イベントレポート
スズキ 鈴木俊宏社長とトヨタ 佐藤恒治社長がトークセッション「カーボンニュートラル×モビリティの未来」で語ったこととは
2023年10月27日 20:24
- 一般公開日:10月28日~11月5日
- 入場料:1500円~4000円
「ジャパンモビリティショー2023」(東京ビッグサイト:会期10月26日〜11月5日)の西展示棟1Fのステージでは、10月27日〜11月5日の期間、「ジャパン フューチャー セッション」と題して、さまざまなトークセッションが展開される。
10月27日、第1回のトークセッションとして「カーボンニュートラル×モビリティの未来」をテーマにトークセッションが開催され、日本自動車工業会副会長を務めるスズキ代表取締役社長の鈴木俊宏氏とトヨタ自動車代表取締役社長の佐藤恒治氏らが参加した。
トークセッションには、鈴木氏と佐藤氏のほか、国土交通省 物流・自動車局次長の久保田秀暢氏、ExRoad 代表取締役COO/CMOの北原啓吾氏、Spiber 取締役兼代表執行役の関山和秀氏、BUSINESS INSIDER JAPAN 副編集長の三ツ村崇志氏が登壇、モータージャーナリストでグラニテ 代表取締役の池田直渡氏をモデレーターに議論が展開された。
「カーボンニュートラル×モビリティの未来」のテーマに対して、使うときだけではなく、ものづくりを含めたモビリティライフサイクルの視点から脱炭素・地球環境を考えるといった、国によってカーボンニュートラル達成の方法は異なることや、ハードだけではなく輸送効率といったソフトの問題、クルマを使う側も一緒に協力しないと、カーボンニュートラルは達成はできないとの議論が展開された。高速道路における大型トラックの速度制限の見直しが検討されていることについては、燃費効率は悪化するなどとの指摘もあった。
モデレーターの池田氏からは「われわれは、常に自動車産業側になんとかしろって言うだけで、でもクルマを使う側も一緒に協力してくれないとカーボンニュートラルは実現できないよね」といった、ステージ裏での議論なども紹介された。
スズキの社長として発言した鈴木氏からは「インドでは、牛のうんこを使ってバイオガスを作ろうとしています。インドの牛の数って3億頭いるんですよ。3億頭の牛糞をうまく使うと3000万台のクルマを動かすことができると。で、今インドの乗用車の保有台数が4000万台なんですよ。だから、75%のクルマを牛糞を使って動かすことができるということなんです」。
「これがカーボンニュートラルになるのかという部分ですけど、実は大気中のCO2を草が光合成で取り込んで成長します。それを牛が食べてうんこを出します。で、メタンガスを出すことになるんですが、メタンガスの温室効果はCO2の28倍なんです。もちろんクルマでバイオマスガスを使うとC02が出るんですけれども、トータルで考えると温室効果ガスの削減になっているということで、バイオガスを作ってクルマを動かそうとしてます」と、農業との親和性があるインドでの取り組みについて紹介した。
また、トヨタとレクサスが掲げる「クルマ屋が創るEV」に対して、モデレーターの池田氏からは「例えて言うと、ダイエットはしたいんだけど、ダイエットはできるかもしれないけど、ものすごくまずいものって継続できないですよ。われわれは乗っていたらすごく楽しいし、このクルマ欲しくて買ったけど、これって実はエコなのっていうのが、本当はいちばん幸せ。クルマ屋のEVってそういうことをおっしゃているんだなと思っているんですけれど」と指摘。
クルマ屋が創るEVについて、佐藤社長は「もっとシンプルで、どんなに時代が変わっても、クルマって楽しくワクワクするものでありたいなっていう思いだけなんですけど、というのと同時に、クルマの付加価値がどんどん高まっていって、社会システムに溶け込んでいくようなモビリティに変わっていく、そのきっかけがこのモビリティショーなんだと思うんです」と話した。
佐藤氏は「クルマの中のコンピュータというのは、機能ドメインごとにバラバラなシステムで動いていて、本当に増築増築を繰り返してるので、先進安全はこのコンピュータが動かしてます。エンターテイメントはこっちでやってますみたいなことがあって、バラバラなものが1つのクルマの中であたかも一体になって動いてるようになってるんです。それをガラガラポンして、OSを1個ちゃんと作ろうと。で、そのOSの上でいろんなものがプラグインできるようにクルマの価値を高めていけば、もっとモビリティとして価値が高まるんじゃないってことやってるんですね」と話した。
そして、佐藤氏は「そういう進化は、例えばいろんなコミュニティとしてのソフトウェア・デファインド・ビークルというようなものを生み出す原動力になっていって、自動車会社だけじゃなくて、多くの企業のスタートアップの方々ももちろんそうですし、つながり始める。例えば、AR的に街を走っていたら、その街の情報がクルマに自動的に取り込まれて、これはなんだろうって気になったらすぐわかるようなソフトウェアが差し込めたり、あるいは、自分のナビと連動して、自分が到着するころに、目的地の近くの駐車場をナビと連動して予約させてあげる。ま、いわゆるスマホってハードウェアは皆さん一緒でも、持っているアプリは全然違いますというようなことがこれからクルマに落ちてきて多様化が進んでいくと、もっともっとコミュニティの広がりってあるんじゃないかな」などと、クルマ屋が創るEVとともにトヨタで進めるモビリティの未来への想いをあかした。