特別企画

【特別企画】奥川浩彦のWTCC&F1 鈴鹿サーキット撮影ガイド(その3 東コース編)

鈴鹿サーキット東コースの撮影ポイントを徹底解説

 今年もWTCC(世界ツーリングカー選手権)が鈴鹿サーキットにやってくる。日程は9月21日~22日。そして、今年もCar Watch、デジカメWatchが主催のWTCCフォトコンテストが開催される。

 第1回は撮影機材について、第2回は撮影方法について紹介した。第3回となる今回はWTCCが開催される鈴鹿サーキット東コースの撮影ポイントについて紹介したい。次回の第4回はWTCC開催後の掲載となるが、間近に迫ったF1日本グランプリにむけ、鈴鹿サーキット西コースの撮影ポイントの紹介を予定している。

WTCCは2日間で7セッション

 まずはWTCCのスケジュールを確認しておこう。

9月21日(土)カテゴリーセッション
9:00~9:30WTCCフリープラクティス1
9:50~10:20スーパー耐久予選A
10:35~11:05スーパー耐久予選B
11:20~11:40スーパー耐久予選C
12:00~12:30WTCCフリープラクティス2
12:50~13:40ピットウォーク
14:10~14:50スーパー耐久第1レース
15:30~15:50WTCC予選1
15:55~16:05WTCC予選2
9月22日(日)カテゴリーセッション
8:00~8:30スーパー耐久フリー走行
8:50~9:05WTCCウォームアップ
9:45~10:25スーパー耐久第2レース
11:00~11:50ピットウォーク
12:35~13:15スーパー耐久第3レース
14:35~15:00WTCCレース1
15:35~16:00WTCCレース2

 土曜日は30分のフリープラクティスが2回と20分と10分の予選。日曜日は15分のウォームアップと25分ほどの決勝が2回。合計7セッションが行われる。予選1と予選2のインターバルは5分しかないので、ここは大きな移動は難しい。実質的には35分の予選と考えた方がいいだろう。

 WTCCは東コースだけで行われるので、観戦エリアも撮影ポイントもコンパクトにまとまっている。コース長も短くなるため、目の前を何度もマシンが通過するのでシャッターチャンスは多くなるはずだ。

 スーパー耐久も7セッション。合計時間はWTCCより長く3時間半。西コースまで足を運んでヘアピン、スプーンで撮影するなど様々な作戦が立てられそうだ。

WTCCの観戦エリア

 WTCCの観戦エリアを確認しておこう。メインストレートにV1/V2席。その先の1コーナーよりにA席。2コーナーにB席。2コーナーの立ち上がりからS字、逆バンク、ダンロップは自由席。その先のショートカットから最終コーナー走り抜けるコースレイアウトとなっていて、最終コーナー付近も自由席となっている。F1グランプリの指定席名で言うとC/D/E/Q1/Q2/R/S席が自由席となる。

WTCCの観戦エリア

 V1/V2/A/B席は日曜日のみ有料指定席で観戦券と別に1000円となっている。指定席にランチとドリンクがセットになったチケットも販売されていて1500円とお得感たっぷりだ。パドックパス(中学生以上大人1万円)を購入するとインフィールドに3個所設置される激感エリアに入ることができる。

 ではレース写真を撮るという視点で東コースを見ていこう。通常のレースはフルコースで開催されるが、WTCCは東コースで開催される。東コースとは、メインストレート、1、2コーナー、S字、逆バンク、ダンロップまでは普段と同じだが、この先でショートカットして最終コーナーからストレートへ戻るコースだ。

 撮影に不向きなのはメインストレート。それ以外の場所はどこも撮影が可能で、1-2コーナー、S字、逆バンク、最終コーナーはお勧めのポイントだ。3個所ある激感エリアで、撮影にお勧めなのは2コーナーのイン側。残るS字のイン側と最終コーナーのイン側は金網を避けることができない。

向かって左側の柵の中が激感エリア。右側が最終コーナー。右側に柵を移動して、金網側が激感エリア、左側を関係者通路にしてくれると、金網越しだがここも撮影ポイントとなる

