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WEC富士6時間、ポルシェへのオーバーテイクは「流れをトヨタに引き寄せたかったから」と平川亮選手 小林可夢偉選手兼チーム代表らによる会見

小林可夢偉選手兼TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表(右)と、平川亮選手(左)

 WEC(世界耐久選手権)富士6時間レースが9月8日~10日の3日間にわたって富士スピードウェイで開催された。9月10日に決勝レースが行なわれ、TOYOTA GAZOO Racingの7号車 GR010 HYBIRD(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス)、2位は同8号車 GR010 HYBIRD(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)が1-2フィニッシュを飾り、トヨタ自動車がマニュファクチャラー選手権のチャンピオンを獲得した。

 レース後にWEC公式の記者会見が行なわれ、優勝した7号車のクルーが参加したほか、レース終了後には小林可夢偉選手兼チーム代表、平川亮選手の2人による囲み会見が行なわれた。

WEC公式優勝会見での7号車クルー、左から小林可夢偉選手、ホセ・マリア・ロペス選手、マイク・コンウェイ選手

 この中で平川選手は、自分のスティントで前を走るポルシェをチームからリスクを取るなと言われていたのに抜いたことについて「リスクは取っていないが、流れは変えたかった」と述べ、トヨタ2台がポルシェを抜けない状況が続いていたので、オーバーテイクをすることでトヨタに流れを引き寄せたかったからだと説明した。

 また最終戦に向けて、平川選手は「勝利よりもドライバータイトル」、小林選手兼チーム代表は「何もなければ8号車、ともかくワンツーフィニッシュを」と述べ、最終戦となるバーレーンでもでも1位と2位を獲得するワンツーを目指すと強調した。

ドライバーもチームもミスしなかったことがチャンピオン獲得の要因と小林可夢偉チーム代表

 優勝した7号車 GR010 HYBIRDのクルーは、暫定表彰式に臨み、終了後にWEC公式の記者会見に登壇した。

マイク・コンウェイ選手:1コーナーの混乱では当たらないようにするのが大変だったし、いくつか順位を失った。その後、フェラーリの後ろで詰まってしまい、なかなか抜くことができなかった。その後、徐々に抜いていくことができ、2位まで順位を上げて、トップのポルシェと同じようなペースで走れて、ホセにクルマを渡せた。(マニュファクチャラー選手権でタイトルを獲得できたことを聞かれ)チームの誰にもおめでとうと言いたいね。マニュファクチャラー選手権のタイトルを獲れたことは本当にうれしいよ。

ホセ・マリア・ロペス選手:チームにおめでとうと言いたい。ケルン(TGR WECチームの本拠地はドイツのケルンにある)にいる関係者にも、日本の関係者にも、全員におめでとうと言いたいね。可夢偉とマイクもよい仕事をしてくれた。自分の担当していた最後のスティントではフロントタイヤが終わってしまったので、それからドライブするのが大変だった。

小林可夢偉選手兼チーム代表:最初に、チーム、パートナー、スポンサー、そしてチームに関わってくれている関係者全員にお礼を言いたい。チームは本当にいいクルマを用意してくれたし、ピット作業では何一つ問題はなくて、ドライバーはいいペースで走ってクルマをきちんと管理しながら走るだけだった。

 で、質問はなんだっけ?(マニュァクチャラー選手権でチャンピオンを獲ったことだと言われて)インラップでチームからチャンピオンを獲ったぞと言われて本当にびっくりした。今回はサーキットに多くの人が来てくれて(筆者注:富士スピードウェイ発表で観客動員数は5万4700人で前年比133%増。2012年から始まった富士大会として過去最高)、日本でもWECに注目してくれている人が増えていることを実感している。タイトルを獲得できたのは、とにかく誰もミスをしなかったことが、ほかのマニュァクチャラーとの違いになったと感じている。

トヨタしかいなかった時期にも準備をしてきた、それが強さにつながっている

 レース後、暫定表彰式、公式会見などのあとに、TOYOTA GAZOO Racingによる小林可夢偉選手兼チーム代表および8号車の平川亮選手の会見が行なわれた。

──母国大会でワンツーフィニッシュを飾り、マニュァクチャラー選手権でタイトルを獲得された今の気持ちを教えてほしい。

小林可夢偉選手兼チーム代表:めちゃくちゃうれしい。ル・マン24時間レースで勝つことができなかったし、そもそも7号車はリタイアになってしまい非常に不本意だったので、モンツァで勝つことができて、ここでも勝てたというのは、クルマとチームのメンバーが安定しているからだ。それだけでなく、戦略チーム、メカニック、ドライバー……全員がミスなくということをやってきた結果だ。その努力にすごく感謝したい。

 お越しいただいている観客の数も昨年より増えたと聞いている。そしてパートナーのみなさまに向けたホスピタリティもデザインを変えて、パートナーのみなさま同士がフランクに交流し合えるような場として変えていった。それも自分がお願いしたことだが、それを応援して実際にやってくれる方がいて実現した。

 そうした応援してくださる方に、またサーキットに来たいと思っていただくことが重要で、そうしたみなさまの前でワンツーで終えられたことは、これまでにない富士6時間だったと言える。これからもチームワークをもっとよくして、応援していただけるチームを作っていきたいと思っている。

──先日の悔しい結果のル・マン24時間があって、モンツァで勝って、富士ではワンツーでマニュァクチャラー選手権を獲ることができたが、その感想は?

