新東名は「先端技術を集めた世界に冠たる道路に」 NEXCO中日本、記者会見を開催 |
NEXCO中日本は27日、新東名高速道路の御殿場JCT(ジャンクション)~三ヶ日JCTを4月14日に開通すること、開通区間に13のSA(サービスエリア)・PA(パーキングエリア)を開設することを発表した。
同日、NEXCO中日本とグループ会社の中日本エクシスは、都内の同社東京支社で記者会見を開催、新東名高速とSA・PAについて説明した。
■通行料金は値下げに
会見では同社東京広報部の長谷川周三部長が、開通区間の詳細を解説した。
御殿場JCT~三ヶ日JCTの距離は約162km。一気にこれだけの長距離区間を開通区間として最長となる。御殿場JCT、三ヶ日JCTのほか、新清水JCTでも東名高速道路と接続する(東名高速側は清水JCT)。
御殿場JCT |
東名高速道路のこの区間は、交通容量を48,000台/日として設計されているが、現状は74,000台/日で完全に容量オーバー。この数字は2010年の年間平均であり、休日はさらに交通量が増え、渋滞が頻発している。
ここを、東名高速と同じく2×2車線(4車線)の新東名高速で多重化することで、容量は96,000台/日に増え、平均速度が79.5km/hから96.9km/hに上がることが見込まれている。「ゴールデンウィークや夏の繁忙期でも、この区間は渋滞を解消できるのではないか」(長谷川部長)と期待される。
また、東名または新東名のどちらかが通行止めになっても、迂回することができるなど、多重化のメリットは大きい。例えばこの区間の東名高速 由比PA付近は海沿いにあり、高波で通行止めになることがあるが、こうした場合も山側の新東名に迂回することができる。
さらに新東名は山側にあるため、東海地震でも東名よりも震度が低いと予想され、被害を受けにくいとしている。実際、2011年3月11日の東日本大震災では、東名と並行する国道1号が23時間にわたって通行止めになったが、新東名の藤枝岡部IC~新富士ICに消防車などの緊急車両を通して緊急輸送路とした。
なお、新東名の御殿場JCT~三ヶ日JCT間は、東名の同区間より約10km短い。このため通行料金が東名よりも200円安くなる。新東名、東名のどちらを通行しても、距離が短い方の料金が適用されるため、値下げになる。たとえば東京~名古屋の普通車料金は現在7,200円だが、新東名開通後は6,900円になる。
東名にある新東名の案内看板 |
■最高速度は未定
新東名の工事は1993年11月に始まり、18年5カ月で開通に至ったが、「先端技術を集めた世界に冠たる道路にしたい」との意気込みで設計、建設されている。
まず道路はカーブや坂道をゆるやかにし、走行しやすくした。東名のカーブが最小半径300m、最大勾配が5%なのに対し、新東名はそれぞれ3,000m、2%。勾配をゆるくするためと、また東名よりも山側に作られていることもあって、長い橋梁やトンネルが多いが、これらの設計にもさまざまな先端技術が使われ、土木関連の賞を受賞した部分も多い。
高架や長大橋梁が多い新東名。写真は葛山高架橋 | 新富士川橋は土木学会田中賞を受賞した | のり面に堆肥を吹きつける |
設計速度は120km/h。片側3車線として設計し片側2車線で運用するため余裕もあるため、東名では100km/hとなっている最高速度の引き上げが期待されるところだが、これは公安委員会が決めること。「(引き上げを)公安委員会がOKするとは思えない」というのが同社の考えだ。
また、新東名では、1kmピッチでカメラを設置。このカメラには事故車や落下物を自動検知する機能があり、検知するとやはり1kmピッチで設けられた簡易情報板に、前方に障害があることを表示し、ITSスポット(DSRC)でも通知する。
トンネル内の照明には、従来の上から真下を照らすのでなく、やや前方を照らす「プロビーム照明」を採用。これにより前の車が浮きだして明るく見えるようになる。
SA・PAには逆走車の検知装置と表示板を設置。逆走を検知すると、逆走車にその旨を表示して警告する。
さらに、建設のために伐採した樹木の種から苗木を作り、のり面に植えることで元の植生を維持。伐採した樹木は堆肥として、のり面に吹きつけて活用するなど、環境にも配慮している。
■複合商業施設「NEOPASA」を開設
新東名の開通区間には次のようなJCT、IC、SA、PAが設けられる。
施設名 | 備考 |
御殿場JCT | |
長泉沼津IC | |
駿河湾沼津SA | NEOPASA駿河湾沼津 |
新富士IC | |
新清水IC | |
清水PA | NEOPASA清水 |
新清水JCT | |
清水いはらIC | |
清水JCT | |
新静岡IC | |
静岡SA | NEOPASA静岡 スマートIC |
藤枝岡部IC | |
藤枝PA | |
島田金谷IC | |
掛川PA | |
森掛川IC | |
遠州森町PA | |
浜松浜北IC | |
浜松SA | NEOPASA浜松 スマートIC |
浜松いなさJCT | 三遠南信自動車道と接続 |
浜松いなさIC | |
三ヶ日JCT |
開設されるSA・PA |
このうちSA・PAはそれぞれに個性をもたせ、「金太郎飴にならないようにした」(中日本エクシスの開発リーシング部 並木嘉久副部長)。
また駿河湾沼津SA、清水PA、静岡SA、浜松SAには複合商業施設「NEOPASA(ネオパーサ)」が設けられる。これまで同社は「EXPASA(エクスパーサ)」と呼ぶ新しいSA・PAの施設を開設し、SA・PAが旅の目的地となるよう、SA・PAの魅力を高める取り組みを行なってきた。
NEOPASAは基本的にこの延長線上にあるもので、SA・PAではあまりみられないテナントを多数入れ、SA・PAのある地域とのつながりを重視するが、EXPASAよりもゆとりがあり、飲食以外のアパレルや雑貨などのテナントなども入れる。店舗数は13の施設で121にのぼり、うち67は高速道路初出店となる。
例えばNEOPASA駿河湾沼津は、新東名で唯一オーシャンビューで設置されていることから、女性をターゲットとして「リゾートマインド」をコンセプトにする。NEOPASA清水は「くるまライフ・コミュニティーパーク」として、ガレージをモチーフとした建物に、バイク用品のクシタニや、車内で使える雑貨などを扱う玉屋、ユナイテッドアローズなどが出店する。また、駿河湾沼津と浜松にはドッグランとドッグカフェが、静岡にはドッグランが設けられる。
さらに、すべてのSA・PAは一般道からも利用できる「ぷらっとパーク」として整備。一般道用の出入口と駐車場が用意される。
オーシャンビューのNEOPASA駿河湾沼津(下り) | 清水PA | 足柄SAのぷらっとパーク |
【お詫びと訂正】記事初出時、新東名完成後の交通容量を誤って記載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。
(編集部:田中真一郎)
2012年 1月 27日