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トヨタ、新型車「ヤリス」に小型・軽量・高効率の新型ハイブリッドシステム搭載。モーター、リチウムイオンセルなど新開発

FF 2モーターハイブリッド

新型車「ヤリス」のリダクション機構付きTHS II トランスアクスル。現行「プリウス」と同様の複軸配置になっている

 トヨタ自動車は10月16日、新型コンパクトカー「ヤリス」を発表した。このヤリスは「ヴィッツ」の後継車となり、今後のトヨタコンパクトカーの中心を担当していく。

 新型ヤリスは、プラットフォームに新開発のTNGA GA-Bプラットフォームを採用。Bセグメント用のこのプラットフォームは、プリウスなどのGA-C、カムリなどのGA-K、レクサス LCなどのGA-L(クラウンは、GA-Lのナロー)に続くプラットフォームで、新型ヤリスでデビューする。

 ヤリスでは、1.0リッターガソリン、1.5リッターガソリン、1.5リッターガソリン+リダクション機構付きTHS II ハイブリッド(FF 2モーターハイブリッド)の3種類のパワートレーンが存在するが、本記事では刷新された新型ヤリスのハイブリッドシステムを紹介する。

 新型ヤリスのリダクション機構付きTHS IIは、現行プリウスのリダクション機構付きTHS IIのノウハウを盛り込んだものになる。現行プリウスのリダクション機構付きTHS IIは、それまでのリダクションギヤのプラネタリーギヤを平行軸歯車に変更。モーターを複軸配置する「新複軸構造トランスアクスル」としてデビューした。新型ヤリスは、その新複軸タイプTHS IIを全体的にコンパクト化したものになる。

新型車「ヤリス」。TNGAのGA-Bプラットフォーム採用第1弾車種

モーターを新設計してコンパクト化

新開発の駆動用モーター(MG2)。高出力化が図られているとのこと。ちなみに現行のヴィッツは45kW(61PS)

 そもそも、現行プリウスの新複軸構造も、それまでのTHS IIをコンパクト化するために採用されたもの。それをさらにコンパクトにするために、ヤリスのTHS IIでは、モーターの小型化に取り組んだ。ハイブリッドシステムの出力、回生を担うモーターは、一般的に高価な部品で、多くの場合複数のモデルに同じものを利用しようとするものだ。しかしながら、新型ヤリスでは発電用モーター(MG1)、駆動用モーター(MG2)を新開発。小型化、高効率化、高出力を図っている。具体的な数字は今後発表されていくが、見た目も明らかにプリウス用のものよりコンパクトになっている。

 そのコンパクト化に合わせ、THS IIのトランスアクスルケースも小型化。リダクションギヤとモーター部のケーシングも薄型化を図ることで、徹底的にコンパクトなユニットを追求している。

 これだけコンパクトになってくると、熱の発生源が集中することで、単位面積当たりの発熱が大きくなってくる部分が出てくる。それらの対処のために、オイル潤滑のためのパイプを新たに設け、効率的なオイル循環を実現。オイルの量の最適化も図ることで、フリクションロスの低減も図っているという。

現行プリウスと同様の複軸配置。駆動用モーターを平行軸歯車のリダクションギヤで接続することで、コンパクト化などを図ったもの
発電用モーター(MG1)も新設計。小型で高効率なものとなっている
黒いエンジニアリングプラスチック製の部品が新しく設けられたオイルの潤滑パイプ。適切な場所に適切な量のオイルを運ぶ
トランスアクスル下部に設けられたオイルポンプ。ここから上部まで運ばれる

 この高効率なトランスアクスルに電気を供給するユニットも新開発。PCUには、新採用の高性能マイコンのほか、インバータにはIGBTに変えてRC-IGBT素子を採用。RC-IGBTとすることで小型化を図れたという。

 また、ハイブリッド車で常に注目の的となるバッテリは、セルから新開発のリチウムイオンバッテリになった。これはセルの高電圧化を図ったといい、現行プリウスのものとも異なるという。また、従来のリチウムイオンセルに比べ、充電も200%の能力に。つまり充電能力2倍となり、これが回生時の充電量増加に寄与。従来よりも回生エネルギーをため込みやすくなっており、当然ながら燃費は改善する。このBセグメントのトヨタハイブリッド車(現行ヴィッツやアクアなど)で、リチウムイオンバッテリが採用されるのも初めてとなる。

直流からモーター制御の交流に変換するなどの役割を担うPCU。これもRC-IGBT素子を新採用し、小型化を図った
ハイブリッド車で注目されるのがバッテリ。新開発セルのリチウムイオン電池を採用。高電圧化によりセル数の減少などができているとのこと

エンジンは新開発の3気筒1.5リッターエンジン

トランスアクスルに組み合わされる新開発 直列3気筒 1.5リッターダイナミックフォースエンジン「M15A」。アトキンソンサイクルで動作する

 この新型トランスアクスルなどと組み合わされるエンジンは、新開発の直列3気筒 1.5リッターダイナミックフォースエンジンになる。ガソリンエンジンモデルの直列3気筒 1.5リッターダイナミックフォースエンジンと同じ「M15A」という型番のエンジンだが、ハイブリッドモデルではポート吸気、ガソリンモデルでは直噴と、エンジンに要求される能力に合わせて大きく仕様変更。

 ボア×ストロークは80.5×97.6mmと同様のロングストロークタイプだが、ハイブリッド用のM15Aでは集合型の排気ポートを採用。これにより排気冷却を行なっている。ちなみにこのボア×ストロークはRAV4に搭載されているM20Aと同一の数値。4気筒のM20Aを3気筒化、つまりTNGAのモジュラー設計により生み出されたものがM15Aになる。

 このエンジンは、従来のエンジンより熱効率を2%向上。全域でトルクも向上しているという。

高効率吸気ポート。吸気側VVTは、VVT-iE。ハイブリッド用のM15Aは、ポート噴射を採用
集合排気ポート。排気冷却のために採用された。排気側VVTは、VVT-i

 これらさまざまな改良により、燃費性能を向上。電動性能も向上しており、分かりやすい指標ではEV走行の最高速度が70km/hから130km/hに引き上げられている。もちろんその航続距離は短いだろうが、120km/h規制の高速道路で上限までEV走行ができるようになった。

 モーター、バッテリセル、インバータなど電動化ユニット、そして新世代のM15A型エンジンが組み合わさったヤリスのTHS IIは、これからのトヨタハイブリッドのベンチマークとなるシステムだろう。とくに、リチウムイオンバッテリセルの性能向上は、多くのトヨタ車に恩恵を与えていくことになる。詳細の発表を期待したい。

【お詫びと訂正】記事初出時、一部M15AとM20Aの誤記がありました。ヤリスに搭載される1.5リッターエンジンがM15A、RAV4などに搭載される2.0リッターエンジンがM20Aとなります。