ニュース

100号車 RAYBRIG NSX-GTとスーパーフォーミュラで2冠達成の山本尚貴選手「2年連続2冠に挑戦したい」

「Honda Racing全日本チャンピオンライブミーティング」レポート

2020年12月26日 開催

会場に置かれた100号車 RAYBRIG NSX-GT

 本田技研工業(以下ホンダ)は同社のモータースポーツ活動で国内のチャンピオンを獲得した3名のライダー、ドライバーが出演するオンラインファンミーティング「Honda Racing全日本チャンピオンライブミーティング」を12月26日の18時から開催した。例年であれば、年末にはモータースポーツ活動を締めくくる「Honda Racing THANKS DAY」というファン感謝イベントが行なわれるのが通例だが、本年はコロナ禍という状況もあり、そうしたリアルイベントは開催が見送られており、本オンラインイベントはそうしたリアルイベントの代替の1つになる。

 今回のイベントには、SUPER GTと全日本スーパーフォーミュラ選手権の2度目の2冠、そしてスーパーフォーミュラとしては3度目のチャンピオンを獲得した山本尚貴選手、全日本トライアル選手権 国際A級スーパークラス チャンピオン(8年連続10回目)の小川友幸選手、全日本モトクロス選手権 IA1クラス チャンピオン(2年連続3回目)の山本鯨選手というHonda Racing所属の3人のチャンピオンが参加して行なわれた。

SUPER GT、スーパーフォーミュラの2冠を達成した山本尚貴選手

SUPER GT、スーパーフォーミュラ、全日本トライアル選手権、全日本モトクロス選手権と4つの選手権で王者獲得

ホンダの青山ショールームを会場として行なわれた、会場にはチャンピオンマシンが所狭しと並んだ

 今シーズンのHonda Racingの国内レース活動は記録に彩られた年と言ってよい。SUPER GTでは第7戦のツインリンクもてぎで歴史に残る1-2-3-4-5フィニッシュを実現したこと(別記事:SGT第7戦もてぎ決勝、ホンダ NSX-GTが優勝 八郷社長来場のもてぎで1-2-3-4-5を実現)、そして最終戦では歴史的な残り500mでの大逆転(別記事参照:SUPER GT最終戦富士、100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組)が年間チャンピオン 最終ラップ最終コーナーの後の劇的な大逆転優勝)を実現して100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)が今シーズン初優勝で逆転チャンピオンを獲得した。開幕戦でのトヨタのGR スープラの上位独占で始まった今シーズンだったが、終わってみればNSX-GTがポールポジションを5回、優勝を4回、そしてチャンピオン獲得とこれ以上望むのが難しいぐらい成功した年となった。

 スーパーフォーミュラでは現行車両SF19の2年目となったが、8月末にシーズンがスタートし、12月下旬の富士スピードウェイでシーズンに幕が下ろされるという異例のシーズンとなったが、そうした中でDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍して2年目となる山本尚貴選手が最終戦でランキング2位の平川亮選手との直接対決に競り勝って自身3度目のチャンピオンを獲得した。

 全日本トライアル選手権(JTR)は2輪車を利用して岩や崖などの障害物があるコースをミスなく走り抜けることができるかを競う競技で、今シーズンはCOVID-19の影響で全4戦が予定されていたが、第2戦が台風14号の影響で中止になり、全3戦で行なわれた。Honda RacingのRTL300Rを駆る小川友幸選手は、最終戦で優勝し逆転でチャンピオンを獲得した。小川選手は「国際A級スーパークラス」で8年連続、通算10回目のタイトル獲得となっている。

 全日本モトクロス選手権(JMX)はモトクロス用の専用競技車両を利用してオフロードコースを利用して競われる2輪車のレース。ジャンピングスポットなどの派手なアクションも人気を呼んでいる1つだ。そのJMXでIA1クラスにおいて2年連続、通算3回目のチャンピオンになったのが山本鯨選手。Honda RacingのCRF450Rを駆る山本選手は、全4戦10ヒートとなった今シーズン6勝を挙げて、最終ヒートを待たずして2年連続チャンピオンを決めている。

