してほしいと感じた。

 トレードオフの面もしっかりあって、段差を超えたときの収束が早くなる分だけ、ショックの伝わり方(特にリア)はダイレクトになった。だから乗り心地も含めて完璧を期すなら、ダンパーの減衰力はもう少し高めにしたいと感じた。

 とはいえノーマル状態とどちらが好み? と聞かれたら、筆者はドロースティフナー付きだ。変更したばかりのときはその変化が楽しくて「断然コッチ!」と思ったが、そこから距離を重ねても、その気持ちは変わらなかった。のんびり走るならノーマルのバウンス感もありだけど、クロストレック S:HEVとの一体感を高めたいならこの「フレキシブルドロースティフナー リア」、かなりおすすめです。

当日は、オイル交換も行なった。ちなみにCar Watch号の走行距離は、この時点で累計約1万2000km。実走行距離は4671kmだった
エンジンオイルはスバル純正の「SUBARU STI Advanced Oil 0W-20」。フィルターも新品にしたので、交換したオイル量は4.5Lくらい。メカニックの三上嵩さんいわく、4000km以上走っても「オイルの状態はまだまだきれい」。普通は5000~1万kmの間で汚れ具合を見ながら交換するとのことだった。筆者的にはかなり走らせたから、そろそろ交換してもいいと思ったのだが、ストロングハイブリッドだからエンジンにあまり負荷がかからないのかもしれない
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。