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日立アステモ、電動車向けに乗り心地を向上させる「アンチジャーク制御」、車輪のスリップを適切な状態に保つ「モータートルク制御(モーターABS)」のプロトタイプ開発

2022年10月20日 発表

アクセルOFF時における、アンチジャーク制御を働かせたモータートルク、車速の変化の様子

 日立Astemoは10月20日、停車時に発生する前後方向のジャーク(加加速度)を抑えて乗り心地を向上させるアンチジャーク制御と、滑りやすい路面での回生ブレーキ時に車輪のスリップを適切な状態に保つことで電費、走行の安定性、安心感を向上させるモータートルク制御(モーターABS)のプロトタイプを開発したと発表した。

 クルマの運転において、車両を停止させる際の減速時には速度に応じて適切にブレーキを緩めたり、強めたりして制動力をコントロールしないとジャークが起き、乗り心地を損なう揺り返しが発生するという課題があった。今回、日立Astemoではこの課題解決に向け、電動車の特徴を生かしたプロトタイプを開発した。

 電気を動力とするモーターの回転する力であるトルクは、燃料を燃焼させ動力とする内燃エンジンのトルクと違い、ドライバーの操作に対して高い応答性を持ち、加速や減速の際に一気にトルクを高めることができる。電動化車両ではアクセルOFFにした際、素早くモーターの回転を抑えるようトルクを効かせ、その力を制動力としつつ電気エネルギーに変換する回生ブレーキも備えている。

 日立Astemoでは、こうした電動車の特徴であるモーターのトルクの特性や回生ブレーキの制動力を生かし、アクセルをOFFにした際のモーターの制動力が最適になるようトルク量を制御し、ジャークを抑制するアンチジャーク制御を開発。この制御により、熟練したドライバーによる巧みなブレーキコントロールで揺り返しの少ない滑らかな停車を、一般のドライバーでも簡単に実現できるようになるという。

 また、電動車においては凍結した滑りやすい路面を走行する場合、アクセルをOFFにした際の回生ブレ―キによる減速だけでタイヤがスリップしてしまい、操舵性や走行安定性が低下してしまうことが課題とされていた。これを回避する方法として回生ブレーキの作動を止めることでタイヤのスリップを抑えることもできるが、電気エネルギーの回生量を減少させることになり、これでは電費を悪化させてしまう。

 この課題に対し、回生ブレーキ自体を止めるのではなく、駆動モーターのトルクを車両の走行状態に合わせて制御し最適な制動力とすることで、アクセルをOFFにした際の減速時でもタイヤのスリップを抑え、走行状態を安定させつつ電気エネルギーの回生を継続することができる、モータートルク制御技術を開発した。この技術により、電気エネルギーの回生量と、減速時の高い走行安定性による安心感を両立させることが可能になるという。

 今回開発した2つの技術により、自動車メーカにおける車両開発において、高い走行性能と環境性能を両立させた電動車の開発に貢献することで、電動車の普及にも貢献していくとしている。