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9月初旬デビューのトヨタ新型SUV「ヤリスクロス」、現時点で分かった概要をおさらい
「全ての人に走る楽しさと所有する喜びを提供したい」と末沢チーフエンジニア
2020年7月23日 12:01
トヨタ自動車は、新型コンパクトSUV「ヤリスクロス」のプロトタイプ試乗会を袖ケ浦フォレストレースウェイで開催した。この試乗会は、ヤリスクロスの価格やパワートレーンのスペックといった詳細は伏せられる形で行なわれたが、本稿では現時点で分かった車両概要をおさらいする。
本来であれば、3月の「第90回ジュネーブ国際モーターショー」でお披露目される予定だったヤリスクロスだが、新型コロナウイルスの影響によりジュネーブショーが中止となり、発表を4月に変更。その時点で発売は「日本では2020年秋、欧州では2021年半ばの発売を予定」としていたが、日本では9月初旬に発売されることが正式にアナウンスされた。
ヤリスクロスは、ヤリスブランドで築いてきた「走る楽しさへのこだわり」「クラスを超えた質感」を受け継ぎつつ、都市型コンパクトSUVを再定義することを目指して開発されたモデル。ヤリスと同様、コンパクトカー向けのTNGAプラットフォームと一新したハイブリッドシステムを採用するとともに、取りまわしのいいボディサイズと居住性や荷室空間といったSUVらしいユーティリティ性能を両立させた。ヤリスと同じGA-Bプラットフォームを採用し、車名も同じヤリスを使うものの、外装で共通するのはセンサー類程度とのことで、そのことからも力の入れようがうかがえる。
チーフエンジニアを務めた末沢泰謙氏は「TNGAの採用により、全ての人に走る楽しさと所有する喜びを提供したいという想いで開発しました」と語り、その特徴として「洗練されたデザイン」「走りの楽しさと圧倒的な低燃費の両立」「驚きの荷室ユーティリティ」「安心・安全先進装備」の4点を挙げる。
まず外観デザインはSUVならではの“ロバスト”(頑強さ)を表現したのが特徴で、気楽さ、機動性、利便性に特化し、活動的かつ無駄のない都市型ミニマルクロスを目指したという。具体的にはSUVならではのロバストとアジリティ(俊敏さ)を同時に表現するため、ダイヤモンド形状のボディにフェンダーの塊を組み合わせるという立体構成とした。ボディサイドではフロントからリアまで高い位置をイッキに通り抜ける水平基調のキャラクターラインが与えられ、SUVならではのロバストな骨格や姿勢を形成するとともに、フロントまわりではロアバンパーやフェンダーからなる立体構成とバンパー両端のC字型グラフィックですっきりとした都会型のイメージを表現したという。また、リアまわりではスクエアなデザインにワイドなバックドアの開口部によって高い機能性を表現するとともに、大きく張り出したリアフェンダー、フロント同様のC字型グラフィックで構成される。
ボディサイズは4180×1765×1560mm(全長×全幅×全高。全高はアンテナ除く)、ホイールベースは2560mm。同社のコンパクトSUV「ライズ」よりも185mm長く、70mm広く、60m低いサイズ。また、同じくSUVの「C-HR」(ガソリン 2WDの「S-T」)と比べると205mm短く、30mm狭く、10mm高いスペックとなる。
走行性能においては、「軽快なハンドリングと上質な乗り心地」「SUV世界トップレベルの低燃費」「力強い4WD性能」の3点にこだわった。
まず車体まわりでは、軽量・高剛性ボディ・シャシーを採用するとともに骨格結合構造の最適化(環状構造)を実施し、さらにサスペンション取り付け部の高剛性化を図った。ステアリングまわりの高剛性化とサスペンションとの直結感の向上、また電動パワーステアリングのモーター出力向上によってキビキビとしたハンドリング性能を実現したという。加えて、サスペンション取り付け角の改善などでサスペンション摩擦の大幅な低減を図り、しなやかで上質な乗り心地を追求したとのこと。
パワートレーンは直列3気筒1.5リッターダイナミックフォースエンジンを搭載するガソリンモデル、直列3気筒1.5リッターダイナミックフォースエンジンにリダクション機構付のTHSIIを組み合わせるハイブリッドモデルを展開し、それぞれ2WD(FF)と4WD(ハイブリッドはE-Four)をラインアップする。中でもハイブリッドモデルはヤリスと同様にシステム/モーター/バッテリー出力の向上を実施し、リニアな加速性能を実現している。末沢氏いわく「車両の軽量化と相まって市街地から高速道路、ワインディングまで気持ちよく走れる」という。
一方、ラゲッジスペースの使い勝手にもこだわったのがヤリスクロスの特徴として挙げられている。今回、トヨタのコンパクトSUVとして初めて4:2:4分割可倒式リアシートを採用し、リアシートの中央部を倒すことで長尺物を搭載しても大人4名の乗車を可能にした。ラゲッジスペースの寸法は820×1400×850mm(室内長×室内幅×室内高)、ラゲッジ容量は390L。トヨタのコンパクトSUVとして初めて「6:4分割アジャスタブルデッキボード」を採用し、積載する荷物の高さに応じて荷室床面の高さを2段階で調整できるようにした。これにより9.5インチのゴルフバックを2個、または110Lのスーツケース2個を積載することが可能。さらに、従来のトヨタ車比で2倍の速度を実現したという新開発の「ハンズフリーパワーバックドア」を採用しており、スマートキーを携帯していれば、リアバンパーの下に足を出し入れするだけでバックドアが自動開閉する。
安全装備では、ぶつからないをサポートする「プリクラッシュセーフティ」(歩行者[昼夜]・自転車運転車[昼]検知機能付衝突回避タイプ/ミリ波レーダー+単眼カメラ方式)、車線中央のトレースをサポートする「レーントレーシングアシスト」、全車速追従機能付の「レーダークルーズコントロール」、夜間の見やすさをサポートする「アダプティブハイビームシステム(オプション)orオートマチックハイビーム」、最高速度/はみ出し通行禁止/車両進入禁止/一時停止の道路標識をメーター内に表示する「ロードサインアシスト」、「先行車発進告知機能」などをセットにした最新の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を標準装備。
プリクラッシュセーフティについては、交差点右折時に直進してくる対向車や、交差点右左折時に対向後方から横断してくる歩行者も検知可能にするなど、事故発生率が高い交差点内での衝突回避または被害軽減をサポートする。
なお、パーキングブレーキについて、ヤリスでは手引き式だったところ、ヤリスクロスでは電気式パーキングブレーキに変更。これにより、上記でも記載したとおりレーダークルーズコントロールは全車速追従機能付きとなったのもポイントの1つになっている。
また、横風の影響により車両が流されていることを検知すると、片側の車輪だけにブレーキをかけて横流れを軽減する「横風対応制御付きS-VSC(Vehicle Stability Control)」をトヨタ初採用。背の高いSUVに特に有効な機能となっており、80km/h以上で走行する際に機能するとのこと。
そのほか、ヤリスにも採用した高度駐車支援システム「アドバンスト パーク(パノラミックビューモニター付)」をトヨタのSUVとして初搭載。ステアリングに加えてアクセル、ブレーキも制御し、並列駐車や縦列駐車を自動で行なってくれる。この機能では、事前に駐車位置を登録することで、区画線のない駐車場や隣接車両がない環境下での駐車操作もアシスト可能になっている。