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三菱電機、東京モーターショーに出展する自動運転コンセプトカー「EMIRAI3 xAUTO」公開

「テストコースでの自動運転」「リモコン式自動駐車」のデモを披露

2015年10月14日発表

 三菱電機は10月14日、10月29日~11月8日(プレスデー:10月28日~29日、プレビューデー:10月29日、一般公開日:10月30日~11月8日)の期間に東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催する「第44回東京モーターショー2015」の出展概要を発表。これに合わせ、メインステージで展示を行う予防安全(自動運転)コンセプトカー「EMIRAI3 xAUTO(イーミライスリーエックスオート)」について公開した。

 同日、神奈川県鎌倉市にある三菱電機 情報技術総合研究所で報道向けの技術説明会が実施され、東京モーターショーに出展される展示車両が披露されたほか、敷地内でEMIRAI3 xAUTOに採用される機能を部分的に搭載するテスト車両を使った「テストコースでの自動運転」「リモコン式自動駐車」といったデモ走行が披露された。

三菱電機の予防安全(自動運転)コンセプトカー「EMIRAI3 xAUTO」。ベースとなっているのは三菱自動車工業の「アウトランダーPHEV」
担当者からEMIRAI3 xAUTOについて車両解説
車両のフロントグリル内に赤外線カメラとミリ波レーダー、ロングレンジ超音波センサーなどを設置。すでに開発センターのある兵庫県姫路市のナンバープレートも取得しており、公道での走行も可能となっている
ドアミラーにも広角の周辺監視カメラを設定
ルーフ後端に準天頂衛星システムからの情報を受信する専用アンテナを設置。通常のカーナビなどで用いられているアンテナよりも大型となっており、準天頂衛星から送られてくる「cm級測位補強信号」を活用した高い自社位置測位が可能になる
インテリアでアウトランダーPHEVから変更されているのは、大型の液晶パネルが設定されたメーターパネルとHUD(ヘッドアップディスプレイ)用のコンバイナの追加。ドライバーが運転操作から解放される自動運転の実用後は、これまでとは異なるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)が必要になり、HMIについても研究を進めていると解説された
メーターは右側のスピードメーターのみがアナログ式で、ほかは大型の液晶パネルとなっている。展示された車両では、自動運転中にシステムがどのように外界を認識しているか、なにに反応して加減速しているかなどをデモ表示していた
車外からも存在が目立つ大型のコンバイナだが、透過度が高く、車両が置かれた日陰で見た限りでは前方の視界にほぼ影響を感じさせない仕上がり。一方で表示内容は明瞭。車速のほか、障害物を検知したときの警告などが表示されていた

「テストコースでの自動運転」

「テストコースでの自動運転」で使用されたテスト車両。カラーリングなどはEMIRAI3 xAUTOと近いデザインになっている
車両のルーフ上に、EMIRAI3 xAUTOと同じく準天頂衛星対応アンテナを装備。しかし、システム自体は2017年末に4機の準天頂衛星がそろってから運用されることを前提に設計されているので、現時点では測位補強信号を補正情報配信会社から移動体通信網を利用して受け取り、この情報を使った自社位置測位で自動運転を実現している
今年の8月に敷地内に新設されたというテストコースで自動運転を実施。集まった記者も社内に同乗して人間が操作することなくクルマが走ることを体験した
最初の1周目は、コース外周を車線に沿って走行
車内は、インパネ右側に「非常停止」と書かれたスイッチが設置されている以外はアウトランダーPHEVとほぼ同じ仕様。今回のデモでは、助手席に座るオペレーターがノートPCを使って走るコースの選択などを行っている。安全を確保するため、運転席に係員が座っているが、ステアリングに手を触れることもなくクルマがコースを進んでいく
走行2周目は、コース内にパイロンで設定されたゆるめのS字コースを走る
S字コース前後の角度がきつめだが、スルスルと問題なく走って行く
コース内に設定された一時停止の標識の前で停車し、デモ走行終了
S字自動走行(映像提供:三菱電機)
ポール自動走行(映像提供:三菱電機)

「リモコン式自動駐車」

「リモコン式自動駐車」で使用されたテスト車両。見た目はアウトランダーPHEVと変わらないが、外装の四方に超音波センサーを増設して、精度の高い自動駐車に対応する
操作は、車外から純正キーの中身を専用品に入れ替えたリモコンのボタンを押すだけ。デモは縦列駐車で行われたが並列駐車も自動操作可能。万が一のための緊急停止ボタンも用意されている
実際のデモ駐車シーン。ボタンを押すと自動的に車両が走り出し、側面の駐車可能なスペースを超音波センサーで探索
ボディーサイズに対して広いとは言えないスペースだったが、2回の切り返しで駐車を終えた。三菱電機の自動駐車システムでは、タイヤを据えきりしながらも少ない切り返し動作で停めることを目指している
また、三菱電機の自動駐車システムは駐車だけでなく、ボタン操作による「出庫支援」も実装。停車している状態から、ボタン操作後に動き出し、あとはドライバーが乗り込んでそのまま走り出せる位置まで車両を移動。自動駐車では乗員の乗り降りが困難な位置でも駐車できる可能性も出てくるので、出庫に対しても支援することを念頭に開発しているとのこと
リモコン式自動駐車(映像提供:三菱電機)
夜間対応自動ブレーキ(映像提供:三菱電機)

