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ホンダ、最新車いすレーサー「翔」を公開した「車いす陸上競技支援の取り組み」報告イベント
2019年度のホンダグループアスリートなど紹介
2019年3月4日 18:13
- 2019年2月28日 開催
本田技研工業は2月28日、車いす陸上競技用の最新型レーサー「翔」やホンダグループがサポートするアスリートなどを紹介するイベントを開催。ホンダグループによるこれまでの車いす陸上競技支援や、陸上競技用車いすの開発の取り組みなどが報告された。
ホンダグループの車いす陸上競技支援活動
同イベントでは、ホンダグループとして車いす陸上競技の支援を開始して20周年を迎えることから、これまでの取り組みなどが紹介された。
ホンダの車いす陸上競技支援活動は、1981年のホンダ太陽設立をきっかけに、1999年にホンダ太陽、ホンダR&D太陽の従業員が障がい者スポーツ「ホンダアスリートクラブ」として活動開始したことからスタート。それ以降、2000年に本田技術研究所で陸上競技用車いすの開発を開始、2002年には本田技術研究所の技術開発支援のもとでホンダ太陽が試作1号車を製造して、「ホンダアスリートクラブ」の所属選手へ車いすレーサーが提供された。
2013年にはホンダR&D太陽、本田技術研究所、八千代工業の3社共同研究によりカーボンフレームを採用した車いすレーサー「極」の量産技術を確立。2014年に量産モデル「極」が八千代工業で生産販売開始されている。
こういった車いす陸上競技への取り組みについて、本田技研工業 代表取締役副社長 倉石誠司氏は「車いす陸上競技の『困難な道をあえて選び、自らの“想い”でやり遂げる』、そして1番を目指す姿は、ホンダのDNAそのものです」と述べた。
倉石氏は「私も車いす陸上競技は大好きで、世界初の車いすだけのマラソン国際大会である『大分国際車いすマラソン』には何度も足を運びました。マラソンコース内に弁天大橋という勾配がきつい坂があり、有名な観戦スポットになっています。すべてのアスリートの“勝ちたい”、あるいは“何とか走り抜きたい”という熱い想いを直接肌で感じることができ、本当に感動します。ぜひ皆さんも1度足をお運びいただき、その『想い』を共有していただければと思います」と話した。
ホンダの車いすレーサー技術の集大成「翔」
最新型レーサー「翔」やこれまでの陸上競技用車いすの開発については、本田技術研究所 R&DセンターX 主席研究員 竹中透氏が登壇して説明した。
ホンダブランドとして4月に発売される「翔」については、「“勝利の笑顔をアスリートに届ける”をコンセプトに、さらなる高みを目指したモデルで、今までのホンダ車いすレーサー技術の集大成といえるものです」と紹介。
竹中氏は「特徴は3つあります。1つ目は、アスリートの闘志をかき立てる斬新なデザインのウィングフルーム。2つ目は、ステアリング周辺パーツをフレーム内に格納したビルトイン・ダンパー・ステアリング。3つ目は、素材と構造の最適化を図った超軽量高剛性カーボンホイールです」と話し、3つ目のホイールについて「ホンダサポート選手の皆さまから高い評価をいただいており、世界のトップアスリートの1人であるエレンスト(・ヴァン・ダイク)選手の強力な推進力でさえもしっかり受け止めながら、軽快に転がるホイールに仕上がっております」と説明した。
このほかにも、アスリートに対してさまざまな技術面でのサポートを行なっていることを紹介。例えば、車いすレーサーを漕ぐ力の見える化など、科学的なアプローチでアスリートにフィードバックしていることや、安心・安全な車いすレーサーを提供するため、車いす陸上競技では初めての非破壊検査をレース現場で実施していることなどを紹介。竹中氏は「今後も、アスリートの勝利の笑顔を目指す取り組みを続けていきたい」との意気込みを語った。
同イベントでは、カーボン製モノコックフレーム採用した車いすレーサー 翔が公開されるとともに、2019年度のホンダグループアスリートとして、山本浩之選手、西田宗城選手、エレンスト・ヴァン・ダイク(Ernst van Dyk)選手、マニュエラ・シャー(Manuela Schar)選手、喜納翼選手、河室隆一選手が紹介され、2019年シーズンの活動に向けて本田技研工業 執行役員 尾高和浩氏から選手に対して応援メッセージが贈られた。
会場で公開された車いすレーサー 翔は、カーボン製のモノコックフレーム、フロントフォーク、ディスクホイールを装備。標準サイズとして、フレーム全長は1750~1850mm、フレーム腰幅250~400mm、標準重量は8500g(ホンダ製カーボンホイール装着時)。それぞれオーダーメイドにより変更可能で、4月に発売を予定している。
車いすレーサー 翔についての印象を聞かれた山本浩之選手は「自分たちは走るときに車輪を漕ぐので、前輪がフラフラすると、漕いで直して漕いで直してと手をハンドルに持っていって推進力がなくなってしまいます。まっすぐ自分の思い通りに走ってくれると、その分漕ぎ続けられタイムも縮められる」と語り、新型レーサーでは直進安定性がよくなるのではとの印象を話した。