短いシーズンで難しいチャレンジになったというトライアルとモトクロスの両王者

司会、進行はレースアナウンサーのピエール北川氏により行なわれた

 今回のHonda Racing全日本チャンピオンライブミーティングはオンライン開催となり、ホンダの青山ショールームから中継という形で行なわれた。司会進行はレースアナウンサーのピエール北川氏により行なわれた。

小川友幸選手
小川友幸選手と愛機

 JTRの国際A級スーパークラスで8年連続チャンピオンとなった小川友幸選手は「毎年毎年チャンピオンになるのが大変だ。今シーズンはいつ開幕するのか分からない状況で、トレーニングするにも怪我をしてはいけないし、世間的にもそういう状況ではなかった。なのに、開幕直前に古傷である足首を痛めてしまいドクター的には無理という状況で出場し2位を得た。勝負どころは最終戦だった。そこまでは3位だったが、ほぼライバルに決まったかと思われたぐらいわるい状況だった。最後ミスすると3位に転落してしまうというプレッシャーの中で優勝してチャンピオンを獲ることができた。今年はもう44歳で若手には引退してほしいと思われていると思うが、若手を育てるためにも頑張っていきたい。8連覇という記録は当分抜かれないと思うが、いけるところまでトップで行きたい」と今シーズンを振り返った。

山本鯨選手
山本鯨選手(右)と愛機(中央)

 JMXのIA1クラスにおいて2年連続、通算3回目のチャンピオンになった山本鯨選手は「ものすごいプレッシャーだった。モトクロスはかなり激しいスポーツで、それも魅力の1つ。今シーズンは新体制で望むシーズンで、チームに関わる人も人数も大きな変化があった。状況が変わっていく中でも力強いサポートをくれて人達に感謝。HRCで参戦していた時よりも、1人ひとりの距離が近くなって感謝の気持ちがあふれてきたので大きな収穫だった。今年は真夏に開幕で調整は大変だったが、逆にそれにより意気込みは大きくなって思い入れをもって望むことができた。今シーズンを振り返ると、開幕戦の第1ヒート、第2ヒート両方優勝出来たことが鍵で、ホンダで1-2を実現することもできた。モータースポーツの魅力は感動を与えることができること。辛い体験をされている方々に向けてそうした感動を少しでも届けたい。2021年も少しでも多くの人に感動を与えることができるように、モトクロスを引っ張っていきたい」と今シーズンの振り返りと来年への取り組みについて説明した。

SUPER GTの王者獲得の転機になったのは第6戦 鈴鹿で37号車に追突された後のチーム一丸となった取り組み

山本尚貴選手

 SUPER GTとスーパーフォーミュラで2冠を達成した山本尚貴選手は、今回は会場外からオンラインで参加した。なお、SUPER GTでパートナーを組む牧野任祐選手は現在病気療養中ということで今回のオンラインミーティングは欠席することになった。

 山本尚貴選手が達成したSUPER GTとスーパーフォーミュラの2冠は、この20年で山本選手自身が達成した2018年と、2004年のリチャード・ライアン選手の3度しか達成されていないという偉業で、その3回のうち2回は山本選手自身が達成しているということになる。

 まずSUPER GTに関して振り返って山本選手は「今シーズンからClass1規定になりNSX-GTもミッドシップからフロントエンジンになった。クルマも大分変わった? と聞かれることも多かったがいい意味で変わらなかった。そのため、従来のミッドシップのNSX-GTのいいところも引き継ぐことができ、違和感無く望むことができた。開幕は3か月遅れたが、100号車に関してはシーズンオフのテストではあまりよくなかったので、逆に通常通り開幕していたらここまでの成績が出せたかは分からない。また、今シーズンはGTでは初めて自分より歳下のドライバーと組むことになった。最初はどう振る舞ったらいいかというところからスタートしたが、パートナーとなる牧野選手は自分をしっかり持っているドライバーなので、心強かった」と述べ、開幕が遅くなったことがむしろ100号車には有利につながったことなどを説明した。