 ただし最終コーナーのイン側の激感エリアは、過去2年は金網から離れた位置に柵が設置されていたが、もし金網側にエリアが移動すれば撮影ポイントとして急浮上する。これは当日行ってみないと分からない。以前設置されていたストレートエンドのイン側の激感エリアはなくなっている。

 WTCCの3週間後にはF1日本グランプリも開催されるので、F1の観戦エリアも掲載しておこう。

F1日本グランプリの観戦エリア

 F1グランプリでは激感エリアは設置されない。F1を撮りに行く人の定番撮影ポイントとなったカメラマンエリアは新たにB2席にも設置された。観戦席ではG席の上段にあった仮設スタンドがなくなっている。現地で確認する必要はあるが、G2席がなくなったところは130Rを見下ろせる場所なので、開放されていれば撮影ポイントとなる。では東コースの撮影ポイント順番に見ていこう。

B席(1-2コーナー)

向かって右の下の段がB1席。その上の2階部分と向かって左の少し低くなっているスタンドがB2席

 B席は1階席とその上の2階席に分かれている。2階席の1コーナー側はやや低めの中2階という構造だ。F1開催時は1階はB1席、2階席と中2階はB2席として販売されている。B1席は金網越しにコースを見るので撮影には不向き。B2席は金網の影響を受けにくいので撮影ポイントとなる。

B席1階(B1席)は金網越しとなるので撮影には不向き
B2席の2階席は1~2コーナーを見渡せる
B2席の中2階はストレートから1コーナーに進入してくるマシンを見ることができる

 B2席は通常のレースでは撮影ポイントとしてはそれほどお勧めとは思わないが、WTCCに関しては決勝スタート直後にアクシデントが発生すれば絶好の撮影ポイントとなる。B2席から200mm(320mm相当)のレンズと300mm(480mm)のレンズで撮った写真をトリミングなし、リサイズのみで掲載しておくので画角の参考にしていただきたい。

2階席(B2席)から200mmのレンズで1コーナーを撮影
同じく2階席から300mmで1コーナーから2コーナーへ向かう短いストレートを撮影

 昨年のWTCCフォトコンテスト入選作品でB席から撮影したと思われる作品も掲載しておこう。2コーナー、2コーナーからの立ち上がりを2階席から撮っている。

鈴鹿サーキット特別賞を受賞した鈴木京一氏の作品。ニコンD7000 / シグマAPO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM / 3,264×4,928 / 1/400秒 / F13 / ISO200 / 500mm
鈴鹿サーキット特別賞を受賞した田村和之氏氏の作品。キヤノンEOS Kiss X2 / シグマ18-250mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM / 1,504×2,256 / 1/125秒 / F18 / ISO250 / 128mm

 B席の穴場的な撮影ポイントは1階席から中2階へ向かう通路に、1個所だけ金網の切れ目から撮影できるポイントがある。少し低い位置から1コーナーを撮ることができる。ただし、この場所は観客席ではなく通路なので、F1など混雑するレースでは、おそらく警備員の方から席に移動するように言われるだろう。他のレースで空いていれば撮影できる可能性はあるが、あくまで通路なので状況を見て判断していただきたい。

ポスト付近に金網の切れ目があり、1コーナーを撮ることができる

 F1のカメラマンエリアに新たにB2席が加わった。B2席の中2階と2階席の最上段がその場所だ。カメラマンエリアの人気は高く、B2席とヘアピンに入れるチケットは既に完売している。筆者は鈴鹿サーキットの最高の観戦ポイントはB2席の中2階だと思っている。B2席の最上段は撮影ポイントとしてはお勧めと言うほどではないが、レース観戦に最適なB2席に入れることの価値は高い。F1の場合、元々B2席の価格が5万7000円なので、立ち見とはなるが、撮影もできて観戦にも最適な場所。B2席とヘアピンに入れるカメラマンエリアの6万2000円という価格は妥当なものだろう。

2階席の1コーナーよりの位置から中2階のスタンドを撮影。最上段の席の後ろがカメラマンエリアとなる。
2010年に2階席最上段から15mm(24mm相当)で撮影。ゴール後、ヘアピンで抜きまくった可夢偉を迎える観衆
同じく最上段から焦点距離85mm、シャッター速度1/20秒で撮影
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真(クリックすると1920×1080ドットの写真が開きます)

