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ドイツ・ノイブルグの「Audi Driving Experience」で憧れのスーパーカー「R8」の運転体験

「Audi Driving Experience」の「R8 Exclusive Experience」で教習車として利用される「アウディ R8 クーペ」

 アウディ スポーツは独アウディのサブブランドで、アウディが販売するスポーツカーやモータースポーツ活動時のブランドとして活用されている。例えば、V型10気筒エンジンをミッドシップに搭載しているスーパースポーツカー「アウディ R8 クーペ」、「アウディ RS 5 クーペ」など、車名に「R」や「RS」が入っているスポーツカーがアウディ スポーツのブランドで販売されている。

 それと同時に、DTM(ドイツツーリングカー選手権)やフォーミュラEなど、アウディが「ファクトリーモータースポーツ」と呼んでいるいわゆるワークス参戦のモータースポーツもこのアウディ スポーツの下で活動が行なわれている。

 アウディ スポーツではそうした市販車やモータースポーツに留まらず、日本語に意訳するとすれば「運転の楽しさを学ぶ」こととでも言うべき「Driving Experience」(運転体験)と名付けられた各種のプログラムも行なっている。具体的にはアウディが提供する各モデルを利用して専用サーキットなどを走る体験を提供するプログラムで、アウディ R8といったスーパースポーツカーで専用サーキットを走行することが可能だ。

 今回、筆者はドイツ・ノイブルグにあるアウディ スポーツの本拠地に併設されている「Audi Driving Experience」の施設を訪問し、そこで開催されている「R8 Exclusive Experience」というプログラムを受講してきたので、その模様をお届けする。

1400ユーロで受講できる「R8 Exclusive Experience」

巨大なアウディのコーポレートマークが印象的なAudi Driving Experienceの施設

 アウディ スポーツの本拠地(別記事参照)もあるドイツ・ノイブルグは、アウディの本社および生産拠点があるインゴルシュタットからクルマで数十分程度の場所にある。ドイツの典型的な地方の村という感じで、田園風景の中にいきなり近代的なアウディ スポーツのファクトリーやAudi Driving Experienceの施設が現われるといった閑静な場所にある。

Audi Driving Experienceの看板

 アウディ スポーツの本拠地には大きく分けて4つの建物がある。そのうち3つはアウディのファクトリーモータースポーツやカスタマーレーシングの部品をストックし、世界中の顧客に対して出荷する拠点として利用されている。そして残る1つが今回紹介するAudi Driving Experienceの施設になっている。Audi Driving Experienceの施設は1階が受付とアウディ市販モデルのショールームになっており、2階はカフェとミーティングルームになっていて、Audi Driving Experienceの参加者と講師がブリーフィングを行なうこともできるようになっている。プログラムでの走行は敷地内に用意されている専用のサーキットを利用して行なわれる。

Audi Driving Experienceの施設1階はショールームになっている
サーキット部分

 いくつか用意されているプログラムの中で、今回筆者が参加したのは「R8 Exclusive Experience」。参加費は1人1400ユーロ(1ユーロ=120円換算で16万8000円)となっており、決して安い部類のプログラムではない。しかし、この価格で憧れのスポーツカーを振りまわしたい放題だと思えば安いとも言える。このあたりの判断は人それぞれだろう。なお、参加の予約などは日本からアウディ ジャパン経由でも申し込めるし、直接ドイツのAudi Driving Experienceに行ってから申し込むこともできるとのことだが、直接ドイツ側に申し込む場合、必要な書類にドイツ語ないしは英語で必要事項を記入したり、メールのやりとりをしたりといった手順も発生するので、その点は注意したい。

アウディのワークスドライバーが講師として説明してくれる座学付き

当日の講師を担当したラヘル・フレイ選手。世界に12人しかいない「アウディ・カスタマー・レーシング・ドライバー」の1人で、プロのレーシングドライバーだ。日本の感覚で言えば、SUPER GTに参戦しているメーカー契約のドライバーという感じだろうか

 今回申し込んだR8 Exclusive Experienceだけでなく、ほとんどのプログラムには専任の講師が付くという。今回筆者らのグループを担当してくれたのは世界で12人が任命されているという「アウディ・カスタマー・レーシング・ドライバー」の1人であるラヘル・フレイ選手。12人の中で唯一の女性ドライバーであるフレイ選手は、筆者がプログラムを体験した前日に行なわれたDTM 最終戦のサポートレース「Audi Sport Seyffarth R8 LMS Cup」のレース2で見事優勝を飾るほどの実力の持ち主だ。なお、講師は現役ドライバーが務めるとは限らず、プログラムの特性などでも変わってくるとのことだった。

サーキットの説明スライド
プログラムの説明スライド
R8だけでなくRSモデルを使ったプログラムも用意されている

 フレイ選手は他の男性ドライバーと同じくアウディ・カスタマー・レーシング・ドライバーに選ばれており、プロドライバーの1人として活動している。誤解を恐れずに日本の感覚で例えるとすれば、メーカーのサポートを受けてSUPER GTのGT300クラスに参戦しているドライバーのような存在と表現すれば分かりやすいだろうか。