小林可夢偉選手兼チーム代表:トヨタしかいなかったという時代があって、外からはとりあえず転がしているだけに見えていたかもしれないが、車両を作って、ドライバーを作って、その上で今に達している。結果をご覧いただければ分かるが、ル・マン以外は全部勝っており、結果だけを見れば圧倒していると言ってよいだろう。性能調整があるのに、どうしてそういう結果が出せるのかと言えば、全ドライバーが安定して速く、ピットストップでもミスがなく、タイヤ選択にもミスがないからだ。

 ほかのマニュァクチャラーがいなかった数年間、そうしたことを積み上げて来たからで、それが今結果として証明されている。豊田章男会長や佐藤恒治社長には感謝したい。

 今耐久レースでは僕たちが基準になっている。それに満足するのではなく、もっとできることはないか、モータースポーツのエンジニアのスキル向上や、世の中のクルマによい影響を出せるようなことをやっていきたい。今まではドライバーしかやっていなかったが、そうしたことを考えていくのが今の自分のポジションだ。結果を残して技術のフィードバックをして、モータースポーツがサステナブルになっていくようにやっていきたい。

──今日は序盤で混乱に巻き込まれて、そこから巻き返してのワンツーだ。そうしたレース展開に関しての感想は?

小林可夢偉選手兼チーム代表:正直予想はしていた。GT(この場合はLM GTEクラスや他のFIA GT3車両を利用したシリーズの意味)あがりのドライバーはスタート命のところがある。1コーナーでそんな混乱が起こるのではないかということは予想していた。ただ、この富士は思ったよりも抜きにくい。われわれのようにリスクを取りにくいチャンピオンシップがかかっているところ、そうでないのでリスクを取ってこのレースだけで結果を出せばいいところが混走している、それがモータースポーツの醍醐味だ。

──金曜日(練習走行)や土曜日(予選日)と比べてコンディションは違っていたが?

小林可夢偉選手兼チーム代表:テストの状況は正直参考にならなかった。ドライバーががんばってブレーキの使い方とかタイヤを持たせるとかいうことをやっていくことが求められていた。今回に関して言えば、そういう状況にドライバーがきちんと対応できるかがキーだった。ドライバーに経験があることがアドバンテージになっており、その証拠にフェラーリも速いスティントがあったことに気がついている人もいただろう。おそらくドライバーがそうした状況に対応できていたからだろう。TGRではすべてのドライバーが対応できていた。

中盤にポルシェをダンロップコーナーで抜いたのは、「流れを変えたかったから」と平川亮選手

──8号車は追い上げる展開になったが不安はあったか?

平川亮選手:なかったとは言えない、あの順位まで落ちるとは思っていなかったし、フェラーリに当てられたのでダメージはあるのかが心配だった。ただ、フェラーリを抜いて追い上げる立場になってからは、不安はなくなった。

──中盤にチームからリスクを取るなと伝えられながらポルシェの6号車をダンロップコーナーで抜くシーンがあった。佐藤社長もそこはレーサーだと褒めていたが……。

平川亮選手:6号車と7号車に追いついたとき、どうするのかとチームと話し合い、順位を入れ替えてチャレンジさせてくれと言って、入れ替えてもらって何周かしてポルシェに追いついた。ポルシェがもうすぐピットインするのは分かっていたのだが、ポルシェにいっている流れを変えないといけないと思い、抜きに行った。自分としては何もリスクは取っていないが、リスクを取るなとチームに言われていたのには応えていないので減点かもしれない(笑)。

小林可夢偉選手兼チーム代表:僕はもっと早く入れ替えろと言っていた。リスク取る必要はないとはいったが、平川選手も自分もここのコースはよく知っていて、どこで行けるというのは分かっている。平川選手に1回行ってもらうことで流れが変えられると思っていたが、チーム側はリスクを取るべきかみたいな話があって、どうしようどうしようと言っていた。そこはレーサーじゃないと感じた(笑)。

──あのときはもう抜くということは決めていたのか?