C席(2コーナー~S字)

 C席は、2コーナーからS字への短いストレートと平行するスタンドだ。マシンには短いストレートだが、スタンドとしては左右に長く撮影ポイントは豊富だ。2コーナー側は2重金網となっているが、コースマーシャルのポストのところだけ金網の切れ目がある。望遠レンズを持った人が集まる定番の撮影ポイントだ。300mm(480mm相当)のレンズでは少々足りない感じだが、トリミングをすれば使えないことはない。できればコンバーターを付けるなどして500mmくらいの焦点距離が欲しい。ここからは2コーナーのクリッピングポイントが正面に見える位置となる。

C席の2コーナー側は高い金網がある
ポスト付近に金網の切れ目がある
300mm(480mm相当)で撮るとこれくらいとなる

 S字方面に移動すると、2重の金網から解放される。そこからS字側までは広い範囲で流し撮りができる。レンズはスタンド下段なら200mm(320mm相当)くらいが丁度よく撮れるだろう。S字側まで移動するとS字に切り込むマシンをコーナーイン側の位置から撮ることができる。過去2年はS字進入の左ターンのところにヨコハマタイヤの広告が設置された。今年の広告の位置はサーキットに行ってみないと分からないが、おそらく同じ位置に設置されるので横浜ゴム賞を狙う絶好のポイントとなる。

S字側に移動すると途中から高い金網がなくなる。そこからS字までは広大な撮影ポイント
YOKOHAMAをバックにS字に進入するマシンを流し撮り。これは筆者撮影のため報道エリアから
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真(クリックすると1920×1080ドットの写真が開きます)

 昨年のWTCCフォトコンテスト入選作品からC席で撮影したと思われる作品も掲載しておこう。2コーナーの人気は高く、WTCCフォトコン大賞、バトルロイヤル賞、キッズ賞は比較的近いポイントで撮影されている。

WTCCフォトコン大賞を受賞した吉橋康樹氏の作品。ニコンD3 / AF-S NIKKOR 500mm F4 G VR / 1,644×2,594 / 1/100秒 / F9 / ISO100 / 500mm
バトルロイヤル賞を受賞した堀出明広氏の作品。キヤノンEOS 7D / EF 500mm F4 L IS USM / 3,000×4,500 / 1/640秒 / F4 / ISO250 / 500mm
サンディスク賞を受賞した小澤一彰氏の作品。 ソニーα200 / 70-300mm F4.5-5.6 G SSM / 3,872×2,592 / 1/20秒 / F10 / ISO100 / 160mm
キッズ賞を受賞した吉橋舜馬氏の作品。ニコンD7000 / AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF) / 1,656×2,500 / 1/200秒 / F5.6 / ISO100 / 300mm
横浜ゴム賞を受賞した南博幸氏の作品。キヤノンEOS-1D Mark III / EF 500mm F4.5 L / 2,559×3,839 / 1/80秒 / F13 / ISO125 / 500mm

C席横カメラマンエリア(S字1つ目)

 C席の逆バンク側の隣に土手がある。正式な名称はない場所だが、F1ではカメラマンエリアとなっている場所だ。S字の1つ目が目の前に位置していて、小さなエリアだがエリア内で上下左右に移動すると様々なバリエーションを撮ることができる。この近くで最もカメラマンが集まるのは逆バンクの上段だと思うが、このエリアはコースに近く200mmのレンズでもそこそこ撮影ができ、面白味もあるので初心者にはお勧めのポイントだ。逆バンクはマシンが見えている時間が短いが、ここは2コーナーからS字まで見渡せるのでレースを楽しめる点でもポイントは高い。

向かって左端がC席、その隣の土手がC席横のカメラマンエリア。右端に見えるのはD席
F1開催時はカメラマンエリアとなり、人気はあるが、ヘアピン常設席下や逆バンク上段ほど混まない
S字1つ目が目の前。現在、右側の柵はなくなっている
S字の進入、左ターンのクリッピング、右ターンのクリッピングを300mm(480mm相当)で撮影
昨年のF1グランプリ、このカメラマンエリアで撮った写真。焦点距離300mm、シャッター速度1/80秒
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真(クリックすると1920×1080ドットの写真が開きます)

