イベントレポート

ボッシュはライドシェア向けスマートカメラ「RideCare コンパニオン」展示 「未来の自動車技術は道路だけでは完結せず、クラウドの世界にも広がっていく」とメーダー社長

一般公開日:10月28日~11月5日

入場料:1500円~4000円

ボッシュ株式会社 取締役副社長 クリスチャン・メッカー氏(左)とボッシュ株式会社 代表取締役社長 クラウス・メーダー氏(右)

「ジャパンモビリティショー2023」(一般公開日:10月28日~11月5日、場所:東京ビッグサイト)に出展しているボッシュは、プレスデー2日目となる10月26日に西展示棟4階 3~4ホール・W4205の同社ブースでプレスブリーフィングを実施した。

 同社ブースでは、ソフトウェアの更新によって新しい機能が使えるようになる「ソフトウェア・ディファインド・ビークル」が実現する“モビリティの新時代”に向け、開発に取り組んでいるADAS(先進運転支援システム)、モーション、エネルギー、ボディ&コンフォート、インフォテインメントといった技術領域について、展示カーを使って紹介している。

西展示棟4階 3~4ホール・W4205にあるボッシュブース

ボッシュ製品を紹介する「展示カー」

ボッシュブースに展示された「展示カー」

 展示車には1月の「CES 2023」で公開されたライドシェアサービス事業者向けのスマートカメラ「RideCare コンパニオン」も設置。前後方向に向いたカメラで車両の進行方向と車内の様子を撮影し、Gセンサーで交通事故などを検知した場合には録画データを位置情報やタイムスタンプと合わせてクラウドにアップロードする。また、ライドシェアサービスの利用者とトラブルが発生した場合には、車内に設置されたワイヤレスSOSを押すことでボッシュのサービスセンターに緊急通報することも可能。オペレーターがカメラ映像を見て必要だと判断した場合には警察などに通報を行なうという。

ライドシェアサービス事業者向けのスマートカメラ「RideCare コンパニオン」
展示カーにはボッシュが手がけるさまざまな自動車向け製品が装着される

「多様な分野の企業が参加することで技術革新が促進され、業界全体がこれまで以上に活気づいている」とメーダー社長

ボッシュ株式会社 代表取締役社長 クラウス・メーダー氏

 プレスブリーフィングでは最初に、ボッシュ 代表取締役社長 クラウス・メーダー氏が日本事業について解説を行なった。

「モビリティ業界は今、急速に変化しています。このジャパンモビリティショーを例に取っても、IT、金融、エネルギー分野など、モビリティに関わる幅広い分野の企業が参画して、参加企業数も倍増して大幅に拡大していることがその変革を象徴しています。多様な分野の企業が参加することで技術革新が促進され、業界全体がこれまで以上に活気づいています。私自身、日本のモビリティ産業に深く関わる企業の一員として、この変革に胸を膨らませています」。

「ボッシュは、1911年に横浜から日本でのビジネスを開始しました。以来、ボッシュは112年にわたり、電動アシスト自転車から2輪車、4輪車、トラック、そして都市部の移動手段からオフハイウェイ、さらには海上に至るまで、あらゆるモビリティ分野のお客さまとともに日本の産業の発展を支えてきました。私たちはモビリティカンパニーであることを誇りに思っています。現在では10か所の製造拠点と2つのテストコースを含め、全国32拠点で事業を展開しており、従業員数は6000人以上にまで成長しました。日本における連結売上高も、2023年は前年の3400億円と比較して20%以上の拡大と、過去最高記録を更新する見込みです。日本の自動車生産台数が前年比10%増であることを考えると、市場を大きく上まわるペースで成長しています」。

