CES 2018
【CES 2018】ローム、フォーミュラE用のSiCレーシングインバータを展示
開発領域となっているVENTURIチーム搭載製品
2018年1月12日 23:49
半導体で知られる日本のロームは、2017年の「CES 2017」に続き、2018年の「CES 2018」に出展している。出展個所は、Sands ExpoのVenetian,Lvl2-Veronese 2505。クルマ関連のメイン会場となっている、LVCC(Las Vegas Convention and World Trade Center)とはシャトルバスで連絡されているため、行き来にはシャトルバスを利用するとよいだろう。
ロームはフォーミュラEの2016/2017シーズン(シーズン3)から同社独自のインバータをVENTURIチームに供給。これは、シーズン2の共通インバータから重さを2kg、容積を19%減らしたもので、SiCのSBD(ショットキー・バリア・ダイオード)を用いている。2017年12月に香港で開幕した2017/2018シーズン(シーズン4)では、シーズン3モデルからさらに4kg軽量化し、30%容積を小さくしたフルSiCタイプのインバータを供給。第2戦香港では2位表彰台を獲得した。
ちなみにSiCとは、現在主流となっているSi(シリコン)半導体の特性を改善するもので、SiCと表記されているとおりシリコン・カーバイト(炭化珪素)をベースとするものだ。トヨタ自動車もこのSiCパワー半導体を次期プリウスに搭載する(関連記事:トヨタ、現行ハイブリッド車の燃費10%改善を実現する新素材SiC高効率パワー半導体開発)としており、ハイブリッド車、EV(電気自動車)での鍵となる製品だ。電池からモーターに電力を伝える段階での効率をつかさどるものであり、エンジン車に例えるとATの伝達効率改善と思えば、その重要性が分かる。ロームは、そのSiCインバータをすでにレースシーンに投入するほどの技術力・生産力を示しているわけだ。そのシーズン3用が展示してあった。
そのほか、パワー半導体に高い技術力を持つロームでは、ルネサス エレクトロニクスの車載半導体「R-Car H3」用のパワー半導体も供給している。これは1チップで、R-Car H3搭載ボードが要求するすべての電力を供給できるとのことだ。
また、EVやハイブリッド車用の半導体として、DC/DCコンバータの新製品も展示。この新しいDC/DCコンバータ「BD9V100MUF-C」は、48VのDC電源を1チップで3.3Vまで降圧できるというもの。従来は48Vから12Vへ、12Vから3.3Vへと2工程必要だったものを、1チップ1工程にすることで基板面積を減少できるほか、入力電圧による出力パルスの変動が従来のものとは違い極めて小さいという。その結果、パルスによる雑音対策の周波数レンジを絞り込むことができ、実装コストの低減にもつながる。
ちょっと変わったところでは、オーディオグレードの電源ICを展示。これは従来の電源ICに比べ、ノイズが小さくなっているのが特徴で、それが実際に聴感でも分かるという。同社はハイレゾオーディオ向けのSoC(System on a Chip)などをすでに製品化しているが、それとこの新しい電源ICを組み合わせて、聞き比べセットを作っていた。
実際に、イーグルスのホテルカリフォルニアの楽曲を聞いてみると、明らかにノイズレベルが下がっているのが分かる。ホテルカリフォルニアは、ヴォーカル以外の楽器が区切りよく鳴る曲で、その無音のときに一段と静かになっているのが印象的。それゆえ、次の音の立ち上がりもクリアに聞こえ、結果ダイナミックレンジが広いなと思えるものになっていた。電源の雑音レベルが、楽曲の雑音(というか最小音)に影響するのが如実に分かり、結構楽しい聞き比べだ。同社では今後このようなハイレゾ対応のオーディオ用ICを取りそろえていきたいとのことだ。
リタンダンシー重視の製品や、ノイズ設計フリーの車載オペアンプなど
展示の中で、車載製品として分かりやすいのが「世界初、高精細液晶パネル向け機能安全導入車載チップセット」という製品。このチップセットには、HD720(1280×720ドット)、FHDクラス(1920×720ドット)、FHD 1080(1920×1080ドット)、3Kクラス(2880×1080ドット)の4セットがあり、メーターパネルで使われている液晶の異常を検知して、速度、シフトポジションなど最低のものを表示できるというもの。
また、液晶パネルの異常を検知してということから、今後導入が見込まれる液晶サイドモニターや普及の始まっている液晶バックモニターにも利用することが可能。故障ゼロということはなかなか難しく、液晶メーターの表示が落ちたとき、液晶サイドモニターの表示が落ちたときに、エラーを検知して最低限でも動かしてくれるのはありがたい。とくに液晶サイドモニターは、運転中に普段から見ているものではないので、表示かないから安全と思っていたら、実は落ちていたという状況は最悪だ。そのような最悪の事態を防ぐために、システムのリタンダンシー(冗長性)を確保してくれる。
ノイズ設計フリーの車載オペアンプ「BA8290xYxx-C シリーズ」は、圧倒的なノイズ耐量を実現したという製品。、ロームの「回路設計」「レイアウト」「プロセス」、3つのアナログ技術を融合して開発したとし、会場では無線機を近づけて、従来製品よりノイズ耐性があることを実演。従来製品では無線機を近づけると止まっていた機械が、新製品では止まらないというデモを行なっていた。
そのほか、iPhone Xなどで採用されている、非接触充電規格「Qi」関連のデバイスも展示されていた。