D席(S字1つ目)

 D席はS字から逆バンクまでコースに沿って湾曲したスタンドで、場所によってコースの見え方はまったく異なる。スタンドの構造もC席側の小さなエリアと、S字2つ目から逆バンクまでの細長いエリアに分かれている。今回はD席を3つに分けて紹介しよう。

 1つ目はC席側の小さなブロック。ここはS字1つ目が目の前に見え、2コーナーからS字まで見渡せるのでレース観戦にも適している。撮影できるのはS字1つ目の右ターンの部分だ。クリッピングポイントを正面から撮ることができるし、立ち上がりを流し撮りすることもできる。スタンドの最上段はF1開催時にはカメラマンエリアとなる。

2コーナーからS字まで見渡せるので観戦には最適
300mmのレンズ(480mm相当)でスタンド上段から撮影
300mmのレンズでスタンド下段から撮影
立ち上がりを流し撮りすることもできる
サンディスク賞を獲得した松岡直也氏の作品。キヤノンEOS Kiss X3 / EF 100-400mm F4.5-5.6 L IS USM / 3,168×4,752 / 1/60秒 / F11 / ISO100 / 400mm

 昨年のWTCCフォトコンテスト入選作品からD席のこの場所で撮影したと思われる作品も掲載しておこう。

D席(S字2つ目)

 D席の2つ目は、S字2つ目の左ターンを上から見下ろす位置からの撮影だ。流し撮りの定番ポイントで100mmから200mmのレンズで、マシンを上から見下ろす感じで撮影できる。この撮影ポイントはスタンドの上下左右の広範囲で撮影することができる。

パノラマ写真ではコースが真っ直ぐに見えるが、実際は回り込んでいる
流し撮りの定番ポイントとなっている
100mmのレンズ(160mm相当)で撮影
200mmのレンズ(320mm相当)で撮影

D席(逆バンク)

 D席の3つ目は逆バンク。ここはレース観戦のポイントとしては逆バンクしか見えないので物足りない感じはするが、定番の撮影ポイントだ。F1グランプリでは最上段がカメラマンエリアとなり望遠レンズを持った人が大挙して集まる場所だ。S字から進入してくるマシンを正面から撮ったり、逆バンクのクリッピングポイントを正面から撮ることもできる。駆け下るマシンを流し撮りもできるので人気は高い。

この写真は中段から撮っているが、最上段に上がると金網の上から撮影できる
最上段から200mmのレンズ(320mm相当)で撮影
そのまま200mmで流し撮り
撮影場所をダンロップ側に移動するとクリッピングを正面から撮れる。300mmのレンズ(480mm相当)で撮影
レタッチした写真(クリックすると1920×1080ドットの写真が開きます)

 D席の逆バンクには穴場的な撮影ポイントがある。観客席の最下段から、金網越しに報道用のカメラホールを通してマシンを撮ることができる。目の前の金網をボカして撮れば低い位置から撮ることが可能となる。カメラホールは3つ。1つのカメラホールに対し、2~3人しか撮るスペースがないので、混雑すると撮影は難しい。

目の前の金網はボカし、その先のカメラホールを通して撮る
金網越しに見るとこのような感じ
低い位置からの撮影が可能だ。300mmのレンズ(480mm相当)を使用

 昨年のWTCCフォトコンテスト入選作品からD席の逆バンクで撮影したと思われる作品も掲載しておこう。人気の高いポイントとあって2コーナーとならび入選作品も多い。

格闘技賞を獲得した吉田直樹氏の作品。ニコンD300S / タムロンSP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD / 1,992×3,000 / 1/400秒 / F11 / ISO200 / 300mm
鈴鹿サーキット特別賞を獲得した水谷征夫氏の作品。キヤノンEOS 7D / シグマAPO 120-400mm F4.5-5.6 DC OS HSM / 2,514×3,888 / 1/800秒 / F10 / ISO400 / 352mm
コンデジ賞を獲得した所正典氏の作品。富士フイルムFinePix HS20EXR / 2,448×3,264 / 1/125秒 / F6.4 / ISO100 / 110.7mm
キッズ賞を獲得した秦瑞妃氏の作品。富士フイルムFinePix F770EXR / 3,456×4,608 / 1/450秒 / F5.6 / ISO400 / 87.5mm