「そして日本における事業拡大をさらに後押しするのが、横浜市都筑区における新本社兼研究開発施設の建設です。敷地内には『ボッシュ ホール』という愛称で都筑区民文化センターも建設しています。これはボッシュグループ初となる公民連携プロジェクトで、日本進出以来最大の設備投資となる約3億ユーロを投資しています。2024年に竣工を迎えるこの新社屋には、東京・横浜エリアの拠点に点在する事業部やグループ企業を集約して約2000人の従業員が移転する予定です。ボッシュは新社屋開設により、日本のお客さまの多様なニーズに対し、より迅速に、かつ的確に対応していきます」。

「ボッシュが110年以上にわたって日本での事業を拡大してきたのは、世界の自動車生産の30%を担う日本の自動車メーカーをローカルでサポートするという責務を果たすためです。電動化や自動化が進み、モビリティを取り巻く環境が大きく変化するなか、ハードウェアからソフトウェア、プラットフォーム、サービスに至るまで、ボッシュはお客さまのニーズの多様化に寄り添い、包括的で幅広いソリューションを提供して大きく発展してきました」。

「未来の自動車技術は道路だけでは完結せず、クラウドソリューションの世界にも広がっていきます。そしてソフトウェア・ディファインド・ビークルの時代はすぐ目の前まで来ているのです。そこでボッシュは長年培ったハードウェアの強みに加え、ソフトウェアカンパニーとして発展し続けることで、モビリティの新時代を形作っていきます。それは、今回の出展テーマである『Let's shape the new era of mobility, together.』にも現れています。ボッシュは皆さまとともに持続可能なモビリティ社会を実現していくことを望んでいます」と語った。

「ロードスター」の制御モード「DSC-TRACK」をマツダと共同開発

ボッシュ株式会社 取締役副社長 クリスチャン・メッカー氏

 続いて、ボッシュ株式会社 取締役副社長 クリスチャン・メッカー氏が、ボッシュが取り組んでいる具体的な施策などについて解説した。

「ただいま説明したとおり、ボッシュはすでに単なるシステムサプライヤーではありません。ハードウェアの強みに加えて、ソフトウェア・ディファインド・ビークルの実現に向け、ソフトウェアを主軸とする自動車開発のトレンドに対応しています。まずは持続可能なモビリティの具体例である『eモビリティ』の取り組みについて説明します」。

「ボッシュは炭化ケイ素のSiCチップからコンポーネント、アクティブパーツ、ドライブシステム一式に至るまで、多くのeモビリティ製品をカバーしており、電動パワートレーン市場をリードしています。その結果、ボッシュのeモビリティ事業は成長を続け、2026年には60億ユーロの売上達成を目指しています。また、持続可能なモビリティ社会の鍵となるのがソフトウェアです。ボッシュはすでに、モビリティ分野におけるソフトウェア企業としてのポジションを確立しています。例えば現在、モビリティ事業だけで3万8000人のソフトウェア開発者が働いています。さらに運転支援、およびインフォテインメント用のコンピューターだけで、2026年に30億ユーロの売上高を見込んでいます」。

運転支援とインフォテインメント用のコンピューターだけで2026年に30億ユーロの売上高を見込む

「このように、ボッシュはハードウェアのみならずソフトウェアでも強みを持っており、ソフトウェア・ディファインド・ビークル分野におけるキープレイヤーです。ボッシュはこれまでハードウェアとソフトウェアを組み合わせてパッケージで提供してきました。しかし、先日のIAA モビリティで発表した動画認識ソフトウェアのように、1つのハードウェアに依存せずさまざまなメーカーの半導体で使用できる、スタンドアローンのソフトウェア製品の提供も開始して、お客さまにさらなる柔軟性を提供しています」。

「そしてボッシュは、すでにソフトウェアにおける日本のお客さまのニーズにも対応しています。『ビークル ダイナミクス コントロール 2.0』は、ドライバーの操作に応じて車両の望ましい挙動を予測して車両をコントロールするソフトウェアです。例えば横滑りの危険性が予測された場合は先まわりして車両に介入し、制御をかけて車両の動きをサポートします。これにより、日常だけでなく危機的な状況下の運転操作においてもドライバーの安心感を高めます」。

