産業界9団体、「地球温暖化対策税」に反対表明

2009年12月7日
経団連会館



 日本自動車工業会をはじめ産業関連9団体は12月7日、経団連会館で共同記者会見を開催。政府が導入を検討している「地球温暖化対策税」(環境税)に反対する要望書を発表した。

 参加した団体は石油連盟、セメント協会、電気事業連合会、電子情報技術産業協会、日本化学工業協会、日本ガス協会、日本自動車工業会、日本製紙連合会、日本鉄鋼連盟。

 要望書は環境税について、次のような問題点をあげて反対している。


  • 産業界だけでなく雇用や地域経済に幅広く影響する
  • 灯油、電気、ガスなどライフラインの税負担が大きい
  • 業界はこれまで世界最高水準のエネルギー効率を実現しており、CO2削減ポテンシャルは小さいため、税による削減効果は小さい。そのうえ負担のみ大きく、省エネ投資や技術開発への余力を失い、国際競争力が低下する
  • 環境税を制定するには「中期的な削減目標の設定」「削減目標のうち“真水”で対応する割合の設定」「税によるCO2削減効果の分析」「国際競争力と生活への影響の分析」が必要

 これらの検討がないまま、環境税の課税規模や税率が想定されており、これは「財源を作るための増税」と批判する。

 さらに、7日にデンマークで開幕した「COP15」(国連気候変動枠組条約 締約国会議)への取り組みとして、「すべての主要国による、公平で実効性のある合意」を求め、日本のみの負担が大きくなるような事態を避けるよう求めた。

 会見に参加した日本自動車工業会の名尾良泰副会長はこれらに加えて、「環境問題は関連予算に毎年1兆円が割かれている。その効果の検証が必要」という問題も提起した。また、自動車業界の環境問題への取り組みについて「燃料電池自動車など次世代自動車に全力を注いでいるが、問題はその車を本当に買ってもらえるかどうか。買ってもらえる保証がないと、設備投資や研究開発投資はできない。また次世代自動車は新しいものなのでどうしても割高になる。前政権では次世代自動車普及率目標を50%としたとき、2020年までに12兆円のコストが必要と試算しているが、次世代自動車へのインセンティブを長期的に政府が用意するのかどうかが問題」とした。

 また石油連盟の比留間孝壽 政策委員会副委員長(出光興産 常務取締役)は、「環境税は、暫定税率廃止で財源が足りなくなることから突如として出されたものと考えざるを得ない」と強く非難する一方、地方部は都市部よりも、自動車用燃料で6倍、暖房用灯油で9倍もの量が必要であり、地方部のほうが税金負担が圧倒的に重いという問題があるため、同連盟は「暫定税率廃止を訴えてきた」ことをアピールした。

 このほかの各団体代表も、自主的な取り組みにより、日本の業界のCO2排出量は現時点でも諸外国より低く、これ以上を税で削減するのは競争力低下につながり逆効果と主張した。

要望書の内容を説明する日本鉄鋼連盟 環境・エネルギー政策委員長の進藤孝生氏(新日本製鐵 代表取締役副社長)自動車業界としての見解を表明する日本自動車工業会の名尾良泰副会長石油連盟の比留間孝壽 政策委員会副委員長(出光興産 常務取締役)

(編集部:田中真一郎)
2009年 12月 7日