ニュース

筑波1分5秒台! 新型車「GRヤリス」のパフォーマンスが語られた「GR YARIS ONLINE FES」

開発中のアンダーパネルやアルミテープチューンの場所も公開

2020年9月16日 開催

 TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ自動車)は9月16日、新型車「GRヤリス」の発売を記念したオンラインイベント「GR YARIS ONLINE FES」を開催。イベントにはGRヤリスの開発に関わったゲストが登場して開発の舞台裏が語られるとともに、開発ドライバーを務めた石浦宏明氏からは、筑波サーキットのタイムアタックで1分5秒台を記録したと、GRヤリスのパフォーマンスが明かされた。

 GRヤリスの筑波1分5秒台というタイムについては、開発中の車両で記録したことを前置きしながらも、石浦氏は「限りなく1分4秒に近いタイム」などと話した。また、富士スピードウェイで開催された「富士24時間耐久レース」での予選で1分54~55秒、市販車両のGRヤリスにおいても富士スピードウェイで2分1秒台を記録したことなど、具体的なGRヤリスのパフォーマンスが明らかにされた。

GRヤリス開発ドライバーを務めた石浦宏明氏

第1部にモリゾウこと豊田章男社長がリモート出演

GR YARIS ONLINE FES

 この「GR YARIS ONLINE FES」は9月16日19時30分よりTOYOTA GAZOO Racing公式YouTubeチャンネルで公開。脇阪寿一氏、井澤エイミー氏をMCにして第1部ファンイベント(19時30分~20時5分)、第2部GRヤリス オンラインQ&A(20時15分~21時)といった構成で展開された。

モリゾウこと豊田章男社長がリモート出演

 第1部には、ゲストとしてGR ヤリス開発ドライバーを務めた石浦宏明氏と大嶋和也氏、GRカンパニー プレジデントの佐藤恒治氏と執行役員の友山茂樹氏、さらにリモート出演として“モリゾウ”こと豊田章男社長が登場した。

第1部の出演メンバー

 第1部では主に「スーパー耐久シリーズ 富士SUPER TEC 24時間レース」で、GRヤリスのデビューウィンを飾った、レースの舞台裏についての話が展開された。豊田社長は、「ROOKIE Racing(ルーキーレーシング)」とプライベーターとして参戦することについて、トヨタは多くのクルマを量産して、幸せを量産していく会社になりたいことがあり、モータースポーツにおいても、多く人、チームが使ってみたい、このクルマで戦ってみたいと思うクルマを提供することにあると強調、GRヤリスをプライベーター目線で育てていきたいとの考えを示した。

 また、GRヤリスの開発においては、開発の初期段階から開発スタッフとプロレーシングドライバーが一緒になって、開発を進めてきたことや、GRヤリスを生産する元町工場の専用ライン“GR FACTORY”では部品単位でバランス取りを行なっていることなど、生産現場での取り組みについての話も展開された。

GRヤリスを生産する元町工場に用意される専用ライン“GR FACTORY”

ツナギ姿の開発責任者 斎藤尚彦氏がGRヤリスのポイントを解説

GRヤリス開発責任者の斎藤尚彦氏

 続く第2部では、第1部のゲストGR ヤリス開発ドライバーの石浦宏明氏、大嶋和也氏、GRカンパニー プレジデントの佐藤恒治氏に加えて、GRヤリス開発責任者の斎藤尚彦氏と凄腕技能養成部の豊岡悟志氏が登場。ツナギ姿の斎藤氏がジャッキアップされたGRヤリスを前に、モリゾウ選手やプロドライバーから出されるダメ出し“千本ノック”によって、鍛え上げられた部分の解説を行なった。

 GRヤリスでは前後輪のトルク配分を「NORMAL(前輪60:後輪40)」「SPORT(前輪30:後輪70)」「TRACK(前輪50:後輪50)」の3つの制御モードから選択できるようになっている。斎藤氏は、それを実現させるアクティブトルクスプリット4WDシステムに用いられた新開発の電子制御多板クラッチを紹介。

 斎藤氏は「モリゾウさん、それから石浦さん、大嶋さんに、とにかくリアのトルクをしっかり流す、それからレスポンスよく流す、そこに注力してくれというリクエストをいただいた」と話し、開発を続けていく中でクラッチの枚数が増やされ、最終的に12枚のクラッチ板が採用されていることを強調した。

新開発の電子制御多板クラッチを紹介する斎藤氏

 クラッチ板を増やすことのメリットについて、大嶋氏は「4輪駆動は常に4輪が同じように回っているわけじゃなくて、いろいろ制御が働いてリアに移したりフロントに移したりしていて、それがダイレクトに移ってくれないと、今“リアが掻いてほしい”という時に掻いてくれない」などと、クラッチ板を増やすことで、ダイレクト感やリニアさが出てくることを解説した。

GR ヤリス開発ドライバーの石浦宏明氏、大嶋和也氏

 開発スタッフとプロレーシングドライバーが一緒になって、開発初期段階からクルマを作り上げていくのは新たな取り組みであったといい、斎藤氏は「開発初期の段階だったから、これができたんです」と明かした。

 このほかにも、エンジンが吸い込む空気の流速をあげるためにエアクリーナーの裏側にアルミテープチューンを施した箇所などを公開。富士24時間耐久レースの経験によってエンジンルームの熱問題を解決するために開発中のアンダーパネルも公開され、GRヤリスを改良していく開発は現在も続いていることが示された。

モリゾウ選手のテストドライブで穴が空いてしまった箇所を補強するパーツ
自らカメラを手にとって補強パーツを紹介する斎藤氏
エアクリーナーの裏に施されたアルミテープチューン
開発中のアンダーパネルも公開された

 イベントの締めくくりとして、GRカンパニー プレジデントの佐藤恒治氏は「今まで開発チームとプロのレーシングドライバーって、すごく距離があってちょっと違う世界があったんですね。今日のもう漫才をやらしてもいいようなぐらいの雰囲気、この一体感が生み出した新しいクルマの開発スタイルというのが何か見えかけていて、その兆しを本当の変化にしてかないといけない」と話すとともに、「クルマと向き合って現場でみんなと一緒になって、誰がCEか現場で見ると分からない、そういう開発のあり方っていうのが今のGRで、これからのトヨタで、そうやっていくとクルマってもっともっとよくなる。モリゾウさんがいつも言われている“もっといいクルマづくり”というのが、モータースポーツ起点で始まりだして、変わっていくんだというのを本格的に示していきたい」との意気込みが語られた。

GRカンパニー プレジデントの佐藤恒治氏