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アンシス、BMWと共同開発したレベル3自動運転のシミレーションプラットフォームについて説明

2024年5月22日~24日 開催

入場無料(事前登録制)

左から、アンシスのDirector of Application Engineering, AutonomynのPierre Vincent氏、アンシス・ジャパン AutonomyチームのManager of Application Engineerの川端茉莉氏、アンシス・ジャパン マーケティング部 部長の柴田克久氏

 アンシス・ジャパンは、パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」に出展するとともに、報道関係やアナリスト向けに「BMWが実装したレベル3自動運転能力実現を支援したシミュレーションの役割」とした、同社のシミュレーション技術について説明を行なった。自動運転の実現に必要で、現実で行なえば数世紀に渡るデータ集めをわずかな期間で実施できたことなどが語られた。

ナンバーワンシミュレーションカンパニー

 説明会ではまず、アンシス・ジャパン マーケティング部 部長の柴田克久氏がアンシスについて説明。北米に本社をおいてエンジニアリングシミュレーションのリーディングカンパニーだとし、1970年の設立ですでに50年以上たった会社で、世界で6000人以上の従業員がいるという。

アンシス・ジャパン マーケティング部 部長の柴田克久氏

 現在、Synopsysによる買収が進んでいることも紹介し、現在はそれぞれが会社として存続した上で、来年以降に具体的な話ができるのではないかと説明した。

 また、アンシスの国内の展開は東京に本社があり、大阪と名古屋に拠点があり、日本人のエンジニアのスタッフや営業スタッフが日本の顧客をサポートしている。

ナンバーワン IN SIMULATION

 さらに柴田氏はアンシスが「#1 IN SIMULATION」と掲げていることについても解説し、他社と比較したシミュレーションの精度、幅広い物理領域をカバーする対応領域の広さなどから「ナンバーワン」だと説明した。また、その根拠についても自称ではなく第三者機関による認定などでの結果だと強調した。

アンシスのソリューション

BMWと協業で自律走行の分野におけるシミュレーションでBMWと協業

 今回の人とクルマのテクノロジー展に合わせ来日したのはDirector of Application Engineering, AutonomynのPierre Vincent氏。「BMWと協力して、業界初の自律走行を実現するため、自動運転レベル3のためのシミレーションプラットフォームを共同開発した」とし、経緯や内容を説明した。

アンシスのDirector of Application Engineering, AutonomynのPierre Vincent氏

 今回、BMWと協業したことについてVincent氏は「私たちのすべての面においてシミュレーションを活用していくというソリューションがあり、経験もあるということを買われ、一緒にやろうということになった」とし、共同開発の目的は、自律走行のバリデーションのための安全に特化した開発の評価をスピードアップしたいということだったという。

BMWと協業、そのほかにもソリューションを提供

 さらに3つのポイントがあるとし、その1つがレベル3で重要な「安全性分析」で、レベル3の自律走行にはシステムの障害特性を評価するために大量の走行データが必要になる。走行距離を実際に稼ごうとした場合、シミュレーションの力がないと「私たちが生きている時代には実現できず、何世紀もかかってしまう」と指摘する。

 そして2つめはエッジケースの洗い出しとシミュレーション。実際に起こる可能性は非常に低くても、特定の条件下で発生するものならば、センサーの機能に影響を与える可能性がある、それを再生するにも、識別して洗い出しをするにしても、物理学に基づいた正確なシミュレーションができなければいけない。

 3つ目はスケーラビリティーで、故障確率を評価するためには大量の走行シナリオがないと評価もシミュレーションもできない。そこで、アンシスではシナリオバリエーションという方法論を導入、パラメーターをさまざまに振って、たくさんシナリオを生成する。パラメーターの振り方はランダムではなく、統計学に基づく手法を使っている。

