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トヨタ、世界初の「メモリ機能」で白線のない駐車場に対応する新型「ヤリス」の高度駐車支援システム

新型ヤリス ワークショップレポート(駐車支援編)

新型「ヤリス」でトヨタ初採用となった高度駐車支援システム「Advanced Park」

 トヨタ自動車は10月16日、新しいコンパクトカー「ヤリス」を公開した。ヤリスは長年トヨタのコンパクトカーの中心的地位にあった「ヴィッツ」の4代目にあたるモデルで、新型モデルから世界統一名称として車名をヤリスに変更。トヨタが考える新世代のコンパクトカーを具体化したものになっている。

 東京 お台場で開催された発表会では、ヤリスの特徴を解説するために「デザイン」「パワートレーン」「プラットフォーム」「安全装備」「駐車支援」「外部給電システム」の6項目でワークショップを開催したので、その内容を1つずつ紹介していく。

 本稿で紹介するのは「安全装備」の記事でも少し触れた「駐車支援」について。ヤリスのハイブリッドモデルにはトヨタ初の高度駐車支援システム「Advanced Park」が搭載される。これは「人とクルマで気持ちが通った仲間のような環境を築く」というトヨタ独自の自動化への考え方に基づく最新鋭の駐車支援システム。Advanced Parkは駐車が苦手という人にもいろいろな場所に出かけてもらいたいという気持ちから作られたという。

 トヨタのこれまでの駐車支援システムはステアリング操作をシステムが受け持ち、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジといった操作はドライバーが行なっていたが、Advanced Parkはステアリング操作に加えてアクセルとブレーキもクルマ側が操作するようになっているのが特徴だ。

 シフト操作についてはシフトバイワイヤを導入していないことから、システムの案内に従ってドライバーが操作するようになる。なお、シフトバイワイヤを持たないクルマに装備できればより多くの車種に搭載できるようになるので、あえてシフトバイワイヤなしの構成を作ったそうだ。

設定がハイブリッド用のみになっている理由は、モーターを使用したほうが低速時のコントロール性に優れているということ。ただ、この説明時に解説者から「まずはハイブリッドに使いました」という、将来的にはガソリン車でも採用されそうだと感じさせる発言もあった

 具体的な駐車方法についてだが、最初は駐車したいスペースの前方でいったん停車してAdvanced Parkの起動スイッチを押す。これでシステムは自動的に駐車スペースを認識する。認識の基準として路面の白線や塗り分けなどのはっきりした目標が必要なので、白線がかすれていたり、細いロープなどでスペースを区切るような駐車場では認識できない場合がある。

 ただ、両サイドに壁やクルマがあるときは、白線がなくても空いた空間を駐車スペースとして認識できるとのことだ。

 システムが駐車スペースを認識したことが表示された後、開始ボタンを押すと自動で駐車がスタート。Advanced Parkでは最初に車体を斜め前方に振る動作を行ない、次の後退操作で駐車が完了する確率がかなり高く、駐車で必要となる時間が従来のシステムと比べてかなり短縮されているという。所要時間を質問してみたが、現時点でははっきりとは回答できないようで、「現在、世に出ている同様の機能の半分くらい」という表現に留めていた。

 しかし、例えば休日の高速道路でSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)の駐車場を利用する時、混雑している状況では駐車でもたつくと他の利用者を待たせてしまうことを気にする人もいると思うが、Advanced Parkによって手際よく駐車ができるなら、この点が購入のきっかけになることも十分あるだろう。

Advanced Parkの基本的な動作
シフト操作だけをドライバーが行なう。シフトバイワイヤなしの車両でも広く搭載することを考えたシステムだ
Advanced Parkは縦列駐車にも対応している。システムがスペースを認識できればたいていの駐車場で使用できる

 このように自動化率が高まると、安心してシステムを使えて、使っても安全であることがより重要になってくる。そこでAdvanced Parkではドライバーの操作の負担を軽減することに加え、ドライバーが安全確認に集中しやすくするため、12個の超音波センサーと4台のカメラ(ヤリスの場合)を使って自車周辺の360度を監視している。これによってAdvanced Parkの作動中に近づいてくる人などの動体の検知はもちろん、隣に駐車しているクルマのドアが開いて接触する危険性が発生したことなどにも対応して自動ブレーキを作動。接触の回避を支援する。

12個の超音波センサーと4台のカメラで周辺を監視
駐車動作時に人が進路上に入った場合、警告音を鳴らして自動ブレーキが作動
子供の身長くらいの高さがあれば検知可能。全高が低いものには反応しないので、例えばコインパーキングのフラップ板といった路面装置などがあってもAdvanced Parkを利用できる

 先に白線がない駐車場ではAdvanced Parkを利用できないと説明したが、実は別の設定を行なうことでこれが可能になる。それが世界初となる「メモリ機能」というものだ。

 これは駐車したいスペースを画像登録することで、次回以降の駐車では記録した画像を参照してスペースを認識し、通常のAdvanced Parkと同じ操作、機能により自動的に駐車できるようになるというもので、主に自宅の駐車場などでの使用を想定している。

自宅駐車場などのスペースの区分が分かりにくい場所に対応するため、周辺の画像を記録して、以降は自動駐車が使用できる「メモリ機能」もある

 ちなみに、Advanced Parkで駐車した場合、スペース内でのクルマの位置は基本的にセンターになるが、駐車スペースによってはどちらかに寄せた方がドアを開けやすいということもあるだろう。通常はその点の対応は行なわれないのだが、メモリ機能を使う場合には登録時に駐車位置の微修正が可能で、次回以降の駐車で左右どちらかに寄せて止めることができる。自宅車庫などよく使うところで駐車する時の使い勝手はよさそうだ。

メモリ機能では登録スペース内の左右どちらかに寄せて自動駐車できる調整機能も付いている
すべての駐車動作時の車速も設定できるとのこと。速度まで選べれば多くの人が抵抗なく使える機能になるのではないだろうか