 そんなフレイ選手が、どのように走ればよいかといったポイントを座学で直接教えてくれ、その後は講師が先導しつつ、実際にR8でコースを走ることになる。なお、プログラム中は基本的にすべて英語で行なわれる。受講者がしゃべる必要はほとんどないが、講師の指示などに従うためにはある程度のヒアリング(聞き取り)能力が必要になるので、英語に自信がない人は注意が必要だ。

講師がスライドを使って走り方などを教えてくれる

 なお、筆者自身はCar Watchの記者ではあるが、クルマのレビューなどは担当外(基本はモータースポーツとIT担当)。運転に自信がある方ではないが、そんな筆者でも聞いていて難しいことはなかったので、英語がある程度理解できる人ならとくに難しいということはないと思う。

R8の運転の仕方を説明
プログラムでの走り方なども説明される

 フレイ選手はまず、プログラムを行なう上での注意点として、無線の使い方、また、プログラム時に走行中に走行順を入れ替えることなどの基本的な手順を教えてくれて、その後は実際にどのようにドライブすればいいかをレクチャー。スローイン、ファーストアウトといった基本的な走り方の解説から始まり、コーナーではどのようにブレーキングをすべきなのか、アンダーステアが出た時にはどう対処するのかなどについて説明してくれた。

 座学が終了すると1階に降り、貸し出されるバラクラバ(目出し帽)とヘルメットを装着して車両に向かう。なお、プログラムを受けるにあたっての服装はレーシングスーツである必要はないが、運転に適した格好である必要がある。女性だとロングスカートなどでは運転しにくいかもしれないので、参加当日はズボンなどの運転しやすい服装がいいだろう。靴もレーシングシューズでなければならないということはないが、やはりスニーカーのような運転に適したものがベターだろう。

3000万円のスーパーカーでサーキットを走行

バラクラバとヘルメットを装着してR8に乗り込む

 今回ドライブしたのはアウディ R8 クーペで、5.2リッターのV型10気筒エンジンをミッドシップに搭載しているモデル。日本価格は3001万円(スパイダーモデルは3146万円)という車両で、子供のころに遊んだ「スーパーカー消しゴム」に出てくるようなスーパーカーに乗るとあってドキドキしたが、あたり前だが運転席に座ればステアリングやアクセル&ブレーキがあるクルマで、動かすこと自体はそれほど難しくない。

 しかも、アウディ R8 クーペは7速Sトロニックトというトランスミッションを採用している。いわゆる「DCT」と呼ばれる7速ATで、ステアリングに備えるパドルシフトを利用してシフトアップ、シフトダウンができるほか、ATなのでギヤ変速をコンピュータに任せることももちろん可能。運転に自信がある方ではない筆者はほとんどATモードで走らせた。理想としてはかっこよくエンジン回転を合わせてギヤチェンジ!といきたいところだが、その結果としてコースから飛び出し、一緒に参加している人に迷惑をかけるのもよくないだろうと考えて、まずは安全運転に徹することにした。

講師から車両に関する説明も行なわれる
アウディ R8 クーペのインテリア。ここはドイツなのでステアリング位置は左だ

 ドライブは、講師のフレイ選手が走らせる先導車の後方について走る。まずは一番最後に走ることを選択するが、すでに述べたとおり、途中で順序を入れ替えていくので、先頭になって先導車のすぐ後ろを走る機会も何度かあった。正直に言ってついていくので精一杯で、プロのドライバーというのは本当に運転がうまいのだと当たり前のことに感心していたが、だんだん慣れてくると、ストレートでスピードを出してみたり、コーナー手前で前より少し奥でブレーキングしてみたりとチャレンジすることができた。そうしてポジションを入れ替えつつ何周かドライブし、ピットに戻るということを数回繰り返す。正直なところ、最後の周回はもうフラフラで、クルマの運転って体力を使うんだなと再認識させられた。

 結果から言えば、先頭に立つと先導車から大きく置いていかれたり、最後尾だと1人だけ取り残されたりして大変だったが、憧れのスーパーカーを、制限もありつつある程度は自由にドライブできるという体験は、それこそ「プライスレス」だと感じた。

1台ごとにカメラが取り付けてあり、メモリを入れてもらってドライブ開始
終了後に受講修了証を受け取って終了

 なお、サーキット走行中の様子は、車内に設置されたスポーツ撮影用アクションカメラ「GoPro」で撮影されており、プログラムの最後にEメールを登録すると、撮影されたビデオ映像がアップロードされているURLが後日送られてくる(なお、1か月が過ぎると削除されるので、それまでにPCなどにダウンロードして保存しておく必要がある)。前のクルマにどんどん離されるなど悪戦苦闘する様子が映っていて、思わず冷たい微笑みを禁じ得なかったのだが、どんな雰囲気なのかをご理解いただくため恥を忍んで掲載しておくので、よろしければ参考にしてほしい。

Audi Driving Experienceのプログラム終了後に送られてくるビデオ(1分2秒)