イベントレポート 東京オートサロン 2021

ダンロップ&ファルケン、ここでしか聞けない裏話が満載の「ちょっとディープな座談会」を公開中

開発秘話やタイヤ試験場見学、情熱たっぷりトーク、レース裏話まで内容もりだくさん

2021年1月15日~17日 開催

 ダンロップとファルケン(住友ゴム工業)は、バーチャルオートサロンの出展にあわせて開設した「パラレルTV」内にて、「ちょっとディープな座談会」と題したトークショー動画を公開した。

 動画は「密着!冬タイヤ」「情熱デザイン」「ニュルの裏側」と3本公開され、モータースポーツのリポーターでもお馴染みの井澤エイミーさんをMCに迎え、普段は明かされることない開発者のタイヤへの深いこだわりを紹介するもの。

 なお、各動画は30分ほどなので、時間のあるときにじっくり見ていただきたい。

今明かされるスタッドレスタイヤ誕生秘話

 密着!冬タイヤ編では、“ミスタースタッドレス”と呼ばれているダンロップのタイヤ設計担当の中島氏が登場。「冬用タイヤを作りたい」という強い想いを胸に、10年間ずっと冬用タイヤの担当を務めていて、今販売されている冬用タイヤは、まさに我が子のような気持ちだという。

今は日本では使用禁止となっているスパイクタイヤは、スタッドタイヤとも呼ぶ
ダンロップのスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX(ウィンターマックス)03」が98サイズもあると聞いて驚きを隠せない井澤MC
実際のタイヤ試験場の内部に入りテストの様子を見学。当然スタッドレスタイヤは雪の路面を再現した状態でテストが行なわれている

 スタッドレスタイヤの表面にある細かい波のようなギザギザの切れ目の意味や効果、ゴムの柔らかさの秘密、開発期間が4年もかかっている理由、今は日本では使えないが、ロシアや北欧で使われているスパイクタイヤ、スタッドレスタイヤの名前の由来、他メーカーのタイヤのゴムをツンツン触ったことがある話、開発の工程、タイヤ試験場見学などなど、マニアックなだけでなく、ためになる内容も盛りだくさんの動画となっている。

 動画の後半では「ウィンターマックス03がなぜ氷に強いのか?」についての開発秘話を明かすとともに、開発テストで雪道をさんざん走り回っていることから、冬道で安全に走るためのコツも紹介してくれた。最後に、今目指している今後のスタッドレスタイヤについて目標を語って締めくくられた。

ちょっとディープな座談会 #01 密着!冬タイヤ|東京オートサロン2021|ダンロップ(37分20秒)

ただの黒くて丸い物体をデザインするってナニ?

 第2弾となる情熱デザイン編では、カーデザイナーであるSWdesignの和田氏、住友ゴム工業の技術部からタイヤの設計者である岡田氏をゲストに招き、リモート座談会が開かれた。

 岡田氏は、ユーザーがタイヤに何を求めているかのアンケートを行なったところ、3位が「燃費」、2位が「乗り心地・静粛系」、1位が「長持ち」であることを紹介。しかし、この3つはどれも相反する要素となり、この3つを高い次元で両立させたのが理想のタイヤであると語ってくれた。

和田氏は日産自動車やアウディのカーデザイナー経て独立。今回初めてタイヤのデザインを行なったという。岡田氏はモータースポーツ部で2輪タイヤの設計を行なっていたが、5年前から低燃費タイヤの設計を担当している

 また岡田氏が担当しているのはタイヤの基本性能である「クルマの荷重を支える」「曲がる」「止まる」に対して、それぞれに最適な部材を選ぶといった構造面でのデザイン。そして、これまではタイヤパターンのデザインも設計担当が行なっていたが、今回ダンロップという全体のデザイン統一感を高めるために、和田氏にデザインを依頼したと明かしてくれた。

