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新型8速AT搭載GRヤリス走行開始、モリゾウ選手は「GRヤリスは、AT車のゲームチェンジャー」と語る 市販化は「執行チームに聞いてください」
2023年9月2日 06:01
新型8速ATを搭載したGRヤリスを、スーパー耐久で公開開発
スーパー耐久第5戦もてぎが9月2日~3日の2日間にわたってモビリティリゾートもてぎにおいて開催される。開催前日の1日には、参戦チームが練習走行などを開始。そこにはST-Qクラスで公開開発される32号車 ORC ROOKIE GR Yaris DAT concept(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏)の姿があった。
32号車 GRヤリスDATコンセプトは、トヨタがTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジや全日本ラリーの場で開発を進めている新型8速ATを搭載したGRヤリス。最高出力200kW(272PS)、最大トルク370Nm(37.7kgfm)を発生する直列3気筒 1.6リッター DOHC 直噴ターボエンジンであるG16E-GTS型エンジンの強大なパワー&トルクを2ペダルでスポーツできる、そして楽しめるよう開発されているクルマになる。
8速ATはいわゆるステップATで、トルクコンバータを装備し、8速の遊星歯車による変速機が組み込まれている。開発コンセプトは「MTより速いAT」で、ラリーフィールドにおいて素早い&適切な変速をするよう鍛えられてきた。その新型8速ATが5時間耐久レースに登場することとなる。
練習走行には、モリゾウ選手こと豊田章男会長も参加。プロドライバーの佐々木雅弘選手や石浦宏明監督兼選手、開発に携わる齋藤尚彦氏とあれこれ打ち合わせをしながら練習走行に取り組んでいた。
モリゾウ選手に走行後の感想を聞くと、すでに昨日走ったときからタイムを見ている人がいて、MTと同様であるとかタイムのよさが話題になっているという。石浦宏明監督によると、同じGRヤリスのMTで走っている場合、佐々木雅弘選手のシフトの速さが抜群で、モリゾウさんや自分(石浦選手)と0.5秒程度直線で差が発生しているとのこと。
石浦選手もMTのレーシングマシンでレースをしているものの、パドルでシフトをするため、ワンメイクレースで活躍している佐々木選手にはかなわないという。その直線でのシフトスピード差を、このGRヤリスDATコンセプトでは縮めることができ、なおかつ2ペダルでモータースポーツを楽しめると語ってくれた。
モリゾウ選手も手応えを感じているようで、「タイムを見てください、タイムを」と、2日に行なわれる予選や3日に行なわれる決勝のタイムを見てほしいという。真夏の5時間というレースに参戦する目的は、もちろんクルマを鍛えるためで、豊田章男氏が常に語っている「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を自らも参加しながら行なっていく。
このGRヤリスDATコンセプトの初代開発ドライバーは、アマチュアラリードライバーを代表してトヨタ自動車 副会長である早川茂氏がラリチャレで務めていたが、全日本ラリーでも鍛えられ、今度はモリゾウ選手、佐々木選手、石浦選手、小倉クラッチ社長でもある小倉康宏選手によってサーキットの場でも鍛えられていく。
ちなみにモリゾウ選手はエントラントであるルーキーレーシングオーナーとして朝礼であいさつ。32号車 GRヤリスDATコンセプトの戦いについて、クラッチはないけれど小倉クラッチ社長もドライブと、ATであることを強調。「ここ誰か書いてよ」と語ったモリゾウ選手と目が合ったので、ここに記しておく。
市販化については、「現在の執行チームが判断すること」
アマチュアラリーフィールド、全日本ラリーフィールド、そしてサーキットフィールドと、鍛える場が広がってきたGRヤリスDATコンセプト。これだけの場で開発していくからには、市販化を当然目指しているに違いない。
市販化についてずばりモリゾウ選手に聞いてみると、「僕はいいクルマをつくるマスタードライバー。いいクルマづくりをしている。市販化にあたっては経営資源やマーケットなど、さまざまな要素が存在する。市販化は現在の執行チームに聞いてください。現在の執行チームが判断すること」と答えたあと、「いやー、社長のときは両方答える必要があったので大変だった」とにっこり笑ってくれた。
そして強く語っていたのが、「GRヤリスはAT車のゲームチェンジャーになる」ということ。パワフルなスポーツエンジンを2ペダルで、AT限定免許で楽しめるようになることで、多くの人がモータースポーツに参加しやすくなるという。モータースポーツ人口が増えることで、より多くのクルマファンが育つことを常に願っているモリゾウ選手にとって、AT化されたGRヤリスは待望のクルマとなるのだろう。
開発に携わる齋藤尚彦氏に現在の課題を聞くと、とにかく熱が問題であるという。ラリーフィールドに比べグリップの高いサーキットフィールドは、トランスミッションの熱対策が重要であるとのこと。ラリーフィールドでも熱対策を進化させてきたGRヤリスだが、サーキット用のGRヤリスDATコンセプトはフロントタイヤハウス直後に大きなエアアウトレットが設けられ、熱を逃がす工夫が行なわれていることを見てとれた。
熱の発生を抑えるには、内部抵抗を減らす、オイルの量を増やす、オイルクーラーを巨大化させるなどが定石ではあるが、そんなに簡単なものではないし、重量が増えると戦闘力低下&コスト上昇にもつながるので、どのあたりがベストバランスかの見極めが大切になる。GRヤリスDATコンセプトは、モータースポーツの現場を通じて、まだまだ開発されていくことになる。
ちなみに初代開発ドライバーである早川茂副会長は、1日にモリゾウ選手の応援などでモビリティリゾートもてぎを訪れていたが、9月2日~3日に佐賀県唐津市をメイン会場として行なわれるラリチャレ第7戦唐津に参戦。参戦車は、104号車 TGR-WRG GRヤリス889(早川茂/勝田範彦)となっており、これはラリチャレ用のGRヤリスDATコンセプト。つまり、今週末は栃木県と佐賀県で、会長と副会長らによって新型8速ATを搭載するGRヤリスの開発が同時並行で進められることになる。改めて考えると、すごい話である。