「環境」が生き残りのキーだが、重いクルマを求める顧客のニーズも
自工会定例会見より

自工会定例会見での青木哲会長

2009年12月17日
東京 日本自動車会館



 日本自動車工業会(自工会)は12月17日、都内で定例記者会見を開催、青木哲会長が暫定税率の廃止と、温暖化対策における公平な国際的枠組みの構築を訴えたほか、エコカー減税で重量の重い車ほど有利な制度について、正当性を主張した。

来年の需要見通し発表は先送り
 例年、自工会はこの時期に来年の国内需要の見通しを発表しているが、需要予測に大きな影響がある暫定税率の問題がまだ決まっていないため、暫定税率の扱いが決定するまで先送りされることになった。

 民主党が暫定税率維持の方針を提案したと報道されるなか、自工会は「道路特定財源の一般財源化に伴ない、暫定税率には課税根拠がないので、即時廃止すべき」との以前からの姿勢を崩さず、「国民も(暫定税率廃止を)期待しているのではないか」と主張。

 ただし、民主党案では、ガソリンの暫定税率は維持するものの、自動車重量税を減税するとなっており、これについては「暫定税率廃止に向けたひとつの前進と考える」と一定の評価をしつつも、究極的には全額廃止を求める方針を堅持する。

 一方で、「(国内販売が)ここ3カ月くらいはようやく前年を上回るペース」に回復したことに見られるように、エコカー減税とエコカー補助金が需要の下支えになったことを評価。さらに緊急経済対策でエコカー補助金が半年延長されたことを歓迎し、「暫定税率廃止とエコカー減税継続を期待し国内販売回復に努める」とした。

来年の欧米は低調、新興国は依然成長。カギは「環境」
 海外の来年の需要予測は自工会としては発表しないが、青木会長の見解では「米国は少し回復するが依然として低いレベル、1100万台には届かない」「欧州では各国でスクラップ・インセンティブ(エコカーへの買い替え補助)などの需要喚起策が導入され、需要が下支えされたので、来年は若干反動があるのではないかと危惧している」と、欧米が低調と見る。他方、「中国は成長のペースが少しスローになるかもしれないが、依然成長を続け、ますます重要性が増す」とした。

 輸出に関しては最近の円高傾向についても言及。急激な為替変動は当然よくない影響をメーカーに与えるため「為替は基本的に国の実力を反映すべきもの。投機的なものに撹乱されないようにしてほしい」と、為替の安定策を政府に求めた。

 こうした厳しい状況のなか、スズキとフォルクスワーゲンの提携をはじめとするグローバルな再編が活発化しているが、生き残りのためには「環境ということが戦略上・社会責任上のキーだと思う。この分野での国際競争力をどう高めるかが重要。そういう方向で(再編の)動きがいくつかあったのではないかと想像している」との見解を示した。

 自動車が普及段階にある新興国市場では、環境性能よりも廉価であることが求められているが、「新興国でも環境にすぐれたクルマを要望するお客様もいらっしゃるし、時間とともに環境・安全のニーズは間違いなく高まる」と、やはり環境のプライオリティは高いとした。

重いクルマをエコカー扱いするのは「お客様のため」
 その環境問題では、現在開催中のCOP15で大詰めの交渉が難航中。これについてはやはり「日本だけで温暖化対策はできないのだから、各国が参加して意欲的な目標を掲げ公平な枠組みで対策をやるべき」と以前からの主張を繰り返した。

 一方で自動車業界としてはCO2削減策を生産段階でも、製品の性能としても推進し、ユーザーへのエコドライブ啓蒙も重視。また自転車など自動車以外の交通手段との組み合わせなど、多様な環境対策も必要とした。

 なおエコカー減税において、「減税率を重量で区分しているために、重いクルマのほうが減税率が高いことがあり、販売店が燃費の悪いクルマを薦める事例がある」という質問には「家族の人数が多ければミニバン、お子さんたちが巣立ったら小さいクルマ、というような、お客様の多様なニーズに応える必要があるので、重量区分による優遇措置になっている」と説明し、これを「お客様を念頭に置いた体系」とした。

 オプション装着により重量が増え、減税対象となったり、減税率が高まることがある事例についても「オプションを付けて意図的に重くしている(減税対象車にしている)わけではない。オプションはお客様の選択の結果」とした。

(編集部:田中真一郎)
2009年 12月 17日