平川亮選手:本当に行くのかどうかは決めていなくて、チャンスがあれば行こうと感じていた。向こう(ポルシェ)のブレーキが早いかなと感じたので、抜きに行った。

──今日はタイヤも、右をハードにして、左をミディアムにしてのような選択にして左側だけ変えるなどが行なわれていたが?

小林可夢偉選手兼チーム代表:ハードにするというのは正直はずれだった。暑くなったのでハードというのは基本的なセオリーなのだが、今日はミディアムがよかった。それはデータに基づくというよりは感覚的な話で、だ。

──最初のスティントではずっと抜けない状況が続き、第2スティントでも平川選手が6号車をパスするまで抜けなかったが……。

小林可夢偉選手兼チーム代表:うちに限らず、みんななかなか抜きにくいという状況が生じていた。それは1コーナーでアウトから抜きに行ったりと、われわれのようにスーパーフォーミュラやSUPER GTなどで富士スピードウェイに慣れているドライバーからすると、それは難しいのではないかという状況が発生していた。やはり富士のレースではリスクを取らない抜き方がちゃんとあり、それをタイヤセーブしながらやらないといけないのだ。

最終戦は「勝利よりもドライバータイトル」と平川選手、小林チーム代表は「何もなければ8号車」と自然体

──これで7号車と8号車は、フェラーリも入れてドライバー選手権のタイトルを最終戦で争うことになったが……。

小林可夢偉選手兼チーム代表:正直コントロールする必要はない。チームにとってはドライバータイトルよりも、マニュファクチャラー選手権のタイトルが大事だ。ドライバー選手権は流れ次第で、何もなかったら8号車になるだろう。バーレーンではよいレースをしたい。

平川亮選手:速い方が勝つということは明らかだし、まだワンツーになるかどうかも分からないので……。

小林可夢偉選手兼チーム代表:ワンツーなら8号車が2位でもチャンピオンなのだから、そこはワンツーしますと言っておこうよ(笑)。

平川亮選手:えっと、はい、ワンツー獲って、8号車がチャンピオンになります(笑)。

──WECチャレンジプログラムの宮田莉朋選手が、LM GTE Amに初参戦で2位表彰台を獲得した。チーム代表としてどう見ているか?

小林可夢偉選手兼チーム代表:この結果は彼が間違いなくポテンシャルがあるドライバーと証明できたと考えている。(宮田選手を乗せることになったCarGuyの)木村氏と話したら、きちんとチームとコミュニケーションが取れていたそうで、木村さんに第3セクターの走り方をレクチャーして、実際それで木村氏のタイムが上がったそうだ。彼は教えることもできるのだというのが新しい発見だ。宮田選手は、それこそスクールの時代から見ており、オーディションで選ぶ側として彼のことを見てきた自分からすると、宮田選手もこんなに成長したのだと感動させられた。

──ル・マン24時間レースでの悔しさは払拭されたか?

小林可夢偉選手兼チーム代表:一生されないと思う、逆にこの程度でされたらそれはそれで失礼な話だ、100周年記念はもうないわけだし……。

平川亮選手:次は100回目がある(笑)。

小林可夢偉選手兼チーム代表:平川選手には100回目があるかもしれないが……あと何年だっけ?(平川選手がたぶん7年くらい[編集部注:2023年が91回]と返答すると)平川選手にはあるかもしれないが、自分はもうそのころ走っていないだろう(笑)。

小林可夢偉選手兼チーム代表、かぶっているのはTGRの新作グッズで、バケットハット(3500円)だったが、WEC富士レースの土曜日には売り切れてしまったほどの人気

──今かぶっているバケットハット、すでにTGRの物販コーナーで売り切れたらしいが?

小林可夢偉選手兼チーム代表:土曜日で売り切れたと聞いている。もっと作っておけばよかったな、と(笑)。なぜこのバケットハットを企画したのかと言えば、もちろんそういうトレンドがあることはあるが、サーキットで日焼けを防ぐためには、後ろにもツバがあった方がいいのではというのがスタートだ。そこでこのバケットハットでネックタオルをセットにすれば、日焼けを防げるのではないかと考えて企画した。

──最終戦に向けた意気込みを教えてほしい。

平川亮選手:最終戦は、勝利よりも、なんとしてもドライバーチャンピオンを獲りたい。

──最終戦はまだ行なわれていないが来シーズンに向けては?

小林可夢偉選手兼チーム代表:マニュファクチャラー選手権のタイトルを獲ったので、チャンピオンとして恥ずかしくないように活動をしていきたい。ライバルも巻き返してくるだろうし、2年目にはそのプレッシャーはさらに強くなるだろう。来年は新しいマニュファクチャラーも増えるので、競争はさらに熾烈になると考えている。できることは何かをチームと話し合って、しっかりやっていきたい。