試乗インプレッション

マイナーチェンジした「CX-5」はマツダらしさを残したまま熟成

乗り心地、質感、使い勝手を総合的にブラッシュアップ

 世の中のSUV志向の盛り上がりに合わせ、各社ともSUVのラインアップを充実させているが、マツダも4車種のSUVを揃えて市場のニーズに応えている。そのラインアップは全長4275㎜のCX-3から、4395㎜のCX-30、4545㎜のCX-5、そして4900㎜のCX-8となる。海外専用モデルも含めるともう少し多くなり、いつの間にかマツダもSUVメーカーになっていたことに驚く。今回は2019年の暮れにマイナーチェンジをしたCX-5の公道試乗である。現行CX-5は2代目。2017年に鼓動デザインに磨きがかかってデビューした。世界の数多いSUVの中でもデザインが光る。

CXシリーズサイズ比較

 試乗はしていないが、今回追加されたアクセサリーパッケージ「TOUGH-SPORT STYLE(タフ スポーツ スタイル)」はフロントとリアのアンダーガーニッシュやルーフレールを備えた力強いイメージを持たせ、これまでCX-5にはなかった意匠だが、同じカテゴリーの中でもタフなイメージが好評を集めているトヨタ RAV4の成功も少なからず影響を与えているようだ。

アクセサリーパッケージのTOUGH-SPORT STYLE。ボディカラーは、JAFCA(日本流行色協会)が優れたモビリティのカラーデザインから選ぶオートカラーアウォード2019で、グランプリを獲得した「ポリメタルグレーメタリック」。マイナーチェンジでカタログに追加された新カラー
フロントアンダーガーニッシュ
リアアンダーガーニッシュ
ルーフレール
アクティブなライフスタイルを支援するオールウェザーマット
汚れたものでもそのまま積めるラゲッジトレイ
ブリリアントブラックのドアミラーガーニッシュ(ショップオプション)
17インチアルミホイール(メーカーセットオプション)

 試乗した特別仕様車の「Silk Beige Selection(シルク ベージュ セレクション)」は、シルクベージュカラーのハーフレザレットシートやLED室内照明、IR(赤外線)カットガラスなどを専用装備しており、こちらはラインアップに加えられカタログモデルになっている。

特別仕様車となる「Silk Beige Selection」には、LEDフロントフォグランプ、IRカットガラス、前席用LEDフットランプ&イルミネーションなど特別装備が設けられる
上質な心地よい肌触りで、滑りにくく通気性がよいスウェード調生地のグランリュクスをシートの中心部に使用したハーフレザレットシート
マップランプ、ルームランプ、ラゲッジルームランプ、前席フットランプはLED化される

 CX-5は、2.2リッターディーゼルターボエンジンと、2リッターガソリン自然吸気、2.5リッターガソリン自然吸気、そして2.5リッターガソリンターボがあり、2リッター自然吸気を除いてそれぞれにFFと4WDが選択できる。多彩なバリエーションの中、今回試乗できたのは2.5リッターガソリンターボの4WDで、タイヤは225/55R19のTOYO TIRES プロクセスになる。

エンジンラインアップ
試乗した2.5リッターガソリンターボ

 CX-5のエンジン比率はディーゼルのSKYACTIV-Dが7割を占めており評価も高いが、ガソリンのSKYACTIV-Gもなかなかの優れものだ。その中でも少数派だが、ガソリンターボは最高出力169kWを出し、トルクも420Nmあるので、回転の伸びと共に隠れた実力を持つエンジンだ。アクセルコントロールがしやすく、発進時でも踏み込み具合に神経を使わせない。アクセル開度に対して素直に反応するので、たとえ発進時に路面に凹凸があってもトルクコントロールがしやすく、引っ掛かりと乗り越えた時の飛び出し感が少ない。

 加速フィールは、徐々にトルクが盛り上がる感触で、SUVらしいゆとりを感じさせるもの。アクセルレスポンスもよいので必要な状況にすぐに反応してくれる点も気持ちよい。また、スポーツエンジンのような爆発的なパンチではないが、大排気量自然吸気エンジンのようなトルクと伸びやかな感覚が心地よい。このエンジンのよいところはトルクバンドが分厚く、アクセル操作に対して立ち上がりが早いところにある。

 ドライビングポジションではアクセルペダルからブレーキペダルに踏みかえる時も段差に引っ掛かりはなく、踏みかえは滑らかに行なえる。ブレーキコントロールはストロークと踏力がバランスしており、こちらもアクセル同様に操作しやすい。少なくとも街中でのストップ&ゴーでは一定リズムでブレーキ操作ができる。何気ないことだがストレスの少ない運転ができる。さらに電動パーキングブレーキのホールドモードは、再スタート時に解除が早く、引っ掛かるような感じがなく、アイドルストップからの一連の動作もスムーズなスタートだった。

 ATは6速で変わりがないが、これまで装備されていなかったパドルシフトが標準装備となったおかげで、積極的にエンジンブレーキを使いたい場面での使い勝手がよくなっている。また、ギヤがホールドしてからの復帰もドライビングの流れを邪魔しない。

ステアリングにはパドルシフトが標準装備となり使い勝手が向上
新開発「オフロード・トラクション・アシスト」のスイッチは、ステアリング右下に配置される
WVGAセンターディスプレイは7インチから8インチへと大型化

 内装はシンプルだが上質でカラーコーディネイトも心地よい。ダッシュボード上のディスプレイは7インチから8インチにサイズアップされて見やすくなった。ハーフレザレットシートは、革特有の硬さはなく身体に馴染みやすい。ただヒップポイントでシートの継ぎ目が気になることがあった。全体としては形状やクッションストロークなどしっくり感がある。リアシートはその性質からもう少しソフトな方が望まれるがどうだろうか。

 さて乗り心地だが、最初に気になったのは走り始めてすぐの路面から凹凸を伝えてくることだった。少し大きめのショックはサスペンションがよく吸収してくれるし、上下ダンピングも乗り心地に影響を与えないが、もう少し路面の凹凸をいなしてくれたほうがCX-5に相応しい。

 その代わりハンドリングは予想以上にキビキビしているので、まさに「Be a driver.」だった。高速での舵の落ち着き感などはもう少し上げたいところだが、こんな硬派なところはマツダらしい。もう1つ付け加えるところはロードノイズのカットに磨きがかけられたことだろう。余分な音が吸収されているのが分かる。マツダのリリースによるとトップシーリング材のフィルム変更による効果だという。こんなところにもマツダの熟成に対するこだわりを感じさせる。

 進化したCX-5を公道でドライブしたが、CX-5のAWDにはCX-30から採用されているオフロード・トラクション・アシストが標準装備されている。この機能は悪路でスタックしそうになった時にクルマ側でブレーキとエンジン制御で脱出を容易にするものだ。雪やぬかるみなどで効果を発揮するだろう。最新のマツダAWDの進化もチャンスがあれば試してみたい。

 なお、同日CX-8を試乗する機械も得た。こちらの試乗記も追って掲載するのでご覧いただきたい。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一