シミュレーションで地球から火星までの半分の距離を走ったテストデータを収集

 なお、この方法によって、すでに複数の顧客が統計学的なバリエーションを大きく加速させており、場合によっては1000分の1のスピードでこれまでと同じバリエーションを作成しているという。BMWについては地球から火星までの距離の中間地点に相当する、2450万kmの走行データをシミュレーションで提示でき、すでに7シリーズで、ソフトウェアというかたちでダウンロードできるという。

BMW 7シリーズにレベル3自動運転を搭載

 Vincent氏は今回のコラボレーションを「たいへん成功したwin-winの関係」と評価し、アンシス側もBMWが考えているバリデーションや安全についての課題、シミュレーション、評価について理解することができたという成果があったとしている。

 そして、自律走行のクルマの安全性を担保するためには、適切な正しい方法論と正しい適切なソリューションが必要で、安全を主眼に置いたワークフローとソリューションを提供することができると強調した。

自律走行システムの安全性の説明には、正しい方法論とソリューションが必要

試験を行い、分析し、論証するという一連の流れが安全論証のプロセス

 続いて登壇したのはアンシス・ジャパン AutonomyチームのManager of Application Engineerの川端茉莉氏。自動運転のソリューションをサポートするエンジニアリングチームのディレクターで日本のマーケット向けに自律走行の開発をサポートしている。

アンシス・ジャパン AutonomyチームのManager of Application Engineerの川端茉莉氏

 自動運転の安全性を担保することが非常に難しくなっている中で、アンシスは安全をスタートポイントとして自動運転の開発にどういう風にアプローチをして助けていけるのかを考えているという。

自律走行システムの安全性を示すための論拠の構築

 その論拠の構築のため、スタートポイントとしての安全分析と、安全に関する大量の要件があるので、これらを効率的に管理をしていくための安全管理が今、非常に重要だと言われているという。

 川端氏によれば、安全分析だけでは「このシステムが安全」だという論証は行なえないため、論証するためにはセーフティバリデーションが重要で、シナリオベースでシミュレーションを活用して、仮想空間で大規模でさまざまなシミュレーションを実行していく。

アンシスが考える安全論証のプロセス

 川端氏はアンシスがサポートするところとして三角形の図を利用して説明した。まず、上に「Safety Management&Safety Case」として安全分析やセーフティケースを行ない、下側左に「Safety by Design」、下側右に「Safety by Validation & Varification」を置いた。

「Safety by Design」ではさまざなな規格や要件にもとづいて機能安全分析やSOTIFの分析、サイバーセキュリティの分析などをするが、たくさん出てくる情報を上の「Safety Management&Safety Case」で統括し、「Safety by Validation & Varification」に実際に検証をするエンジニアや仮想実証を含めてテストをし、「Safety Management&Safety Case」にフィードバック、トレーサビリティををとったデータがレポートとして作成される。

 この一連の作業が「私たちはこういった根拠で試験を行ない、このような結果を得たのでこのシステムは安全だと証明します」ということになり、安全論証の1つのプロセスになるという。

検証と妥当性確認アプローチによるシミュレーションの役割

 また、アンシスは元々、物理ベースの繊細で精緻なシミュレーションを得意としているため。川端氏は「自律走行のシステム全体の検証のためにはフルスタックの状態でシステムの検証が必要」と指摘する。フルスタックとは、例えばセンサーが認識するところだけではなく、どうブレーキをかけるのかなどすべてのシステムを組み合わせて試験をすること。

物理的に正確なセンサモデルを使って認識のテストを実施
大規模な論理的シナリオバリエーション

 フルスタックのシミュレーションとしては、顧客が開発中のECUと組み合わせてのシミュレーションも可能。また、カメラやレーダーなどを組み合わせたり、ソフトウェアが持つAIのトレーニングにも現実の現象を再現したシミュレーションも可能。パソコンの中だけで行なうソフトウェアインザループだけでなく、実際のECUを使ったハードウェアインザーループにも対応できることも特徴だとしている。

アンシス・ジャパンは展示スペースも設けた