試乗レポート
BMWの新型7シリーズ「740i」、31インチのシアタースクリーンとともに圧巻の走り
2023年2月24日 11:17
ロールス・ロイスかと見まごうばかりの存在感
BMWのフラグシップモデルである7シリーズ。ガソリンとディーゼル、それにBEV(バッテリ電気自動車)の3機種があるが、ここではガソリン仕様を紹介する。伝統のFRレイアウトだ。
一見してそのサイズに圧倒されると同時に、BMWグループのロールス・ロイスかと見まごうばかりの存在感だ。最近のキドニーグリルは垂直に立ち上がっているので、真ん中にスプリット・オブ・エクスタシーがあるのではないかと錯覚する。塗色の厚みもロールス・ロイスを連想する。
ボディサイズは5390×1950×1545mm(全長×全幅×全高)と圧巻。ホイールべース3215mmもLクラスミニバン以上で、その長さは後席のために割かれている。超ロングホイールベースだが最近のLLクラスのトレンドで後輪操舵も備え、低速では逆相に切り最小回転半径は予想より小さい6.1mと市街地での取りまわしも意外と良い。
リムジンとはいえ運転を楽しむことができる
車両重量2120kg(車両総重量は2395kg)のボディを引っ張るのは直列6気筒3.0リッター ツインパワーターボエンジン。出力は280kW/520Nmと、リムジンらしく低中速トルクを重視したエンジンを搭載する。これには48Vマイルドハイブリットも組み合わされ、発進時には粛々とした上質な加速でリムジンらしい力強さと穏やかさを併せ持つ。BEV版の「i7」ほど無音ではないが、静粛性で見劣りすることはない。違いは滑らかにまわる直列6気筒の鼓動を感じることだが、内燃機好きにはホッとする瞬間だろう。
パフォーマンスは十分。アクセル操作に対して穏やかに反応させているので後席に座るVIPは安心して座っていられる。さらに強めにアクセルを踏むと力強く速度が伸び、追い越し加速も申し分ない。そして車両姿勢はロングホイールベースの恩恵もあり穏やかだ。
やはりリムジンとはいえBMWだなと感じたのは、ドライバーが運転を楽しむことができることだ。走り出せばドライバーの操作に対して素直に反応し、その動きは期待を裏切らない。M Sportから連想するスポーツカーのような俊敏さではないが、操作に対して正確に反応するところがBMWらしい。
高速直進時のハンドルフィールもドライバーに大きな安心感を与え、この上なくリラックスできると同時に乗り心地も路面からの凹凸を包み込むような優しさがある。さすがBMW、運転席も後席のVIPと同じような心地よさだ。
それでもハイライトはやはり後席。レッグルームをタップリと取った上に、コンソール上のスイッチ1つで助手席がグンと前に出て、さらにシートバックも前倒しするので目の前は広々とする。広さだけならLクラスミニバンでも十分だが、7シリーズが目指すのは正統派のリムジン。贅を尽くした空間には唸らされる。
またオプションのリア・シート・エンターテイメントシステムが用意され、Amazon FireTVを搭載した31インチのシアタースクリーンは圧巻。自動で後席いっぱいに広がるスクリーンにウィンドウシェードで限られた空間となりBowers&Wilkinsの緻密に配置された40個にも及ぶツイーター、ミッドレンジスピーカー、サブウーファーで素晴らしい空間が広がる。分厚くゆったりとしたクッションストロークを持つシートにはマッサージ機能も装備され、そこに腰を落としただけで別世界が広がっていく。
乗り心地は言うまでもなくソフトだ。装着タイヤはピレリ「P ZERO」でフロント255/45R20、リア285/45R20のランフラットタイヤを履く、低速ではランフラット特有の硬さは感じるが、磨き抜かれたエアサスペンションはそれ以上に凹凸での柔らかいアタリを実現しており心地よく、路面のアンジュレーションでもフラットな姿勢を保っている。
風切り音やロードノイズもよくカットされており、キャビンはどこまでも静粛。自動車の基本をきちんと抑えた上で駆け抜けるだけでない新しい喜びに挑戦する姿が新しい7シリーズには見えてくる。そしてBMWは常にチャレンジャーであったことを改めて思い出す。クルマがどう変わっていこうともBMWはBMWなのだ。