【北京モーターショー2012】
オリジナリティを求めるようになった中国メーカー


奇瑞汽車の連結走行が可能なEV「@ANT」

2012年4月23日~5月2日
中国 北京市 中国国際展覧中心



 2011年の中国市場において、自動車販売台数の伸び率は前年に比べ3%未満と鈍くなったものの、乗用車の販売比率は3%以上の成長をみせていて、自動車全体の販売台数は1850万台を記録した。販売台数がやや鈍ったように感じるが、それまで毎年10%以上の拡大を続けていて、2012年には年間の販売台数が2000万台を突破する可能性があるとの見方もある。

 まだまだ伸びる余地を残している中国市場には、各自動車メーカーがシェアを伸ばすために新たなモデルラインアップの追加や、現地生産や開発の拡大などあらゆる手を使って販売拡大を狙って躍起になっている。

 そんな海外メーカーの一方で、中国国内メーカーの動向はどうなっているのだろう。数年前まで、合弁を行っている自動車メーカーは、提携している海外メーカーの技術を使いつつ中国市場のニーズに応えるモデルを生産していた。そして独立資本の民族系自動車メーカーの中には、明らかに海外メーカーのデザインを模倣したモデルも散見された。こうしたモデルに続き、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などのバッチだけを付け、実際のところのパワーユニットは不明という車両の展示も目立っていた。

 だが、今年のオートチャイナでは、こうした中国特有の車両が少なくなっていたような印象が強い。まったくなくなった訳ではないが、ブースを見ると必ずあったそれらの車両は数えるほどになり、その変わりオリジナリティのあるモデルやカットモデルなどの技術展示などが増えた。技術展示などでは、欧州メーカーにならって直噴やターボユニットを使ったエコモデルの内燃機関を発表したり、ツインクラッチのダイレクトマニュアルトランスミッションをラインアップしたりするなど、自社開発の技術をアピールするようにシフトしているようだ。これには中国国内の自動車に対する環境規制だったり、民族系メーカーのバックアップを抑える方向にある政策が効いているのだろう。

 今後、オリジナリティやデザイン、技術をウリにした新たな中国国内メーカーの競争が始まるのではないかと予感させる展示内容になっていた。

 では、合弁、民族系を含めた中国メーカーの展示車両やカットモデルなどの技術展示を紹介しよう。

奇瑞汽車(CHERY)
 民族系と呼ばれる中国独自の資本ながら、中国国内メーカーのビッグ5に数えられる奇瑞汽車。年間販売台数も民族系トップで60万台以上のセールスを記録している。2012年には、ジャガー・ランドローバーとの提携を発表し、今後は合弁メーカーとしても生産と販売を行っていく。展示車両はピュアEVからSUV、コンセプトカーと幅広い。

「@ANT」は、連結走行が可能なEV。クラウドサービスなどを使い、目的地が同じ車両なら連結して走行ができる。次世代のアーバンモビリティとしての提案になる
全長3601mmのコンパクトなボディーで4人乗車できるシティコミュータEV。モーター出力は45kWで最高速は120km/h。航続可能距離は160kmとしている
SUVコンセプトの「TX」。パワフルな造形の中にも美しさを感じさせるデザインを採用。水や波といった自然との調和も意識して作り上げたと言う

DENZA
 「DENZA」は、ダイムラーAGとEVの開発販売を主軸としているBYDが合弁で設立した、「深センBYDダイムラーテクノロジー(BDNT)」が新たにプロデュースしたブランド。

 観音開きのドアを備えるとともに、居住性を重視したEVで、単にシティコミューターというだけのモデルではないようだ。

 中国市場では政策のバックアップもあり、2020年にはEVや次世代燃料を使ったハイブリッド車両が、500万台(現在の500倍)販売されるとの見方が示されている。そのためBDNTは、このコンセプトカーをステップに新たなモデルを導入していく。ちなみに、第1弾のモデルは2013年中にリリースされる予定と言う。

BYDとダイムラーの合弁会社が開発したEVのコンセプトカー

長安汽車のブースに展示してあったDCTのカットモデル。FF用のDCTで5速のギアを持っている

長安汽車(CHANGAN MOTOR)
 中国ビッグ5の一角を成す長安汽車。フォードやスズキ、三菱自動車などのメーカーと合弁を行っているメーカーでもある。


「CS35」は1.6リッターエンジンを搭載するコンパクトSUV。4160×1810×1670mm(全長×全幅×全高)のボディーサイズとなっている。トランスミッションは5速MTか4速ATの組み合わせ

吉利汽車(GEELY)
 ボルボを傘下に収める吉利汽車。民族系の自動車メーカーだが、中国国内のシェアも高くビッグ5の1つとして数えられている。ブランドラインアップも豊富で、ラグジュアリーなモデルからSUV、一般向けの乗用車などを用意する。自社開発のダウンサイジングターボエンジンやDCTのトランスミッションなどの技術も有している。

