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トヨタ、新型「ヤリス」は“黒豆のようなクルマ”!? デザイン詳細を担当者が解説

新型ヤリス ワークショップレポート(デザイン編)

新型「ヤリス」のデザインスケッチとデザイン開発の現場

 トヨタ自動車は、10月16日に世界初公開した新しいコンパクトカー「ヤリス」の特徴を解説するワークショップを開催した。

 ワークショップの項目は「デザイン」「パワートレーン」「プラットフォーム」「安全装備」「駐車支援」「外部給電システム」という6つで、それぞれ約20分間にわたり解説。この内容について1項目ずつ紹介していく。なお、新型ヤリスの発表内容などは関連記事(「トヨタ、新型「ヤリス」世界初公開。12月中旬国内発表、2020年2月中旬発売」「写真で見る トヨタ『ヤリス』」「トヨタ、新型車『ヤリス』に小型・軽量・高効率の新型ハイブリッドシステム搭載。モーター、リチウムイオンセルなど新開発」「トヨタコンパクト初を多数盛り込んだ、新型車「ヤリス」の環状構造ボディ。1180MPaのハイテンなどで、ねじり剛性30%アップ」)でも紹介しているので、そちらも合わせて読んでいただきたい。

 最初に紹介するのはデザインについて。解説によると、ヤリスをデザインする上で責任者から伝えられたイメージは「黒豆のようなクルマ」だった。これは「小さく、美味しく、それでいて面がすごくふくよかでツヤがある」ということを指した言葉ということだ。

 デザインチームが最初に行なったのが、手のひらに乗るサイズのヤリスのデザインモデル作りだった。そしてそれを持って欧州へ行き、各地で街ごとの風景に置いて「黒豆デザイン」がどう見えるかを検証していった。これがデザインにおけるキーになっていると説明された。

 続いては具体的なデザイン作業に移る。ここでのキーワードは「B-Dash!」というもので、これは「BOLD(大胆)」「BRISK(活発)」「BOOST(加速)」「BEAUTY(美)」のBを取ったもので、加えて力強さを表すため「BULLET(弾丸)」のBも含むものとなった。

黒豆のようなクルマにするというデザインコンセプト。欧州へ持っていき、各地の風景と見比べたというデザインモデルを手に解説
「BOLD(大胆)」「BRISK(活発)」「BOOST(加速)」「BEAUTY(美)」のBを取り、力強さを表すため「BULLET(弾丸)」のBも加えて「B-Dash!」というデザインコンセプト名が付けられた

 このようなキーワードを元に作られたヤリスのデザインで、とくに凝ったものになっているのがサイドの造形だ。

 このクラスでは全体的に丸い雰囲気のクルマが多いが、ヤリスでは多彩なラインを設けることで限られた面で多くの表情を作っている。

 具体的には、リアサイドウィンドウからフロント側に降りるようなラインにより、クルマを横から見たときに前傾したようなイメージを作る。これに対してリアドアの真ん中あたりからフロントフェンダーに上向きのラインを設けることで、前にいくほど絞れるようなイメージを作っている。

 フロントは最近の“トヨタ顔”だが、ここはボディ正面や側面からグリルに向かって絞り込むラインを設けることで「押し出すイメージ」を作り、同時にフロントの大型グリルを強調している。これにより、ヴィッツにあったかわいらしさではなく、凛々しいイメージとなっている。

 そしてリアフェンダーまわりはフレア形状とすることで、アクティブさと踏ん張り感を出しており、ここも側面にリアフェンダーの膨らみをイメージさせるようなラインを作る。こうしたデザインにより、コンパクトなボディながら躍動感溢れる印象に仕上げている。

ボディデザインについての解説。全長はこれまでのヴィッツよりわずかに短縮、全幅と全高は変わらず。コンパクトなボディだが、造形が凝っているので車格は上がって見える

 リアまわりの特徴はリアハッチ形状にある。後席のヘッドクリアランスを確保したうえで、リアハッチのバックウィンドウ部を斜めに落とすようなデザインとして、重心の低さやスポーティなイメージを作り出す。

