日下部保雄の悠悠閑閑

ホンダジェットに乗った

2015年、岡山甲南空港でのホンダジェット初対面。衝撃だったなぁ~

 最初にホンダジェットを見たのは2015年5月。岡山甲南飛行場は元の岡山空港で滑走路は1200mしかない。話題のホンダジェットが日本に飛んで来て、羽田を筆頭にたしか3か所のローカル空港を訪問したうちの1か所だった。

 晴天の中2回ほど頭上をパスした後、あっけなく降りてきて、そのまま格納庫に。傍らで見る機体は想像以上に短く全高のある独特な姿をしていた。

 あれから8年、このクラスのベストセラーとなったホンダジェットは航続距離の長いエリートIIが主力に、さらに2028年には胴体を延長した11人乗りのライトジェットクラスに参入予定で着々と進化している。時間は長くて早い。

 あのとき、機内に入ってみたいと切望したのがやっと叶った。場所は東京ビッグサイト。4年ぶりに東京モーターショーからジャパンモビリティショーに名称を変えたホンダブースでのことだった。モビリティというだけあって、クルマに限らず陸、海、空と移動するものすべてを持つホンダらしい展示で、真っ先に視界に飛び込んできたのは黒いホンダジェットだった。ベリーライトクラスとはいえ、さすがに翼を含めると大きな機体を運び込むわけにはいかず胴体だけだが、ドアにはステップが置かれているではないか!

2023年、ホンダジェット エリートIIの機体。誰でも辛抱強く待てば乗れます

 もちろん乗せていただきましたよ、待望の機体だけにキタイいっぱい。あのときと同じベージュの革シートに座ると幅はそれほどないけど足下は広く、対面シートに座ってもくつろげる広さだ。この4座がお客さま。そのほかにはドアを入ったところに横向きの簡易型のシートがあり、さらにこのクラスでは稀なドア付きの洗面所にも座れる空間がある。当たり前だが……。

待望の機内に入れた。空間利用はホンダ流。シート幅はそれほど広くなかったけど十分なレッグルームがある。対面シートに美人さんが座ったらドギマギするだろうな

 想像通りこの2つのシートはエマージェンシー的な使われ方だ。特等席はコクピットだ。パイロットとコ・パイロットのためのシートだが、ホンダジェットはワンオペで運行可能だと聞いたのでコ・パイロット席は最高のシートだが、コクピットに入るにはキャビンからまたぐようにして乗り込むとは目からウロコだった。どことなく自動車らしいデザインと質感なのは“HONDA”の名前からくる勝手な連想だ。

 自動車と違って直前を見る必要がないのでダッシュボードは結構高く、視界も思ったほどオープンではない。常に周囲を見る必要のない飛行機とはこういうものかと感心した。

コクピット。意外とダッシュボードが高い。メーターが見やすかった。操縦桿も小さかったなぁ

 ホンダの思想はマン・マキシマム、マシン・ミニマムのMM思想。限られた空間を最大限に利用するするのは飛行機も一緒だ。

 同乗したベストカーの小野さんはゼロ戦21型の操縦席に座ったという羨ましい経験があるという(ほんとに羨ましいぞ!)。彼いわく、ゼロ戦の操縦席はもっと広かったと。あらゆるもの搭乗員が操作する80年前の戦闘機と、ほとんどコンピューターがコントロールする最先端の民間機では必要な空間も視界も異なるのだろうと解釈した。

 至福の時間だったが、行列をお待たせしては申し分けないので早々に退散。なかなか得難い経験ができました。こちらはチャンスがあればモビリティショーの期間中、ドアはオープンになっています。

操縦席から「私もちょっと飛んでみるわ」と言ってました

 モビリティショーは移動体だけでなく面白い体験が盛りだくさん。年齢層を問わず楽しめるし、西館の部品館も見れば見るほど奥が深く、到底1日では終わらない。あらかじめプランをいくつか用意して行くことをお勧めする。

中国企業イーハンの空飛ぶクルマ、EHang 216。2シータードローンで自動飛行を想定しています。飛行中は気持ちよさそう
カワサキの災害時の物資運搬用救難ドローン。Ninjyaのようにどこでも素早く駆け付けるということでしょうか

 個人的には軽枠を飛び出したFRのビジョン コペンも実現してほしい1台。さらにマツダのアイコニック SPは1960年代のアルファ ロメオを彷彿させて痺れた。8Xの2ローター・ロータリーを発電用に搭載したPHEVで次世代のロードスターのモチーフだろうか。

ビジョン コペン。張り出したリアフェンダーが魅力。内燃機のFRです! 実現してほしい1台。皆さんの声が実現を後押しするとは開発者の声。民案で声を出しましょう
きっとマツダのデザイナーはカングーロファンに違いないと思ってます。気持ちわかるなぁ

 さらにダイハツブースに置かれていた初代シャレード。1977年の東京モーターショーでデビューした1.0リッター3気筒の5m 2 カーは今見ても新鮮だ。今回展示されていたグリーンのシャレードはプライベートでも乗っていただけに懐かしさ満点でした。

GC10シャレード。まさにこのグリーンに乗ってました。モーターショーのおさがりだった記憶が……
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。