試乗記
大幅改良「ロードスター」初試乗、新型LSDやパワステ改良で走りはどう変わったか?
2024年2月13日 07:05
- 289万8500円~367万9500円(ロードスター)
- 379万6100円~430万8700円(ロードスター RF)
ビッグマイナーチェンジが施されたND型ロードスター
どの時代、どのロードスターに乗っても運転は楽しいと思わせてくれる。まさにライトウェイトスポーツカーの鏡だ。現行のND型ロードスターは4世代目で累計120万台が世界中の愛好者の毎日に彩りを添えている。
現行ND型ロードスターにとって、もっとも大きなマイナーチェンジが2023年10月に発表されたが、いよいよ1月中旬から正式に発売が開始された。
改良の目標はさらにロードスターらしさに磨きをかけることだ。厳しくなるサイバーセキュリティに対応してハッキングを防止する「eプラットフォーム」はクルマ全体を変えるほどの大きなマイナーチェンジだが、試乗ではそれ以外のパートでもロードスターがさらに進化したことを実感した。歴代ロードスターはどれも走りへのこだわりを持って開発されていたが、今回のマイナーチェンジでも痒いところに手の届くような改良が施されていたからだ。
ワクワクしながらロードスターのステアリングホイールを握る。スタートではちょうどフライホイールが軽くなったような動きで、登り坂でのスタートではクラッチミートとアクセルを丁寧に合わせないとちょっとギクシャクする傾向がある。
リリースでは、1.5リッターエンジンは出力特性が見直されて、トップエンドのパワーも3kW増しの100kW(136PS)に、トルクは152Nmだが味付けが変わり低中速でのピックアップがよくなったようで、それが多少影響しているのかもしれない。
エンジン音は低音のエキゾーストノートの質は少し湿ったように重量感があるのと、加速時にわずかに入る吸気音が気持ちをかき立てる。
6速MTは相変わらずライトウェイトスポーツのお手本のように軽く手首の動きでカチリと入る。早めのシフトで高いギヤでも、低いギヤで引っ張ってもドライバーの意思に忠実だ。車両重量は1.5リッターのソフトトップでは1tをわずか超える重量なので十分なパワーを持つ。
ロードスターはヒラリヒラリとコーナーを駆け抜ける軽快な動きを信条としてユーザーからも支持されている。ボディ剛性も捻じれ剛性などは不利に感じさせるが、それも含めてロードスターだった。
あえて新型と呼ぶが、新型ロードスターはステアリングフィールが正確になり、操舵フィールも絶妙な重さを持ちながら、戻す時のしっとりと手に馴染む感触が従来型とは大きく異なり、フットワークのロードスターに磨きがかかったように感じた。装着タイヤは従来と同じく横浜ゴムのADVAN V105で、サイズは195/50R16。16インチ(6.5J)のホイールからは路面とのコンタクトをより強く感じられ、正確なライントレースができる。
もう1つロードスターの魅力を引き上げたのは「アシンメトリックLSD」だ。円錐クラッチ型LSD+カム機構。言葉では説明しにくいが、ざっくり言うと従来の加速側でのLSD効果に加えて減速側もLSD効果を強めることで姿勢制御を行なうというものだ。
これまでのロードスターにもLSDは装備されていたが、例えば下りコーナーで例を取ると、リアが浮き上がり気味になって収束の遅れがあった。サーキットのような高速から減速しつつコーナーへ入る場面では、なおさらこの傾向が出やすく、もしこれをサスペンションで抑えようとすればロードスターの軽快さは減少してしまう可能性もある。
アシンメトリックLSDは、減速側のLSD効果を強めることで、軽快さを失わずにリアの姿勢を安定させてくれる。
実際に新型でも、リアスタビライザーを持たずオープンデフのグレード「S」だとリアの浮き上がりがあったが、リアスタビライザー+アシンメトリックLSDを標準装備するグレード「Vセレクション」は、リアの浮き上がりとその収束を気にせずにコーナリングできた。
ちなみに乗り心地までよくなったように感じたが、サスペンションは従来型のママ変更なしという。内装の質感向上や上質なステアリングフィール、わずかな路面の凹凸も接地性が微妙に高くなったので、そのように感じられたのかもしれない。乗り心地を硬くせず、軽快なフットワークはそのままに安定性を手に入れた新型の熟成度は素晴らしい。
RF(リトラクタブル・ファストバック)にも試乗
一方、2.0リッターエンジンを搭載するのRFのドライブフィールは、1.5リッターのオープン2シーターとは違ったクーペ感覚だった。ボディ剛性が高くなっている印象で、ちょっと大人になったロードスターと言えばよいのだろうか。エンジンは135kW/205Nmの出力は変わらず、車両重量は1110kgと100kgほど重くなっているが、大きなトルクで高いギヤでも余裕十分に走れる。
重心高が高いためか、ソフトトップほどの軽快感はないが、クローズドボディに限りなく近いキャビンは騒音を抑えた空間で、ルーフを開ければオープン2シーターの解放感を味わえるのがRFの妙味だ。
インテリアは、センターディスプレイがフレームレス8.8インチと横長大画面になり、前方視界を阻害することなく見やすくなった。ソフトトップではマツダコネクトが装備されスマホを通じて車両に状態を知ることも可能となった。操作系もシンプルだ。
レザーパッケージは、ドアトリムやセンターコンソールにも合成皮革が採用され、上質感を出している。標準型のインテリアもシンプルで好感を持っているが、こちらは代替え組にもうれしい進化だろう。
大きな進化はADAS系で、フロントグリル左側に設定されたレーダーセンサーで、ACCでの追従運転が可能となったことが大きい(ただしSグレードとNR-Aには設定なし)。さらに15km/h以下での後退中に左右、後方から接近してきた車両を検知して衝突が避けられないと判断した時はブレーキをかけることで被害を軽減する機能も備わった。これらはATおよびMT問わず全車に装備される。
MT車はさらに、スタビリティコントロールがサーキットでも使えるモード「DSC-TRACK」が追加されたのがポイント。DSCスイッチの上に配置してあり、サーキットなどでスピンモードに入った時に姿勢を制御するという。通常のテールスライドでは介入しないモードで、サーキット走行時、特にウェット路面でドライバーをサポートするに違いない。
楽しい試乗を終えて改めて思ったのは、ロードスターはマツダの財産であると同時に日本の宝であり、いつまでも平和の象徴であるライトウェイトスポーツカーが楽しめる世界であってほしいということだった。
価格はソフトトップのグレード「S」で比較すると、20万9000円ほどアップして289万8500円(MT)となった。さらに「SレザーパッケージVセレクション」は、レーダークルーズコントロール(ACC)やシートヒーター、マツダコネクト、アンシンメトリックLSDを装備し355万3000円(MT)と従来の同グレードのSレザーパッケージホワイトセレクションより25万5200円高くなるが、こちらも納得の価格設定だ。ちなみにRF VSはMTで415万4700円に設定されている。
ビッグマイナーチェンジのポイント
デザイン面は、ロードスターらしさに磨きをかけていくため「More Road Star」のスローガンのもとデザイン開発が実施され、「魅力あふれる豊かな表情」「ライトウェイトスポーツの機能美」「誰にでも愛される普遍性」の3つの切り口を継承している。