CES 2018

【CES 2018】Intelの自動運転向けソリューションを統括するキャシー・ウインター氏に聞く

2つのMobileye EyeQ5とDenvertonコアのAtomで、NVIDIAのXavierよりも低消費電力で高い性能

Intel 自動運転事業本部 副社長 兼 自動運転ソリューション担当部長 キャシー・ウインター氏

 半導体メーカーのIntelは、2017年3月にイスラエルの車載向けコンピュータビジョン大手のMobileyeを買収することを明らか(関連記事:Intel、イスラエルの自動運転向け画像処理のトップ企業Mobileyeを153億ドルで買収)にして世界を驚かせたが、その後もティアワンの部品メーカーであるDelphiやContinentalとの提携、従来からのパートナーだったBMWに加えてフィアット・クライスラー・オートモーティブ(FCA)との提携を明らか(FCA、BMW、インテル、モービルアイ、完全自動運転の実現に向けた自律走行プラットフォームの開発で協力)にするなど、着々と自動運転向けのソリューションの充実や提携先の獲得を果たしている。

 そうしたIntelの自動運転向けソリューションを統括するIntel 自動運転事業本部 副社長 兼 自動運転ソリューション担当部長 キャシー・ウインター氏は、日本などの報道関係者に向けた記者懇談会を行ったので、その模様をお届けしていく。

DenvertonコアのAtomと2つのEyeQ5の組み合わせはNVIDIAのXavierを上回る

──Intelの自動運転ソリューションの進展について教えてほしい。

ウインター氏:Mobileyeの買収はIntelにとっても大きな出来事だった。1年前からIntelは自動運転の取り組みを真剣に行なっていたが、まだ皆さんの方が半信半疑だった部分があったと思う。しかし、Mobileyeを買収したことで、皆がIntelは本気だと理解した。

 Intelは自動運転の世界でもイノベーションを起こそうとしており、昨年(2017年)のCESではMobileye、BMWとのパートナーシップを、そしてその後はDelphiやContinentalとの提携を明らかにした。Intelは非常に強力なコンピューティングプラットフォームを持っているだけでなく、Mobileyeとのロードマップを統合したことで、Mobileyeのソリューション、5Gなどをトータルソリューションとして一気通貫で提供できるようになっている。

 Mobileyeの最新SoCとなるEyeQ5はすでに製品化されており、最近ではDenvertonコアのAtomプロセッサと2つのEyeQ5を利用して、自動運転を実現するプラットフォームとして提供している。

 これはIntelのエンジニアがソフトウェアを含めて開発しており、SDKの形で提供している。これによりOEMメーカーは低消費電力で、フレキシブルな自動運転システムを構築することができる。自動車メーカーにとって、自動運転のシステムユニットに避ける消費電力の枠は決まっており、低消費電力なシステムを提供できることが重要だ。

──Mobileyeを買収したことによるシナジーは何か?

ウインター氏:彼らの強さはスタートアップのように動ける身軽さだ。そこに我々の事業部のエンジニアが言ってコラボレーションをしている。彼らの身軽さと、Intelの巨大なリソースをうまく融合してシナジーを出していく。

 Intelはすでに各地域に支社を持っており、そうしたローカルのプレゼンスは大きい。それをうまく活用していくことが今後は重要になる。

──Intelは5Gに力を入れているが、5Gはどのように自動運転に使われていくのか?

ウインター氏:5Gに関して自動運転は非常にいいユースケースになると考えている。現在の自動車は常時接続にはなっていないが、すでに自動運転車の開発フェーズでは高速な携帯電話回線が必要になり、5Gはそのよいアプリケーションになる。高精度マップの構築にも5Gは必要になるだろう。また、自動運転が普及した後は、乗客がコンテンツを車内で楽しむ為の回線として、5Gが必要になる。

──自動運転はいつ使えるようになるのか?

ウインター氏:それはパートナーにより異なる。例えば、BMWは2021年をターゲットにしている。ただ、自動運転を実現するには、技術だけでなく、規制の問題、保険の問題、そして信頼性の問題など解決すべき課題があるのは事実だ。選択肢が沢山出そろうという意味では2025年になれば確実だと思う。

──自動運転向けのソリューションではNVIDIAが一歩リードしているように見えるが、Intelはそれにどのように反応していくのか?

ウインター氏:常に我々も競合他社との差をベンチマークしている。IntelではMobileyeのEyeQ5が2つとDenvertonコアのAtomプロセッサとの組み合わせを提案しているが、それと競合他社のXavierとの比較では、ディープラーニング時の性能では上回っており、かつ低消費電力を実現している。そうした我々の分析はすでに弊社のサイトで公開(Intel and Mobileye Autonomous Driving Solutions[PDF])しているとおりだ。

 重要なことは消費電力であり、低消費電力を実現することは、商品化の上で大きな問題になる。それは供給できる電力の量も熱設計の観点からも自動車メーカーにとっては重要だ。そしてもう1つ強調したいのは、MobileyeのEyeQ5も、DenvertonのAtomプロセッサの自動車グレードもすでに商業的に提供されているという点だ。それらを組み合わせることで、レベル4の自動運転にもレベル5の自動運転にも対応できるスケーラビリティを備えている。

 さらにOEMメーカーが望めば、Atomプロセッサに替えてXeonの自動車グレードを使うこともできる。現時点ではEyeQ5が2つとAtomというソリューションを提供しているが、将来的にはもっと組み合わせを増やしていく計画だ。

──MobileyeのSoCは外部の半導体メーカーが製造しているが、それを将来Intelの工場で生産するという可能性はあるのか?

ウインター氏:EyeQ5はSTMicroelectronicsで製造されているが、もちろん将来的にそれをIntelの工場で生産するという可能性はあるが、現時点で具体的に議論をしている訳ではない。

笠原一輝