山本選手自身がターニングポイントだったと語った第6戦鈴鹿、ピットで37号車に追突されるというまさかの事態

 そして今シーズンの勝負どころには第6戦鈴鹿のレースを挙げ、「このレースはピットイン時に37号車に追突されて、その後修理して復帰してチェッカーは受けたが完走扱いにならないレースになった。リタイアしてもおかしくないダメージがありガレージで修復してその後走り出した。今シーズンはテストに制限があったので、残りの周回をレースではできなかったセッティングなどを試した。レースなので接触などがあるのはしょうがない。しかしそうなったときにどう振る舞って立ち直っていくのかが大事で、チーム全員の志が同じ方向を向いていた」と述べ、第6戦 鈴鹿で37号車にピットで追突されて優勝争いからは脱落したものの、諦めずにテストの代わりとして走り続けたことが最終戦の大逆転につながったと説明した。

 そしてその運命の最終戦について「チャンピオンになるには勝つしかない。そして第7戦までに同じブリヂストンタイヤを履いたホンダ勢が2勝(筆者注:17号車)と1勝(筆者注:8号車)をあげていたが、自分達は1回も勝っていなかった。そのため勝つ事だけを考えてレースに望んでいた。(大逆転でチェッカーを受けた後)は13コーナーでガス欠になった。本当にSUPER GTは競争が行く着くところまで行き着いたという感じ。(ガス欠になる前の警告灯がホンダ側によって事前にキャンセルされていたことについて)それはファンの皆さんと同じようなタイミングで知った(笑)。ただアラームを全部解除していたわけではなく、他の車両に悪影響を及ぼさないようなアラートはちゃんと入っていた。ただ、燃料は気にせずレースをしてほしいとうSAKURAのみなさんの気持ちの表われだと思っている。(最高のレースだったのでは?という問いに答えて)最高で、本当に嬉しかった」と説明した。

スーパーフォーミュラで王者獲得の転機になったのは第2戦 岡山国際での予選Q2と山本選手

DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの5号車

 スーパーフォーミュラに関しては「昨シーズンからDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍して2年目のシーズン。昨年は最終戦前にポイントリーダーだったのに、チャンピオンを取り逃した。今シーズンはリベンジをしようとして乗り込んだシーズンだった。今シーズンの一番の勝負どころだったのは第2戦岡山国際、それもQ3のアタック中に黄旗が出ているタイミングでチームから赤旗だという指示がでてアタックを断念してしまい、7位に終わってしまった。速いクルマを持っていながらのミスコミュニケーションで強さが足りないと感じた。このままではタイトルは獲れないので、そこでチームと話して引き締め直して臨む必要がある、と。負けたレースにこそ大きなヒントがある、その意味ではこの1戦が大きな転機になった」と述べ、第2戦の予選Q3で失敗をしたことが、チームにとって、山本選手にとって大きな転機になったと説明した。

第2戦岡山国際のレースが転機と山本選手

 そしてその後行なわれて優勝した第5戦鈴鹿や最終戦などについては「鈴鹿の第5戦に関してはチームが完璧な仕事をして岡山での悔しさが生かされたレース。自分の信念を譲らないことが大事で、勝ったレースは最高に嬉しいし、鈴鹿は負けたくないと思っている。最終戦で平川選手と直接バトルになるとは思っていなかった。今見直してもまだドキドキするぐらいだ」と説明した。

 さらに来年に向けて問われると「正直まだ終わったばかりなのもあるし、SUPER GTの後スーパーフォーミュラのレースが3つもあって余韻に浸れていなかった。これからお世話になった人にお礼の連絡をしたり、来年向けて鋭気を養って取り組んで行きたい」と述べた。

来シーズンについて山本選手は「難しいことはわかっているが2年連続2冠」を目指すと表明

 ミーティングの最後にはTwitter経由で募集された視聴者からの質問が紹介され、3名のライダー・ドライバーがそれに答える形で締めくくられた。

――自分のカテゴリー以外で乗ってみたいマシンは何か?