E席(逆バンク~ダンロップ)

 E席は逆バンクの立ち上がりから、ダンロップ、WTCCの場合はその先のショートカットまで、回り込む構造のスタンドだ。コースに沿って曲がっているので場所によって見え方が異なる。逆バンク側は撮影が可能だがコースまでは遠めとなる。

 ダンロップ側は2重金網で撮影には不向き。ショートカットを後ろから狙うことはできそうだが、絵作りは難しそうな印象だ。F1ではアクセルを踏んで登っていくコーナーで音がよい。おまけ的にシケインから立ち上がるマシンがチラッと見えるので観戦場所としては穴場的な存在だ。ここで撮影した写真がないので、コースの写真だけ見ていただこう。

E席の逆バンク側。撮影は可能だがコースまでは遠い。
ダンロップ側は2重金網となるので撮影は難しい。

Q1席(ショートカット~最終コーナー)

 フルコースのレースでは使用されないショートカットから最終コーナーへ駆け下るマシンを撮ることができるのがQ1席だ。パノラマ写真はQ1席の中央で撮ったもので金網の影響を受けそうな感じがするが、左端に移動すると金網の上から撮影することができる。

 F1などフルコースのレースでは、すぐ上に位置するQ2席の方がはるかにレースは見やすいが、ショートカットを使用するWTCCではQ1席の左端は正面からの撮影と流し撮りができる撮影ポイントとなっている。正面からは300mmでやや遠目、流し撮りをする場合は200mmで充分だ。

Q1席の中央付近から撮影。左端に移動するとショートカットを駆け下るマシンを金網の上から撮ることができる
300mmのレンズ(480mm相当)で撮るとこれくらいとなる
70-200mmのズームで163mmで撮影。流し撮りなら200mmで充分だ
300mmのレンズを使用してシャッター速度1/30秒で撮影
レタッチした画像(クリックすると1920×1080ドットの写真が開きます)

激感エリア(2コーナーイン側)

 WTCCでは激感エリアがインフィールドに3個所設置される。撮影に最適なのは2コーナーイン側のエリアだ。金網がなく、コースに近く、スローシャッターの流し撮りにも最適なイン側から撮影できる絶好の撮影ポイントだ。

 筆者はこの記事のため昨年のWTCCの予選は激感エリアにおじゃまして撮影した。報道用のタバードを着用し脚立に乗って撮っていたら、係の人が「ガードレールのところで撮れますよ」と丁寧に声をかけてくれたが、「ここで撮る必要があるので……」とお断りした。

 撮った写真を見ていただこう。背景にB席のスタンドが写っている写真は標準ズームを53mmにして撮っている。ようするにキットレンズでもここなら撮ることができる。難易度を無視すれば、スマホでも撮ることができる。もう1枚のレンズは126mm。ここなら大砲のようなレンズがなくてもマシンをフレームいっぱいに撮ることが可能となる。

焦点距離53mm(85mm相当)、シャッター速度1/30秒で撮影
レタッチした写真
焦点距離126mm(200mm相当)、シャッター速度1/125秒で撮影
レタッチした写真(クリックすると1920×1080ドットの写真が開きます)

 ちなみに、筆者が撮った予選のときはB2席の観客はまばら。激感エリアもまばらだった。B2席が観客でいっぱいになると色とりどりの点が流れて綺麗な写真となる。

予選のときはB2席の観客はまばら
激感エリアも人はまばら

 日曜日の決勝になるとアクシデントが多い2コーナーのスタンドにはドッと観客が押しかける。そのときに撮るとよい絵が撮れるだろう。強いて言えば激感エリアも大混雑となるので脚立がない人は早めに行った方がよさそうだ。念のために付け加えるとF1では激感エリアは設置されない。個人的にはB2席、ヘアピンに加え金曜日午前のP1のみ100名限定で入れるカメラマンエリアというチケットをF1開催時に販売したら、8万円くらいでも即完売になると思っている。

