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ソニーセミコンダクタソリューションズ、ADAS用やドラレコ用イメージセンサーなど身近な車載向けセンサー技術を紹介
2022年6月27日 05:00
- 2022年6月19日 実施
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社は6月19日、厚木テクノロジーセンター(神奈川県厚木市)において報道関係者向けのデモンストレーションイベントを実施した。これは現在、同社が量産から開発中の技術をアピールするもので、イベント終了後には同社代表取締役社長 兼 CEO 清水照士氏による質疑応答の場も設けられた。
同社はイメージセンサーを中心にマイクロディスプレイや各種LSI、半導体レーザーなどを含むデバイス事業を展開しており、車載向けとしてもADAS用はもちろん、身近なところではドライブレコーダー用のイメージセンサーなども生産している。今回行なわれたデモの中から車載向けとして使われそうな技術を紹介したい。
セキュリティカメラ(ドライブレコーダー)用イメージセンサー
ドラレコのカタログを見ているとよく目にする「STARVIS」の文字。これは同社のイメージセンサーの商標で、今回のデモでは高感度に加えてHDR(High Dynamic Range)を実現する「STARVIS 2」技術を採用し、2021年6月にリリースされた1/1.2インチ4K解像度CMOSイメージセンサー「IMX585」を紹介した。
デモでは、会場の明るさをほぼ暗闇となる0.05ルクスまで落とした映像を表示した。ノイズリダクションを含めソフトウエア的な補正を掛けていない状態とのことだったが、色の判別が可能なのはもちろん解像感も十分。加えて左上にある時計の秒針もブレなく動いていることが確認できた。こちらはすでに量産出荷中とのことだが、ドラレコに4Kは少しオーバースペック。同様のSTARVIS2を採用した1/3インチ2K解像度の「IMX662」も開発されており、天体撮影カメラ用としてすでに採用例がある。ドラレコでは見つけることができなかったが、そのうちに登場するかもしれない。要注目だ。
車載用イメージセンサー
車載用イメージセンサーに要求されるスペックで重要なポイントは、1つは暗いところから明るいところまで再現するHDR、もう1つは最近増えつつあるLED信号機などに対応するためのフリッカー制御になる。
これを実現するのがサブピクセルイメージセンサーで、通常光量用の大きな画素と低照度用の小さな画素を組み合わせたもの。従来方式ではシャッタースピードを変えた複数の画像をリアルタイム合成することでHDRを実現していたが、車載用の場合は絞りがなく明るい場所では飽和を防ぐためにシャッタースピードを速める必要があった。その結果LEDの点滅を捉えられず、フリッカーに対応することができなかった。だが、サブピクセルイメージセンサーの場合、明るい場所では相対的に感度の低い小画素を利用することでシャッタースピードの高速化を抑制し、LEDの点滅を捉えるのに十分な露光時間を確保。大画素により暗所性能を高めつつHDR、そしてフリッカー制御にも対応しているという。具体的な製品名は明かされなかったものの、こちらはすでに量産出荷中とのこと。360°カメラにも使われているようなので、知らないうちに採用車種に乗っているなんてことがあるかもしれない。
車載インキャビンセンシング
ToF(Time of Flight)方式距離画像センサーから得た3次元距離情報から、車室内の情報を認識するシステム。デモでは左ハンドル車でルーフ(オーバーヘッドコンソール)にカメラを装着した状況を想定。
ToF方式は光源からの光(近赤外線)が対象物で反射しセンサーに届くまでの時間を検出するもので、物体(この場合は人物)を3次元化することが可能になる。これにより頭や肩、手などを判別することができ、さらにステアリングを握る、離すといった状況も判別可能になる。これを利用することでACC走行時のステアリング保持についても、ステアリングにセンサーを内蔵する必要がなくなるといったメリットが生まれるわけだ。このほかにも、ドライバーが走行中に気分がわるくなって運転できない状態になるなどの異常検知、指を使ったジェスチャーによるメディアコントロールなど、1つのシステムで多くのことが可能になる。
ジェスチャーコントロールはすでに量産車に採用されており、ドライバーモニタリングシステムについてはこれからとのこと。自動運転を見据えてドライバーモニタリングの必要性が増してきており、今後さらに開発が進んでいくのは間違いのない部分といえる。
車載Sensor Fusion
信号処理前に各センサーからのRAWデータを融合することで、物体の特徴を抽出し高精度な物体認識を可能にする技術。例えばカメラトレーダーを組み合わせた場合、夜間や雨天、霧といった悪条件でも従来より素早い物体認識が可能になるという。
また、カメラとLiDARを組み合わせた場合、遠方の状況を素早く認識することが可能になる。これを利用することで駐車場で自車前方の空きスペースを遠方から認識し、スペース横に行く前に駐車支援(や自動駐車)をスタートする、といったことが実現する。現状で自動駐車を行なう場合は空きスペースの横にいったんクルマを止め、ボタンを押して自動駐車をスタートすることが必要だが、近い将来には走りながら自動的に駐車してくれる、なんてSFチックなことが普通になるかもしれない。ちなみに、こちらは現在開発中とのこと。搭載モデルの登場を待ちたい。
SPAD(Single Photon Avalanche Diode)距離センサー
SPADは1つの光子から電子を倍増させることができる画素構造で、弱い光でも検出できるのが特徴。この構造を用いたdToF(direct Time of Flight)方式の距離センサーが「IMX459」で、車載LiDAR用として利用される。
なお、dToF方式とは、光源から発した光が対象物で反射しセンサーに届くまでの飛行時間(時間差)を検出することで対象物までの距離を測定する方式のこと。
このセンサーの特徴は「光を検出して電気信号に変換するSPAD画素」「変換された電気信号を下チップに伝えるCu(カッパー)-Cu接続」「伝達された信号から測距処理をするロジックチップ」を積層構造により1チップで構成していること。これにより、小型でありながら最大300m先の物体を検出するほか、回転式メカニカルスキャナーにより広視野角(水平120度)、高解像度(600本)を実現。さらに高速に処理を行なうことが可能。また1チップ化により低コスト化にも貢献する。
デモでは屋外で実際に測定した点群画像を紹介。この画像の1点1点が距離の情報を持っており、距離の違いを色の違い、反射率を色の濃さで表している。およそ160m先にある建物はもちろん、路上に停まっているトラック、中ほどにあるポールや三角コーンなどもしっかり判別することが可能だ。量産開始は来年を予定しているとのこと。