「ボッシュは近年、日本のお客さまとビークル ダイナミクス コントロール 2.0を搭載した『次世代横滑り防止ESC』の開発に取り組んできました。そして先日、ボッシュの次世代横滑り防止ESCがマツダ『ロードスター』の商品改良車に採用されました。ボッシュはビークル ダイナミクス コントロール 2.0をもとに、サーキット走行時にドライバーがクルマをコントロールする楽しさを残しつつ、スピンなどの急激な不安定挙動を検知した場合のみに作動して制御不能となるリスクを下げる制御モード『DSC-TRACK』をマツダと共同開発しました」。

ビークル ダイナミクス コントロール 2.0を活用した制御モード「DSC-TRACK」がマツダ「ロードスター」大幅改良車で採用された

「また、ボッシュではモビリティ利用者の安全性と快適さを担保するため、ソフトウェアを活用したサービスも提供しています。これまで禁煙車をレンタルしたにも関わらず、ひどい臭いに悩まされた経験はありませんか? 『RideCare Insight』と呼ぶボッシュのフリート管理向けのサービスでは、車両に搭載したセンサーボックスとAIを用いたクラウドベースのデータ分析で、車内での喫煙や車両の損傷を検知します。それらの情報をリアルタイムでフリート管理者に発信することで、素早く修理や清掃といった対応ができるようになります。そしてボッシュは2023年末までに、日本のお客さまが北米で展開するカーリース事業向けに、RideCare Insightの実証実験を共同で実施することになりました。ボッシュでは半年以上かけて、RideCare Insightを活用したデータ収集や分析を行なっていきます。この実証実験は、将来的に日本国内でRideCare Insightが導入される足掛かりになるでしょう」。

「さらにボッシュでは、車両向け、クラウド向けの両方で、ソフトウェア開発をより簡単に、かつ効率的にするためのソリューションも展開しています。ボッシュの子会社であるETASでは、ソフトウェア・デファインド・ビークル実現に向けた車載用ベーシックソフトウェア、ミドルウェア、開発ツール、クラウドベースのサービス、サイバーセキュリティソリューション、エンドツーエンドのエンジニアリング、コンサルティングサービスを提供しています」。

車内での喫煙や車両の損傷を検知する「RideCare Insight」

「ボッシュはすでに、日本のお客さまに対してソフトウェアカンパニーとしてあらゆるソリューションを提供し、日本のモビリティ市場の発展に貢献しています。そしてボッシュはさらにモビリティの新時代を切り開いていくために、2024年1月1日付でモビリティ関連事業を再編します。カスタマイズしたテクノロジーとソリューションをワンストップで提供することにより、お客さまの多様化するニーズに対して、よりよく、より迅速に対応することが可能になります」。

「このようにボッシュは、先進運転支援システム、モーション、エネルギー、ボディ&コンフォート、インフォテインメントの5つの主要領域と、それを横断するソフトウェア、ハードウェア、半導体、プラットフォーム、サービスなど、モビリティにまつわる広範囲なテクノロジーとソリューションを提供しています。ボッシュが提供するこれらの多岐にわたるソリューションをより深く理解していただくため、このブースにある展示カーをご覧ください。ソフトウェアに加え、ボッシュがネットワーク化、自動化、電動化、パーソナライズ化をどのように実現しているのかをご覧いただけます」。

ボッシュは2024年1月1日付でモビリティ関連事業を再編する

 メッカー氏は最後に「ボッシュは2024年に控えるモビリティ事業の再編と横浜での新本社兼研究開発施設の開設により、事業部をまたいだ協働を強化していきます。そしてボッシュはこれからも、モビリティにまつわる広範囲なテクノロジーとソリューションをワンストップで提供することにより、日本のお客さまとともにモビリティの新時代を形成してまいります」とコメントした。

佐久間 秀