決勝になるとスタンドは観客がいっぱい。シャッターチャンスだ
激感エリアも混雑していた。8月のSUPER GTでは少しエリアが狭くなっていたがWTCCでどうなるかは不明だ

フォトコンテスト攻略法

 2年間のフォトコンテスト入選作品見て筆者が感じたのは、よい作品の基準は人それぞれということだ。筆者はどうしても撮る立場で写真を見るので、ついつい技術的に高い作品に目が行ってしまう。もちろん技術的に優れた作品も多いが、各賞の選考者はカメラマンではないので、技術以外のところで選ばれている作品もある。なので、筆者自身が思う攻略法は意味がないのかもしれない。

 しかし、賞によって方向性がハッキリしている賞もあるので参考にしていただきたい。今年のフォトコンテストの賞は以下のとおりだ。

・WTCCフォトコン大賞 1名(賞品:2014年F1日本GP カメラマンシートチケット)
・格闘技賞 1名(賞品:2014年F1日本GP カメラマンシートチケット)
・バトルロイヤル賞 1名(賞品:2014年F1日本GP カメラマンシートチケット)
・横浜ゴム賞 1名(賞品:ADVAN ビジネストートバッグ)
・サンディスク賞 3名(賞品:サンディスク「エクストリームCFカード16GB」または「エクストリームプロSDHC UHS-Iカード16GB」
・キッズ賞 3名(賞品:鈴鹿サーキット ゆうえんちパスポート親子ペアチケット)
・コンデジ賞 2名(賞品:鈴鹿サーキット レストラン食事券1万円分)
・スマホ賞 3名(賞品:鈴鹿サーキット レストラン食事券1万円分)

 この中で格闘技賞とバトルロイヤル賞はバトルシーン、クラッシュシーンなどが入賞する可能性が高い。スタート直後の1~2コーナー、逆バンクあたりが狙い目だ。シャッター速度を速めに設定して密集するマシンやアクシデントを写したい。WTCCフォトコン大賞も同じ狙いで入選できる可能性が高い。3つの賞は同じ賞品なので、どれでも狙えるような写真を撮ろう。

 横浜ゴム賞は基準がハッキリしている。ヨコハマタイヤのロゴが写っている写真というのが基準なので、ヨコハマタイヤの広告をバックに入れたい。昨年と同じなら2コーナーを激感エリアから撮影と、S字の進入をC席から撮るのが基本だろう。もちろん広告の位置が変わればそれに応じて撮影ポイントを変更する。

 サンディスク賞のテーマは流し撮り。初心者にはハードルが高いがスローシャッターに挑戦して、よい絵が撮れたら狙ってみたい賞だ。思い切って1/30秒以下のスローシャッターで撮影し、運よく撮れたらこの賞を狙ってみるのも手だろう。

 キッズ賞とコンデジ賞、今年新たに加わったスマホ賞は普通に考えればパドック、ピットでの撮影が入賞の近道だ。だが実際の入選作品を見るとコースを走るマシンを撮った写真も入選している。高倍率ズームを搭載したコンデジでマシンを撮って入選している例もあるので、手持ちの機材と相談していただきたい。

 パドック、ピットで撮影するときの注意点は観客の顔を写さないことだ。レーサー、メカニックなど関係者は問題ないが、観客の顔が認識できると個人情報保護などの観点からボツになる可能性が高い。

 スマホ賞の登場で気になるのはアプリの活用だ。スマホらしい作品ということでアプリでエフェクトをかけた写真を応募するとインパクトがあるかもしれない。スローシャッターのアプリなどもあるので、真面目に流し撮りに挑戦するのも面白い。個人的には一眼レフで撮った作品も含め、もう少しレタッチソフトを活用して、トリミングや加工などをするとより見栄えのよい写真になりそうな気もしているので、そのあたりも考慮していただきたい。

 次回はF1日本グランプリの撮影を前提とした鈴鹿サーキット西コース編だ。掲載はWTCCの開催後を予定しているのでしばらくお待ちいただきたい。では鈴鹿サーキットで会おう。

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。