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サステナビリティに取り組む地域をバッテリEVで巡る「アウディ サステナブル・フューチャー・ツアー」に参加してみた

アウディのBEVに乗りサステナブルな取り組みを行なう現場を見学した

持続可能な社会の実現の重要性について考える場

 電動化路線をまっしぐらに進むアウディ ジャパンが、「持続可能な社会の実現の重要性について、1人ひとりが考えるきっかけの場を作る」ことを目的として企画・実行する「アウディ サステナブル・フューチャー・ツアー」。2022年4月にはその第1回として、地域全体でSDGsの在り方を考えるとともにゼロカーボンシティの先駆けとなっている岡山県真庭市を訪れた。10月に開催した第2回となる今回のツアーは、日本で最初に地熱発電所を運転させた岩手県八幡平市を訪問。サステナブルな取り組みを行なう実際の現場を見学することができた。

 到着した新幹線盛岡駅でわれわれを待っていたのは、同社のトップモデルである「RS e-tron GT」1台をはじめ、「e-tron GT quattro」2台、「e-tron 55 スポーツバック」6台、そして最新モデルとなる「e-tron S」1台というアウディのBEV(バッテリ電気自動車)たちだ。

アウディのe-tronシリーズで岩手県を巡った

 走行中にCO2を排出しない各モデルに同乗して最初に訪れたのは、サステナブルな料理を提供する「ノーザングランデ八幡平」。のちに紹介する同市の地熱を利用して生産された野菜やマッシュルーム、温玉、フランス赤鶏のトマト煮込みなどのメニューを堪能して、まずは1日分の行程をこなすためのエネルギーをチャージした。

「ノーザングランデ八幡平」では、地熱を利用して生産された野菜やマッシュルームなどを使ったメニューを堪能

 紅葉し始めた八幡平のワインディングを標高1000mまで一気に登った先にあったのは、日本では22年ぶりとなる2019年に新規稼働を果たした「松尾八幡平地熱発電所」だ。施設の冷却塔から吐き出す蒸気がモクモクと立ち上り、あたりには硫黄の匂いが漂っている。地中の熱エネルギーを利用する同発電所の出力は、一般家庭1万5000戸分の7499kWで、立地場所となる八幡平市のすべての家庭(1万1000世帯)を賄うことができる規模とのこと。さらに地熱蒸気によって造り出される温水は、付近の温泉や病院に供給されるというメリットがある。

 火山大国である日本には地熱エネルギーがふんだんにあるはずで、なぜそれが普及していかないのか、という疑問がすぐに浮かんでくるのだけれど、聞けはターゲットとなるポイントの調査には1億円、立ち上げに5億円が必要になるという初期投資としての費用面と、候補地の近くには温泉街があることが多く、発電所の設置によって影響が出るのでは、ということでなかなか地元の了承を得ることができない面の2つの理由があるのだとか。そんな中で、周辺にある建物や屋根と発電所建屋の色を同色にして景観に配慮を行なうなど工夫を凝らして営業を開始したのが同発電所なのである。

「松尾八幡平地熱発電所」を見学。同発電所の出力は7499kWで、八幡平市のすべての家庭(1万1000世帯)を賄うことができるという

マッシュルームファームと馬?

 山を下って次に訪れたのは、北東北で唯一のマッシュルームファームとして2013年に立ち上げ、17年に生産が開始された「ジオファーム八幡平」。敷地内でまず対面したのは、ずらりと並ぶ馬小屋で生活する引退した競走馬たちだ。その馬たちとマッシュルーム生産がどう結びつくのかというと、馬本来の生態系にある仕組み、つまり牧草を食べ、荒い状態でそれが敷き藁の上に排出され、それを地熱を利用して堆肥化、そこから作り出した土を利用してマッシュルームの栽培に使用するという、まさに循環型農業のお手本のようなもの。馬たちにとっても、競走馬としての役目を終えた後のセカンドライフとして自活でき、さらに産業も創出しているという場所にもなっているのである。また、地熱は栽培ハウスの温度調節にも使用されるということだ。

 実は、馬厩肥を使用してマッシュルームを栽培するという方法は、すでに1707年のフランスで「シャンピニオン・ド・パリ(真っ白で丸い形のキノコ)」の栽培方法として発表され、ナポレオン1世の時代にはパリの地下空間で大々的に栽培されていた伝統的方法だというから、同ファームのルーツはフランスにあったということだ。

 訪問の最後で2頭の馬とe-tronをバックに記念撮影を行なったのだが、方や“2馬力”、クルマは400馬力オーバーというなかなか面白い組み合わせだった。

マッシュルームファームの「ジオファーム八幡平」では循環型農業のお手本を見ることができた

 旅の最後では八幡平市役所を訪問し、「農(みのり)と輝(ひかり)の大地」を将来像に掲げる同市の佐々木孝弘市長、日本国内でのエネルギー資源と地熱発電の研究を行なうJOMECの鈴木杏奈委員、地元東北大学の学生たちと、アウディ ジャパン・ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏が、「未来共創ミーティング」と題して産官学の対談を開催。参加者それぞれが未来へ向かう取り組みを発表した後は、「アウディと地熱はどう結びつく?」「EVとしての魅力は?」「アウディがアーリーアダプターとしてではなく、今後やっていけることは?」などについて活発な質疑応答が行なわれた。

 ミーティングの最後では、シェーパース氏から佐々木市長に、目的地充電器として使用できる「デスティネーションチャージャー」が寄贈され、こちらは同市内に設置されて、訪れたEVに給電を行なう予定だという。

八幡平市役所では「未来共創ミーティング」と題した産官学の対談を開催。アウディ ジャパン・ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏からは「デスティネーションチャージャー」が寄贈された