イベントレポート
【CES 2019】Audi e-tronで、アウディの最新車内エンタメ「holoride」をラスベガスで体験。VR技術+リアルサーキット+マーベルに驚愕!!
2019年1月8日 02:00
- 2019年1月6日~7日(現地時間) プレスカンファレンス
- 2019年1月8日~11日(現地時間) 一般公開
アウディは1月7日(現地時間)、米国ネバダ州ラスベガスで開催されている「CES 2019」において、革新的な車載エンタテイメントフォーマット「holoride(ホロライド)」を発表した。このholorideは、アウディのEV(電気自動車)である「Audi e-tron」に、VR技術を車内エンタテイメントとして導入、まったく新しい移動体験ができるというものだ。
このholorideをラスベガスで体験してきたので、ここにお届けする。
holorideの説明はラスベガス市内で
holorideのプレゼンテーションはラスベガス市内のホテルの一室で行なわれ、アウディがクルマの世界にもたらした革新的な技術であるクワトロの紹介から始まった。このクワトロの導入によって、クルマはこれまでは安全に走ることの難しかった道を、より安全に走ることができるようになり、クルマの世界に革新をもたらした。
そして、次に紹介されたのが地図技術やセンサー、移動する喜びがベースとなる新しいExperience(体験)だ。この体験は、アウディが自動運転技術やコネクテッド技術の推進によって新しく創り出そうとしてる「The 25th hour」(25番目の時間)という思想に沿ったもので、これまでのクルマでは得られなかった時間・体験・価値がもたらされるというものだ。
その1つとして作られたコンテンツには、2008年公開の映画「アイアンマン」で「Audi R8」が主人公の愛車として使われるといった関係にあるマーベルが協力。Disney Games and Interactive制作による「Marvel's Avengers: Rocket's Rescue Run」を車内でVR体験できるという。
このコンテンツを体験できるのがholorideという、新たな技術になる。
想像を超えていたholorideのRocket's Rescue Run
正直、ここまでプレゼンテーションを聞いても、車内でVR体験できるということの価値があまりピンと来なかった。どころか、ただでさえ“VR酔い”という言葉さえある(技術的にさまざまな問題を解決しつつあるが)VR体験を車内でとなると、さらにもの凄いことになってしまうような予感さえした。
ラスベガス市内でのプレゼンテーションはここで終了。実際にholorideを体験するためにサーキットに移動すると言われて、少しビビる。サーキットまでの移動車に乗り込み、20分ほどして到着したのは「SPEEDVEGAS」。スーパーカーのレンタル運転が楽しめるミニサーキット(といっても、全長は2.4km)として人気の施設で、12のコーナーと最大15度のバンクを持つ。ちなみに時間帯は夜。夜の取材は難しいなと思いつつ、「VRだから夜も昼も関係ないのか?」とブリーフィングを聞きながら納得。VRゴーグルをして、このサーキットを2周するらしい。
ほかの媒体の取材者であるM氏が、「最高速はどのくらい?」と聞いたところ、なんと90マイル。1.6倍換算で144km/h、なんだかもの凄いスピードで走るようだ。
順番が回ってきて、Audi e-tronの後席に乗り込みVRゴーグルを装着する。そのままVRゴーグルをのぞき込むと空間に浮遊する「Rocket's Rescue Run」のオープニングクレジットを見ることができ、手にはスイッチを持たされる。このスイッチはファイヤボタンとして働き、どうも射撃ができるようだ。
もう1人の同乗者(こちらの方も個別にVRゴーグルを装着)の準備を待ち、いよいよスタート。そこからは、異次元の体験が待っていた。
NVIDIAなどを取材することが多いことから、VRなど比較的新しめのコンテンツをいろいろ体験してきたが、そのどれとも違う体験の時間となった。コンテンツ映像についてはアウディ提供のものを見てもらいたいが、この映像が実際のサーキットで感じるG(重力加速度)とリンクして動く。VRゴーグルを付けながら4DX映画を見る感覚にも近いが、さらに強烈な浮遊感がある。自分が強烈に浮いている感覚があり、右へ左へ、そして上下のリアルなGを感じる。そして、映像が見事にシンクロしているため、“VR酔い”とは無縁のリアリティ。実際にサーキットを周回しているのだからGがリアルなのは当たり前だが、自分が見ている映像はアイアンマンと飛び回る宇宙空間での戦闘。VRは仮想現実と言われるが、現実仮想というか、目で見ている映像とリアルなGがもたらす現実感と、自分の脳みそで考える「これってVRでしたっけ?」のズレが最初はなじめず、難しく考えずに素直に没入したら、もの凄く楽しめるようになった。
通常のVRでは、自分が移動すると風景も移動する。そのため、自分が主体的なアクションを起こす必要があり、そのアクションと風景とのずれがいわゆる“VR酔い”につながっていく。ところがholorideでは、クルマが実際のサーキットを走っているベクトル込みの移動距離と映像内の移動距離をマッチング。そもそもどう走っているのか自分は分からないため、VRゴーグルで見る映像とのズレも起きにくいのだろう。それがこれまで体験したことのないリアリティにつながっているのかなと思う。
また、このリアリティを支えるのがAudi e-tronの静かさと、シャシー&ボディ剛性の確かさ。静かでかつ歪みを感じることなく最高速140km/h以上(!!)で走っているのだから、よく理解できないくらいに新しい体験だし、クルマの位置と映像をマッチさせる凄い技術だった。
クルマを降りても、とにかく「凄かった」という記憶が強烈に残ったのだが、同時に「アウディはこれでテーマパークを作るのだろうか?」という疑問が湧いた。そこで素直に担当者にその疑問をぶつけると、「違う」とのこと。アウディとしては、これは新しい車内エンタテイメント体験の技術であり、アウディのテーマパーク作りのための技術ではないという。
これは、地図データがすべてHDマップになって、どのような場所を走るかクルマが完全に理解している未来を見据えた技術なのだろう。そのような未来であれば、クルマが発生するGが予測でき、さらに自動運転であればクルマの運動予測も容易だろう。そのような未来において、VRゴーグルがもたらす映像と、リアルに感じるGの差はなくなり、マーベルの「Rocket's Rescue Run」のようなコンテンツをストリーミングでいろいろ楽しめるようになる。holorideはクルマに同乗する多くの人にとって文句なしのエンタテイメントであり、革命的な新しい体験であるのは間違いない。
アウディはこのholorideを、新たなエンタテイメントカテゴリのオープンプラットフォームと位置付け、この技術を持つholorideというスタートアップカンパニーの共同創業者となる。holorideの普及を本気で考えている証しだ。