小川友幸選手:モトクロスは乗ったことがあるので、ロードレースで走ってみたい。

山本鯨選手:4輪に乗ってみたい。クルマは身近にある存在なので、NSX-GTに一度乗ってみたい(笑)。

山本尚貴選手:この流れで言うと2輪と言わないといけないけど、4輪ないと不安なので(笑)。鯨選手はNSX-GTは問題なく乗りこなせると思います(笑)。

――普段乗りの愛機は何か?

山本尚貴選手:ホンダのレジェンド・ハイブリッドです、チャイルドシートを2つリアシートに乗せてます(笑)。

山本鯨選手:実はバイクの免許は持っていないので公道は運転できません(笑)。免許をとってホンダのバイクを公道で乗りたいと思っています(笑)。

小川友幸選手:最近私物でステップワゴンを購入しました。乗りやすくて運転してて楽しいです。

――山本鯨選手に、ジャンプしている時に何を考えているか、ドロで前が見えないときはどうしているのか?

モトクロスではこうしたジャンプなどの迫力あるシーンも魅力だと山本選手

山本鯨選手:飛んでる時は早く地面につきたいと思いながら飛んでいる。レースなので、タイヤを地面に付けることが速さの秘訣、低く遠くに飛びたいと考えながら飛んでいる。レースをするときにはSPYのゴーグルを付けているが、捨てレンズというのは1セット10枚あって、それを剥がして新しいティアオフで走る。そのほかにはバイザーを長くしたりなどがロードレースにはない特徴だ。

山本尚貴選手:捨てバイザーはスーパーフォーミュラでもある。レース中にはタイヤカスが飛んでくる。バイザーをかすめると、ゴムで汚れて真っ黒になる。その時は捨てバイザーを剥がして対応する。

――山本尚貴選手に、ヘルメットのカラーリングの意味を教えてほしい

山本尚貴選手:アイルトン・セナ選手に憧れてモータースポーツに足を踏み入れたので、そのヒーローであるセナ選手のカラーリングからアイディアをもらって今のカラーリングになっている。

小川友幸選手:チームがもっているカラーリングになっている、ウェアなどにも合わせて色を変えている。

山本鯨選手:信頼しているペインターさんにデザインをお願いしていて、新しい雰囲気のモノを提案してもらったりしている。

――小川選手に、トライアルはどこの会場で見るのがお薦めか?

小川友幸選手:トライアルの会場は北海道から九州まであって、どこで見ても面白い。ただ、施設が整っているのはツインリンクもてぎでお薦めだ。通の人には、ザ自然という大会が好まれる傾向がある。宮崎とか和歌山の大会などがそうだが、登山みたいな気持ちでいかないといけない(笑)。

山本鯨選手:ホンダのコースでもHSR九州(HSR Honda Safety & Riding PLAZA Kyushu)。よいレースが出来て、その後温泉に入って、おいしいモノが食べられるというのも最高(笑)。

山本尚貴選手:やはり鈴鹿サーキットだ。特にS字などはSUPER GTやスーパーフォーミュラのコーナリングスピードの速さを見るには最高だと思う。

――それぞれ来年注目してほしいポイントを教えてほしい。

小川友幸選手:来年45歳になるので最年長記録を更新することだ(笑)。

山本鯨選手:今シーズンは少ないレースでシーズン6勝をあげることができた。来シーズンはもっとレースが増えると思うのでもっと勝ちたい。

山本尚貴選手:難しいことは承知しているが、2年連続2冠を達成したい。

Honda Racing 全日本チャンピオン ライブミーティング