日下部保雄の悠悠閑閑

次世代車のインフラについて考えてみた

PHEVに充電しているところ。その後、充電できていないことが発覚して原因究明中です

 好むと好まざるとにかかわらず、EVは今後どんどん増えていく。そこでEVを取り巻く環境をツラツラ調べてみた。

 BEV(バッテリーEV)は高価なバッテリーを搭載することで車両価格が高く手が届きにくいが、もう1つ気になるのはやはり航続距離だ。特に高速道路で長距離を移動した場合、航続可能距離は減ってくる。走り方にもよるがみるみる残り距離が短くなるのは気が気ではない。

 そこで充電スポットの数が話題になる。ガソリンスタンドは減ったとはいえ全国で2万9000店ほどあり(それでもこの5年間で3000店ほど減っている)、1か所の給油所に何台かのスタンドがあるのが通例だ。

 一方、充電スポットも増えており、急速充電器は全国約7000か所ある。また一般に使える普通充電スポットも約1万9000か所あり意外と多い。気を付けているとコンセント表示の充電マークを多く見るようになった。まだ北に行くほど少なくなるのは解消されていないが、EVの登場当初ほど電欠になるのを恐れることはなくなった。

 しかしやっと辿り着いた充電設備が故障で使えないことも残念ながらある。充電器が急速に増えたのは政府の補助金政策が後押した2013年~2017年にかけてで、今や数字の上ではガソリンスタンドに近い充電スポットがある。

 しかし急速充電器に限っていえば寿命はおよそ8年と言われているので、そろそろ改修のタイミングだ。1機あたりのコストが200万~300万円(補助金抜きの価格。設置場所などで金額はかなり変わる)と高額で更新もままならぬまま放置されている例もあると聞く。普通充電でも寿命で使えなくなっているところが増えているのが現状で、充電スポットは前年比で数を減らしている。これらの問題が対応されているとは聞かれない。ガソリン車以上にインフラが重要なEVだが、まだ十分とは言えないだろう。

 しかしイノベーションは素晴らしい勢いで進んでいる。近い将来、実用化が予想される固体電池もその一例で、実用化されると容積も充電時間も大きく変わってくると言われている。

 同じことはFCEVにも言える。新型ミライは感激した。航続距離は公式では800km以上でアシの長さに実用性は一気に高まった。高速道路を連続走行するのはBEV同様苦手だが、それでも次の水素ステーションまで届くという希望は大きい。

 その水素ステーションは全国で約150か所。首都圏に集中して営業時間も限られているので、ロングドライブの場合は水素充填のための旅程をあらかじめ組む必要がある。また北に行くほど充填スポットが限られており、普及を阻んでいる。

有明にある岩谷産業の水素ステーションでミライに水素を充填しています。物々しいのはルールで仕方ないですが、もっと気軽に使えるようになるといいですね

 水素は乗用車だけでは利用が少なく水素ステーション数が限られるので、商用車などへの大規模な普及が進まないと整備速度が遅くなる。

 一方、トヨタは水素を内燃機の燃料とする開発を行なって耐久レースにも参加する。まさに“走る実験室”を実践して話題になっている。大きな水素タンクの搭載や燃費など簡単ではないが、現在の内燃機を使う興味深いチャレンジだ。

 また、水素と軽油やガソリンを混ぜたe-Fuelも再び注目を集めており、意外とカーボンニュートラルの言葉に後押しされて水素社会の実現も早いかもしれない。

 これらの新しい自動車を見るにつけ、電気を含めて鉄、アルミなど製造工程におけるCO2の削減は待ったなしで、大きな転換点に来ているのを実感する今日この頃です。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。