三菱電機 専務執行役 自動車機器事業本部長 大橋豊氏

 技術説明会ではデモ走行に加え、EMIRAI3 xAUTOに関する技術解説や、三菱電機が進めている自動運転のコンセプトなどが紹介された。

 スライドを使って行われた解説では、三菱電機 専務執行役 自動車機器事業本部長の大橋豊氏が登壇。大橋氏はEMIRAI3 xAUTOを「予防安全、自動運転の進化に向けた三菱電機のコンセプトカー」と紹介。今後の自動運転技術の進化を見据え、三菱電機が取り組んでいる予防安全のコンセプトや技術などについて解説した。

 大橋氏は「単に高度な機能を実現するだけではなく、ドライバー、すなわち人との関わりに求められる優しさも大切にして、双方を高いレベルで両立させていきたいと考えています」と語り、これを実現するために「ドライバーと常に寄り添う」「乗る人すべてに心地よく」「宇宙からクルマを見守る」という3つの技術コンセプトを用意していることを紹介した。

 また、自動運転については、人がクルマを運転する行動を「見る」「考える」「操作する」という3要素に分け、自動運転についてもこの3要素を、クルマに搭載する電子制御装置が人に変わって行うことと定義。三菱電機ではそんな自動運転に必要な信頼性の高いデバイスやシステム、車外との通信技術などを保有しており、このことが総合電機メーカーとしての強みであり、より安全性の高い自動運転の実現に貢献できるとアピールしている。これに加え、自動運転で必要となる技術について、これまでの宇宙・防衛事業で培ってきたミリ波レーダーや行動予測技術、リスクマップ技術を保有。さらに準天頂衛星を使った高度な自車位置測位、精細な地図の作成技術、インフラ事業で培った道路やクルマとの移動体通信技術を持ち、三菱電機が高いシェアを持つ電動パワーステアリングでの安定した操舵技術などを要素技術の核として例示している。

三菱電機が掲げる予防安全(自動運転)のコンセプト。「機能性」と「優しさ」を高いレベルでの両立を目指している
三菱電機が持つ「周辺監視」「車両情報活用」「車両制御」「MHI」の分野の技術を結集したのがEMIRAI3 xAUTOとなる
人間の運転を自動運転に置き換える要素技術
宇宙・防衛事業やインフラ事業で培ってきた技術を自動運転に応用。安全性の高い自動運転に繋げていく
自動車メーカーに対し、自動運転の包括的な提供から、各種予防安全技術の納入など多角的に事業展開していく構え
低雑音GaAsデバイスと高分解性能アンテナにより、信頼性の高い検出や物体の識別などを実現。リスクマップ技術と合わせた人工知能技術で危険予知に役立てる
現時点での周辺状況から、動いているリスク、動いていないリスクなどの情報を元に、状況変化による新しいリスクの発生を予測。スクリーンに映し出された動画では、右側の車線を走る車両が、遠方の停止車両に近づいてから自車の前方に車線変更してくることを、実際の2.2秒前に行動予測するシーンが紹介された
準天頂衛星と高精細な3次元地図で高精度な自社位置測位を行う
電動パワーステアリングや横滑り防止装置などの開発で培った車両制御技術も自動運転に不可欠な要素
デモが行われたリモコン式自動駐車は市場での要望も大きく、自動運転に先駆けての市場投入を目指す技術であるとのこと
レーンキープでは車線の検出や先行車両への追従などを実施。さらに車車間通信による合流支援などの研究も行われている
三菱電機 自動車機器事業本部 技師長の足立克己氏は、技術説明会の後半に行われた質疑応答でEMIRAI3 xAUTOに搭載されている準天頂衛星対応アンテナについて質問され、「市販されているカーナビでは、『GPS+1』として使っているため小さなアンテナでも対応できるが、自車位置を測定するための補強信号として受信するためには大型のアンテナが必要になっている。将来的にはデザイン性なども問題になってくるため、実用化の段階ではシャークフィンアンテナより小さくして内部に入るようにする開発も行っている」と解説した

 なお、10月29日から開催される東京モーターショー2015の三菱電機ブースでは、同日に発表されたEMIRAI3 xAUTOに加え、メインステージで次世代の運転支援技術を紹介するコンセプトカー「EMIRAI3 xDAS(イーミライスリーエックスダス)」を展示。これに加え、高精細な3次元地図をリアルタイムに作成する「三菱モービルマッピングシステム」、車両の電動化技術で利用されるモータージェネレーター、10月20日に発売される「DIATONE SOUND. NAVI」シリーズの最新モデル「NR-MZ100」シリーズなどの製品展示が行われる。

三菱電機、次世代の運転支援技術を紹介する「EMIRAI3 xDAS」を東京モーターショー2015で公開

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151008_724800.html

三菱電機、ルート検索を約4.8倍高速化したオーディオ一体型カーナビ「NR-MZ100」シリーズ発表会

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151002_723912.html

(編集部:佐久間 秀)