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ソフトバンク、キュービックテレコムへ約747億円出資 コネクテッドカーやSDV領域にグローバルで本格参入

2023年12月5日 発表

ソフトバンクがコネクテッドカーやSDV領域に本格参入すると発表した

 ソフトバンクは12月5日、コネクテッドカーおよびSDV(Software Defined Vehicle)向けにIoTプラットフォームを展開しているCubic Telecom Ltd.(キュービックテレコム)に出資し、51%の株式を取得することで合意したと発表した。出資額は約4億7300万ユーロ(約747億円)で、株式取得後はソフトバンクの連結子会社になる。

 今後、コネクテッドカー比率が大きく高まるなかで、今回の資本提携により、ソフトバンクは、IoTとコネクテッドカー、SDV領域にグローバルで本格参入。コネクテッドカー・SDVの未来をソリューションで積極的に後押しし、この市場で世界トップクラスのシェア獲得を目指すとしている。

キュービックテレコムのプラットフォームを利用すると、各地でコネクテッドカーの提供が容易に

 キュービックテレコムが提供するサービスは、遠隔診断、盗難防止、ナビゲーション、Ovar-The-Ai(OTA)によるアップデートなど、コネクテッドカーなどに必要な通信プラットフォームで、現在、世界で90以上の通信キャリアと契約し、190か国にキュービックテレコムのプラットフォーム利用の車両があり、1700万台以上が利用している。

 これまで、自動車メーカーがコネクテッドカーを販売する場合、提供する国や地域ごとにごとに通信キャリアと契約して、それぞれのエリアで通信できる法規制などに対応し、通信キャリアとデータのやり取りができる通信プラットフォームを構築する必要があり、その手間が今後、大きな課題になるという。

 そこで、キュービックテレコムのプラットフォームを利用すれば、自動車を販売する国をほぼ網羅しているので、世界の各エリアごとに通信キャリアと契約をしたり、別の通信基盤を構築したりする必要がなくなる。車載の通信ユニットについて世界統一のものを提供するなどしている。

 今後、2030年までに新車の95%がコネクテッド化するとの試算もあるほか、キュービックテレコムのプラットフォーム利用の車両数は毎月45万台ずつ増加中で、2050年には毎月70万台の増加を見込み、今後5年に渡って飛躍的に増加する見込みだという。

主にフォルクスワーゲングループで利用のプラットフォームを世界へ

 今回出資するキュービックテレコムは、2009年設立、本社をアイルランドに置き、フォルクスワーゲングループ100%出資のCARIADと、クアルコムを主要株主としている会社。

 現在のサービス提供先としては、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニなど主にフォルクスワーゲングループの自動車メーカーをはじめ、農機、建機などに提供、1700万台以上の車両と接続し、1日あたり10億件以上のデータ通信を行なっている。

 今回、出資にいたった経緯としては、ソフトバンクが日本の自動車メーカーとの関係があり、営業連携でキュービックテレコムとの付き合いがあったことがきっかけとしている。

 キュービックテレコムにとっては、日本だけでなくAPACの国や地域で顧客基盤を持つソフトバンクとパートナーシップを組むことで、市場のリーダーとしての地位をさらに強化するとしている。

ソフトバンクはシナジーを期待、衛星を使ったコネクテッドカーも検討

 ソフトバンクでは、キュービックテレコムへの投資は、利益を得るためだけの純投資ではないとし、キュービックテレコムとのシナジーを目指していく。ソフトバンクでキュービックテレコムのプラットフォームを世界で採用してもらう働きかけをする以外にも、新たなソフトウェアのイノベーションをソフトバンクグループで開発促進していく。

 具体的には、キュービックテレコムは、自社のプラットフォーム上で自動車メーカーなどのDXを加速させ、分析機能を活用したサービス開発も行なっているが、ソフトバンクも積極的に後押しするとし、両者のプラットフォームをコネクテッドカーやSDVのグローバルデファクトスタンダードにしていく。

 また、新規サービス開発にも積極的に取り組むとしており、衛星や成層圏での非地上系ネットワーク(NTN)ソリューションを活用して、従来の地上ネットワークでは通信が届かない地域にある車両やIoTモビリティに、シームレスな通信サービスを提供するなどの検討も行なうという。