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三菱自動車、アウトランダー PHEV駆動用リチウムイオンバッテリーの溶損・短絡問題は地面への落下による衝撃が原因

再発防止策の結論がまとまりしだい、5月の連休明け以降にリコール対応となる予定

三菱自動車工業 常務取締役 商品戦略・事業化統括部門長 兼 開発統括部部門長 中尾龍吾氏(左)、常務執行役員 CSR推進本部長 大道正夫氏
2013年4月24日開催

 三菱自動車工業は4月24日、プラグインハイブリッド(PHEV)車「アウトランダー PHEV」などに搭載する駆動用リチウムイオンバッテリーが溶損・短絡した問題について、調査結果がまとまったことから記者会見を都内で開催した。

 記者会見には三菱自動車工業 常務取締役 商品戦略・事業化統括部門長 兼 開発統括部部門長 中尾龍吾氏、常務執行役員 CSR推進本部長 大道正夫氏が出席して説明を行った。

 この問題は3月27日に発表されたもので、アウトランダー PHEVが搭載する電池セルで溶損または短絡のトラブルが発生。アウトランダー PHEVは約4300台の登録があり、約37万個の電池セルが生産されている。今回はその中の3つのセルで問題が発生しており、1つは溶損(神奈川県の事例)、2つは短絡(東京都と岐阜県の事例)が発生した。

 4月10日に行われた中間報告では、問題が発生した3月27日以降に駆動用電池を製造したリチウムエナジージャパン、GSユアサと共同で調査を行った結果、昨年12月に電池セルの製造工程に加えたスクリーニング工程(セルのコンタミネーションを確認する工程で、製造を終えた電池セルを人の手で機械にセットし、さまざまな角度の振動を加える)において、セル内部の一部の部品が変形する可能性があるとの旨が報告された。

 詳細は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20130410_595425.html)を参照してほしいが、スクリーニング工程では人の手で機械にセットする際に過度な衝撃が加わり、正極の一部の部品が変形することがあり、これが短絡の要素になったことが疑われると中尾氏から発表されていた。ただし、この問題だけでは短絡に至らないことからほかに問題がある可能性があるとして、引き続き調査が行われていた。

 その結果、今回の問題の主原因は「スクリーニング工程において、作業時に過大な衝撃が加えられたことにより、部品の一部の変形や金属片発生による内部短絡を起こし、不具合が発生した」ことが判明。

 具体的には、電池セルの正極側にある「正極集電体」と呼ばれる個所で短絡が発生した。その原因は正極集電体に過大な衝撃が与えられたことによるもので、「調査を進めた結果、テーブルから電池セルを地面に落下させたという事象があったことが判明した。通常、落下させた電池セルは不具合品として排除されているが、これが排除できなかった可能性がある」(中尾氏)。

 そのため落下した場合にどういう事象が起こるか、300ほどの電池セルを使って約1m10cmの高さから落とす落下試験を行ったところ短絡の不具合が再現できたため、「今回の溶損・短絡に至る原因は、作業工程における誤った落下ということが原因であろうということで結論づけた」と中尾氏は説明した。

 今後はスクリーニング工程を廃止する対応策を取るという。そのため、新たなコンタミネーション対策として金属片などが混入しないよう集塵装置の導入を検討するとともに、「万が一異物混入があり、それが動いて内部短絡などを起こして電圧低下をしないようにするエージングと呼ばれる工程があり、これは時間をかければかけるほど効果があるので現在のエージングの時間を倍に増やす。この2つの対策でスクリーニング工程と同程度の効果が得られる」(中尾氏)としている。

 今後は再発防止策や、スクリーニング工程を廃止する対応策の効果検証を行っていく。まだ具体的な目処は立っていないものの、5月の連休明け以降に国土交通省へのリコール届けをする構え。対象はスクリーニング工程を導入した昨年12月以降に生産されたモデルとなり、アウトランダー PHEVは販売済みの車両がすべて対象となる。電気自動車(EV)の「i-MiEV」「MINICAB-MiEV」は国内向けとしては約100台前後が対象になる。リコールの対象モデルには、電池パックのAssy交換を行うとしている。

(編集部:小林 隆)