 和田氏は、クルマのデザインを行なう際、最初に描くのはタイヤであることを紹介。そこからボディやキャビンを描いていくと言う。また、今販売されている「VEURO VE304」については、技術的に高いレベルでありながら、美しいものを作りたいという考えに基づいて、サイド面にもこだわったという。

信号で隣に止まったクルマから見えるのはトレッドパターンではなくサイド面なので、特にこだわったという。304の背景にあるドットは情熱を表現したという

 また和田氏は、ダンロップは130年以上の歴史があり一番最初にタイヤを開発したメーカーであることを紹介しつつ、1960年代~1970年代はダンロップがだんとつでF1を牛耳っていたことにも触れ、当時のレーシングドライバーの胸にダンロップのワッペンが付いている姿こそ情熱であり、この情熱を次世代にどのようにつなげていくかも考えなければいけないと岡田氏に投げかけたと力説。

 岡田氏もVEURO VE304が会社としてもとても重要な商品で、開発当時12月24日のクリスマスに行なっていた会議が伸びてしまい、東京から神戸に帰ろうと空港行きのバスを待っていたら、なんと満員で乗れず仕方なく新幹線に変更して何とか帰宅できたと苦労エピソードを紹介。ちなみに、その会議が伸びたのは和田氏の熱いトークが原因だったと談笑。その他にも、タイヤの設計で気を付けたポイントなどが情熱とともに語られた。

ちょっとディープな座談会 #02 情熱デザイン|東京オートサロン2021|ダンロップ(39分27秒)

世界最大の草レースと呼ばれるニュル24時間レースの苦労話

 第3弾は歴史のある耐久レース「ニュルブルクリンク24時間レース」に参戦しているファルケンチームによる「ニュルの裏側」がテーマ。登場したのはニュルブルクリンク24時間レースで使われるタイヤを担当しているという住友ゴム工業モータースポーツ部の中野氏。

 2016年から担当していて、当初は「こんな場所でレースをするのか? 自分はとんでもないところに来てしまったと思った。また、担当になれて嬉しかった半面、自分に務まるか不安もあった」と当時を振り返った。

住友ゴム工業株式会社 モータースポーツ部 中野氏。以前は86/BRZ Raceのタイヤ担当もしていたという

 ニュルの特長として、日本のレースSUPER GTでは使用が禁止されているタイヤウォーマーを使えるため、ドライバーはコースに出てからタイヤを温めるという作業が要らないこと挙げた。このタイヤウォーマーを使うと、冷えた状態で走らず済むので表面を理想的な状態から使えるというメリットも教えてくれた。

 また、ニュルにはドライ用がソフト、ミデアム、ハードの3種類、雨用と乾きかけの路面用の計5種類のタイヤを持ち込んでいることも紹介。さらに、それぞれを20~25セットほど持ち込んでいるという。

2019年ニュルブルクリンク24時間レースにて総合20位を獲得したポルシェ 911 GT3 R

 さらにSUPER GTのタイヤとの違いとしては、ピンポイントのコンディションに合わせているのがSUPER GT用で、ニュル用はもう少しワイドレンジのコンディションで使えるように開発しているとコメント。加えて一番苦労しているのは、タイヤの耐久性とグリップを両立させる点であることも解説した。最後に今後の目標としては、ニュルはクルマも表彰台に飾ってもらえるので、表彰台獲得にはこだわっていきたいと語り締めくくった。

ちょっとディープな座談会 #03 ニュルの裏側|東京オートサロン2021|FALKEN(35分29秒)

 また、「DUNLOP TABLE TRIP ADVENTURE」では、VR専用のゴーグルやスマートフォン用ヘッドセットを使用しながら動画を視聴すると、より臨場感のある3D映像で“安全と安心がよく分かる”新感覚のVR体験が可能となる。

DUNLOP TABLE TRIP ADVENTURE|東京オートサロン2021|ダンロップ(5分24秒)

編集部:塩谷公邦