ロンドンタクシーの後継モデルとなる「TX4」。2883mmのホイールベース、1823mmの全高を備え、広い室内空間が特徴となる。シートアレンジも多彩で乗客の使い勝手を最大限に考慮している
吉利汽車のフラッグシップモデルとなるEMGRANDEブランドの「GE」は、4気筒エンジンにモーターを組み合わせたPHVモデル。トータル出力は230kWで、V8相当の出力を発揮していると言う
4120×1755×1600mm(全長×全幅×全高)というサイズを持つコンパクトSUV。ハッチバック、ワゴン、SUV、MPVのよいところをミックスした“スーパークロス”というコンセプトを持つ
GLEAGLEブランドから発売されているミドルサイズSUVの「GX7」。駆動方式は4WDで、5+2のシートレイアウトを採用する
1リッター 3気筒のダウンサイジングモデル。最高出力は52PS/6000rpm、最大トルクは91Nm/3600rpm7速ギアを持つDCT。FFモデル用に開発されたトランスミッションで、最大トルク許容量は325Nmとなっている

比亜迪汽車(BYD)
 電池メーカーの強みを生かしたEVやハイブリッドモデルを生産するBYD。EVは強みの1つだが、自社開発を行っているDCTや内燃機もあり、総合的な自動車メーカーとして認知されている。

「e6先行者」は、ロングレンジの走行を可能とするピュアEV。バッテリー容量は19.5kWhで、航続可能距離は300km。モーターの出力は90kWで最大トルクは450Nmとなっている
深センで試験的に導入されているEVタクシー。2012年4月の時点で500台が運用されている。1回の充電で走行できる航続距離は120kmと言う
省燃費性に優れた直噴ターボエンジンにDCTを搭載した「G6TID」。最高出力は113kWで、最大トルクは240Nm。ボディーサイズは4860×1825×1463mm(全長×全幅×全高)
自社開発した直噴ターボエンジン。1.5リッターと2.4リッターのラインアップがある。1.5リッターは140Nm、2.4リッターは230Nmの最大トルクを発生ツインクラッチのデュアルクラッチトランスミッションの開発も行っている。6速のギアを持ち、1.5リッターの直噴ターボエンジンと組み合わせて使うことを想定している

江淮汽車(JAC)
 民族系メーカーの江淮汽車は、FRスポーツやSUV、ミニバンなど幅広いラインアップの展示を行っていた。

FRスポーツの「SC」。ボディーサイズは4485×1860×1370mm(全長×全幅×全高)でホイールベースは2700mm。エンジンは直列4気筒2.4リッターを搭載
ビジネス、ファミリーユースの両面を想定したミニバン「M2」。5100×1840×1970mm(全長×全幅×全高)と大柄なボディーに多彩なシートアレンジと使い勝手を考慮したサイズとデザインを採用。エンジンは2.0リッターで、最高出力130kW、最大トルク235Nmのスペックを持つ
コンパクトサイズのSUV「S2」。ボディサイズは4430×1840×1660mm(全長×全幅×全高)

青年蓮花汽車(LOTUS)
 破産申請したサーブの買収にも動いているという「青年蓮花汽車」。現在はマレーシアのプロトンと提携を行っていて、プロトンが持つロータスブランドを使い、販売展開を行っている。そのため、ラインアップされる車両にはLOTUSのバッヂが付く。

「T5」は同社が新たに製作したミドルサイズのSUVコンセプト。プロトンのプラットフォームを使っていてホイールベースは2600mm。エンジンは1.6リッターが搭載される
「L6スポーツバック」は同社のセダンシリーズ中、トップレンジに位置づけられるモデル。スポーツバックを名乗るボディーデザインは、スポーツセダンとも言える流線型で、エンジンは2.0リッターを搭載している

納智捷汽車(LUXGEN)
 台湾のYulonグループに属する納智捷汽車。1949年に設立した同社は、セダンからSUV、トラックまで乗用商用を問わずラインアップしている。またEVの開発にも力を入れていて、SUVやミニバンの乗用モデルをEV化した車両を開発中。

「大7 SUV」は全長4800mmのボディーを持つフルサイズSUV。エンジンは2.0リッターと2.2リッターターボの2種類から選ぶことができ、駆動方式も2WDと4WWDの2タイプを用意する
4845×1876×1768mm(全長×全幅×全高)のボディーサイズからなるミニバン「MASTER CEO」。エンジンは大7SUVと同一の2.2リッターターボで、最高出力は175HP/5200rpm、最大トルク28.0㎏m/2500-4000rpmとなっている

北京汽車(BAIC MOTOR)
 ダイムラーと合弁を行っている北京汽車。Cクラスなどを現地生産するなどのパートナーシップを実施していて、次世代エネルギー車の開発なども共同で行っている。

V型12気筒6.0リッターエンジンを搭載したラグジュアリーコンセプトの「C90L」。観音開きのドアやエッジの強いフロントビュー、流れるようなシェイプを持つリアまわりなどが特徴的
ピュアEVのセダン「C70GB」。バッテリー容量は24.84kWhで航続可能距離は130km。ボディーサイズは4860×1820×1461mm(全長×全幅×全高)
4398×1794×1645mm(全長×全幅×全高)というボディーサイズを持つミドルサイズのSUVコンセプト。フロントフェンダーからリアエンドまで斜め後方に上がっていくサイドラインが、腰高感を生み出しスポーティに仕上がっている
メルセデス・ベンツ Bクラスのシャシーを使ったと予想されるハイブリッドカー「E150BSG」。2KWのスタータージェネレーターを採用しているのが特徴となる

(真鍋裕行)
2012年 5月 7日