 そしてリアバンパーもフェンダーの膨らみを強調するように両サイドに広がって見えるようなデザインとする。

 リアまわりではバックウィンドウとリアコンビネーションランプを一体化させることで、遠くからでもひと目でヤリスであると分かるような特徴になった。このようなデザイン手法を取り入れたことで、コンパクトな5ナンバーサイズのクルマの中でも埋もれない面作りを行なっているとのことだ。

ひと目でヤリスと分かるリアのデザインとしている。ヘッドライト上にはグラフィックが入る。ここはキューブパターンのように見えるが、実はヤリスの「Y」を意識したデザインになっている

 インテリアデザインは、楽しく操るための機能部品と心地のいい素材感に包まれた空間をキーワードにしている。これをヤリスのデザインチームは「SPORTTECH-COCOON(スポルテック・コクーン)」と呼ぶ。

 ヤリスはクラスを超えた存在感、質感を持たせることを目的にしているが、5ナンバーサイズということで、上のクラスのクルマと比べて全幅が狭く、それが室内空間のデザインにも影響していて、インパネでは狭さから来る「厚み」を感じさせてしまう。これは空間を窮屈に見せる要因になるので、ヤリスではインパネの断面を薄くして、インパネの縦横の比率を上級車と同じレベルにしている。これと同時にインパネの上部と下部はそれぞれが逆の弧を描くラインとすることで、視覚的な立体感を作り出している。これらのデザインの妙によって、シートに座って目に入る空間がより広く感じるようにしているのだ。

 また、センターコンソールの幅をヴィッツより20mm広くして、前席左右の位置もそれぞれドア側に10mm寄せた。さらにステアリングをヴィッツの370mmφから365mmφに小径化し、センターパッドも小型化したことでステアリングから感じた圧迫感も低減している。こうした細かい作り込みのおかげで、1695mmという全幅とは思えないほどの空間の広さを感じさせるインテリアになった。

インテリアデザインのキーワードは「SPORTTECH-COCOON(スポルテック・コクーン)」
メーターはトヨタ初となるフードレスの双眼デジタルTFTメーター。ドアトリムには新素材フェルトを採用。布素材を使用する面積はヴィッツの2倍となっている。また、上級グレードではインパネにソフト素材を使って質感を高める
シートは3タイプのイメージがあったが、一番スポーティに見える右のシートは現時点では採用されないとのこと
ヘッドライト、リアコンビネーションランプのデザイン
アルミホイールのデザイン。現段階では16インチが最大サイズとのこと

 最後はカラーデザインについて。ヤリスに用意されたボディカラーは12色18タイプで、訴求色となる「コーラルクリスタルシャイン」と「アイスピンクメタリック」のキーワードは「J-FASCINATING(ジェイ・ファッシネーティング)」というもの。

 これは日本文化の独創性と遊び心を活かしたアクティブかつ上質なものとのことだが、なかなか理解が難しい言いまわしなので、担当者に「ファッションに例えると?」と質問したところ、日本の有名なファッションブランドである「イッセイ・ミヤケのようなイメージ」と返答。つまり、ヤリスのカラーデザインの「日本文化」とはいわゆる「和」のイメージではなく、日本車によく使われるカラーに若い世代や海外の人から見た「今の日本に対しての新しい解釈」を加えたもののようだ。

ボディカラーは12色。新規開発色は「コーラルクリスタルシャイン」と「アイスピンクメタリック」の2色

 ヤリスのメインターゲットは若い女性ということで、インテリアはファッションや部屋、店舗といった、心地よい場所に用いられるような質感を持った素材やカラーを使用している。一部グレードに採用予定のシートでは、座面や背面にツイードのような素材感を持つ素材に「ラメプリント」を施し、サイド部に合成皮革を合わせることでこれまでにない質感が与えられている。

 以上がデザインに関するワークショップの内容だが、ヤリスのワークショップはあと5種類あるので、それらは今後、順番に紹介していこう。