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ホンダ、2021年度決算は営業利益32%増の8712億円で増収増益 2022年度は4輪車販売420万台を計画
2022年5月13日 20:50
- 2022年5月13日 開催
本田技研工業は5月13日、2021年度通期(2021年4月1日~2022年3月31日)の決算説明会をYouTube LIVEでオンライン配信した。
2021年度の連結売上収益は14兆5526億円(前年度比1兆3821億円増)、営業利益は8712億円(同2110億円増)、税引前利益は1兆701億円(同1561億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は7070億円(同496億円増)となった。また、グループ販売台数は、4輪車が407万4000台(同10.4%減)、2輪車が1702万7000台(同12.5%増)、ライフクリエーション事業が620万台(同10.3%増)という結果になっている。
説明会では、最初に本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 竹内弘平氏から2021年度の決算と2022年度の業績見通しについて概要を解説。続いて本田技研工業 執行職 経理財務統括部 部長 藤村英司氏から、決算内容と業績見通しの詳細解説が行なわれた。
竹内氏は決算発表のポイントとして、2021年度は需要は堅調なものの、半導体の供給不足に加え、新型コロナウイルス感染症が拡大を繰り返し、生産は厳しい状況が続いたと説明。また、原材料価格が高騰していることでコストなども大きく上昇しているが、全方位で進めている収益改善努力によって、2020年度からの増収増益になったとした。
2022年度の見通しについては、半導体の供給不足や中国で行なわれているロックダウンの影響で先行きは依然として不透明で、調達や生産面で厳しい状況が継続していくと想定。また、さらなる原材料価格の高騰に加え、物流費、一部の部品価格でもコスト上昇が見込まれる厳しい事業環境のなかで、全方位での収益改善努力を継続していくと述べた。
今後については、半導体については調達で問題になる課題部品を絞り込んでおり、安定供給を確保できるよう、同等品への代替開発、デュアルソース化などを推進していく。昨年度から継続しているコスト上昇については短期間で影響を吸収することが非常に難しく、「お取引先さまやお客さまに考慮した上で挽回策を検討してまいります」と語った。
なお、供給が正常化した際には、これまで目標として掲げてきた「全社での営業利益率7%」を達成できるよう、引き続き全社を挙げて収益力の向上に努めていくとしている。
2021年度から10.4%減の407万4000台となった4輪車販売では、主要市場である日本、米国、中国のそれぞれで半導体不足による影響を受けて販売台数が減少。日本では新型「ヴェゼル」、米国ではライトトラックなどの好調で全体需要を上まわる回復を見せたが、中国では前年比85.0%という結果になっている。
2022年度については、日本では新型「ステップワゴン」、米国では新型「HR-V」「CR-V」などを市場投入。さらに中国におけるホンダ初のBEV(電気自動車)である「e:NS1」を4月に発売し、5月から「e:NP1」の予約受付を開始するといった策によって販売台数増を目指していく。
2022年度の業績見通しでは、売上収益を11.7%増の16兆2500億円としつつ、さらなるコスト上昇といった厳しい外部環境が続くとの予想から、営業利益は7.0%減の8100億円と試算。一方、当期利益は中国の合弁会社などの持分法による投資利益が増加する見通しで、0.4%増の7100億円としている。
なお、厳しい事業環境ではあるものの将来に向けた投資についてはしっかりと行ない、電動化や新たな成長に向けた取り組みを今後も加速させていくと竹内氏は述べている。
2022年度の4輪車販売は12万6000台増の420万台を計画
藤村氏から行なわれた詳細解説では、対前年比で1561億円増の1兆701億円となった税引前利益の増減要因を解説。「販売影響」では4輪車の販売台数減はあったものの、インセンティブが抑制されたことで777億円、「諸経費」ではリコールなどがそれほど起きずに品質関連費用を抑制できたことで560億円、「為替影響」で円安が進んだことで1689億円などが大きな増益要因になり、原材料価格の影響を受けた「売価/コスト影響」の569億円、「研究開発費」の347億円、「持分法利益」の702億円といった減益要因を上まわっている。
また、2022年度の4輪車販売は半導体の供給不足などの影響は残るものの、ニューモデルの投入効果によって12万6000台増の420万台の販売を計画。2輪車は主にアジア諸国での販売増によって153万3000台増の1856万台、パワープロダクツ事業では北米で販売が落ち込みとの予測から53万5000台減の566万5000台の販売を見込んでいることが説明された。
質疑応答
後半に行なわれた質疑応答では、2021年度決算の受け止めについて竹内氏が回答。「2021年度に何が起こったかと言えば、半導体不足による部品供給の滞りでお客さまに大変ご迷惑をおかけしてしまったということで、われわれの生産台数を思ったほど伸ばせなかった結果での決算でした。非常に苦しかったのは、半導体の影響による減産にも増して原材料価格の高騰です。とくに2021年で言うと、貴金属と呼ばれるものが高騰して影響が出ています。具体的に原材料価格では、約2700億円ほどのコストアップでネガティブな要素になっているところです」。
「その中で、為替による円安の効果、台数の吐き出しが少なく、商品力が強いこともあってインセンティブを抑えることができた。さらに価格も少し上昇させることができたことと、これまで取り組んできた4輪車の収益改善施策、全方位での費用抑制、適切なものへの固定費の圧縮、グローバルモデルの派生数削減、ホンダアーキテクチャーや品質費用などの効果が噛み合って、コストアップの要因や半導体不足による減産で販売を伸ばせなかったといった面をカバーして増益になったという状況です」
「為替の影響については、ホンダは『需要があるところで生産する』という考えを持って生産を進めています。その関係から、例えば米ドルが1円スイングすると収益に約120億円ぐらいのインパクトが年間であります。キャッシュフローでは完成車や部品など、ロイヤリティ収入による為替の影響がこの半分ぐらいで、残りの半分が米国など海外で上げている収益になりますので、日本円に換算したときに発生する換算差を合わせると120億円という数字が発生します。単純な会社の決算状況を鑑みますと、円安に振れるとその分だけ収益は大きく見えますのでウェルカムとは言えると思います」
「ただ、為替が変動する原因を考えると、日米の金利差であったり、近年起きているロシア・ウクライナ問題などの地政学による問題も為替にインパクトを与えているかなと考えて経済に与えるインパクトを考えますと、単純にウェルカムと言えないところもあるかなと思います。ましてや為替による対応は、例えば生産を移管することにも時間がかかるようになり、短期で為替の変動が大きくなると企業としては取りまわしが難しく、長期的に安定的な為替というものがわれわれの望むものであるという考えです」と述べている。