試乗記

大幅改良「ロードスター」初試乗、新型LSDやパワステ改良で走りはどう変わったか?

289万8500円~367万9500円(ロードスター)

379万6100円~430万8700円(ロードスター RF)

2023年10月に大幅改良が施されたロードスター。果たしてその乗り味は……

ビッグマイナーチェンジが施されたND型ロードスター

 どの時代、どのロードスターに乗っても運転は楽しいと思わせてくれる。まさにライトウェイトスポーツカーの鏡だ。現行のND型ロードスターは4世代目で累計120万台が世界中の愛好者の毎日に彩りを添えている。

 現行ND型ロードスターにとって、もっとも大きなマイナーチェンジが2023年10月に発表されたが、いよいよ1月中旬から正式に発売が開始された。

大幅改良されたロードスター。写真は「S」グレード
ボディカラーはジルコンサンドメタリック

 改良の目標はさらにロードスターらしさに磨きをかけることだ。厳しくなるサイバーセキュリティに対応してハッキングを防止する「eプラットフォーム」はクルマ全体を変えるほどの大きなマイナーチェンジだが、試乗ではそれ以外のパートでもロードスターがさらに進化したことを実感した。歴代ロードスターはどれも走りへのこだわりを持って開発されていたが、今回のマイナーチェンジでも痒いところに手の届くような改良が施されていたからだ。

CX-60の電装類を使いサイバーセキュリティに対応させた「eプラットフォーム」へと進化したロードスター。開発陣いわく「プラットフォームの刷新は新車レベルの大改良となり、もはや“ND2型”と呼んでほしい」とのこと

 ワクワクしながらロードスターのステアリングホイールを握る。スタートではちょうどフライホイールが軽くなったような動きで、登り坂でのスタートではクラッチミートとアクセルを丁寧に合わせないとちょっとギクシャクする傾向がある。

 リリースでは、1.5リッターエンジンは出力特性が見直されて、トップエンドのパワーも3kW増しの100kW(136PS)に、トルクは152Nmだが味付けが変わり低中速でのピックアップがよくなったようで、それが多少影響しているのかもしれない。

 エンジン音は低音のエキゾーストノートの質は少し湿ったように重量感があるのと、加速時にわずかに入る吸気音が気持ちをかき立てる。

吸気サウンドを室内へと響きやすくする「インダクションサウンドエンハンサー」はRSグレードのみ標準装備で、そのほかのグレードはディーラーオプションとなる(価格1万4025円)
インダクションサウンドエンハンサーの内部にあるチャンバー構造を見直し、薄いゴム膜に変更したことで、エンジン回転全域でより吸気サウンドが響きやすくなったという
インダクションサウンドエンハンサーのほかにも、エアクリーナーボックスの下部に開口部を設けることで吸気音量を向上させている
インダクションサウンドエンハンサーを装着しているエンジンルーム
インダクションサウンドエンハンサー非装着のエンジンルーム

 6速MTは相変わらずライトウェイトスポーツのお手本のように軽く手首の動きでカチリと入る。早めのシフトで高いギヤでも、低いギヤで引っ張ってもドライバーの意思に忠実だ。車両重量は1.5リッターのソフトトップでは1tをわずか超える重量なので十分なパワーを持つ。

 ロードスターはヒラリヒラリとコーナーを駆け抜ける軽快な動きを信条としてユーザーからも支持されている。ボディ剛性も捻じれ剛性などは不利に感じさせるが、それも含めてロードスターだった。

 あえて新型と呼ぶが、新型ロードスターはステアリングフィールが正確になり、操舵フィールも絶妙な重さを持ちながら、戻す時のしっとりと手に馴染む感触が従来型とは大きく異なり、フットワークのロードスターに磨きがかかったように感じた。装着タイヤは従来と同じく横浜ゴムのADVAN V105で、サイズは195/50R16。16インチ(6.5J)のホイールからは路面とのコンタクトをより強く感じられ、正確なライントレースができる。

ステアリングラックのブッシュがなくなったことでフリクションが低減し、さらにモーターアシストの制御ロジックを内製化し、より自然なフィードバック感を実現している

 もう1つロードスターの魅力を引き上げたのは「アシンメトリックLSD」だ。円錐クラッチ型LSD+カム機構。言葉では説明しにくいが、ざっくり言うと従来の加速側でのLSD効果に加えて減速側もLSD効果を強めることで姿勢制御を行なうというものだ。

 これまでのロードスターにもLSDは装備されていたが、例えば下りコーナーで例を取ると、リアが浮き上がり気味になって収束の遅れがあった。サーキットのような高速から減速しつつコーナーへ入る場面では、なおさらこの傾向が出やすく、もしこれをサスペンションで抑えようとすればロードスターの軽快さは減少してしまう可能性もある。

 アシンメトリックLSDは、減速側のLSD効果を強めることで、軽快さを失わずにリアの姿勢を安定させてくれる。

「S」グレードを除くMT車に「アシンメトリック LSD」が新採用された。加速・減速時のデファレンシャルギヤの差動制限力を変化させることで、リアタイヤの接地荷重変化に対してクルマの旋回挙動を安定させる
アシンメトリック LSDのカットモデル
左が新開発の「アシンメトリックLSD」で、右がNB型(後期)やNC型ロードスター、RX-8に採用されていた「スーパーLSD」
円錐クラッチLSDの内部にあるサイドギヤにカム構造を追加したほか、従来のコイルスプリングは板バネへと変更するなど、構造はまったく異なる
ASYMMETRIC LIMITED SLIP DIFFERENTIAL(アシンメトリックLSD)(2分14秒)

 実際に新型でも、リアスタビライザーを持たずオープンデフのグレード「S」だとリアの浮き上がりがあったが、リアスタビライザー+アシンメトリックLSDを標準装備するグレード「Vセレクション」は、リアの浮き上がりとその収束を気にせずにコーナリングできた。

 ちなみに乗り心地までよくなったように感じたが、サスペンションは従来型のママ変更なしという。内装の質感向上や上質なステアリングフィール、わずかな路面の凹凸も接地性が微妙に高くなったので、そのように感じられたのかもしれない。乗り心地を硬くせず、軽快なフットワークはそのままに安定性を手に入れた新型の熟成度は素晴らしい。

RF(リトラクタブル・ファストバック)にも試乗

 一方、2.0リッターエンジンを搭載するのRFのドライブフィールは、1.5リッターのオープン2シーターとは違ったクーペ感覚だった。ボディ剛性が高くなっている印象で、ちょっと大人になったロードスターと言えばよいのだろうか。エンジンは135kW/205Nmの出力は変わらず、車両重量は1110kgと100kgほど重くなっているが、大きなトルクで高いギヤでも余裕十分に走れる。

ロードスターRF RSグレード
試乗車のボディカラーはエアログレーメタリック

 重心高が高いためか、ソフトトップほどの軽快感はないが、クローズドボディに限りなく近いキャビンは騒音を抑えた空間で、ルーフを開ければオープン2シーターの解放感を味わえるのがRFの妙味だ。

 インテリアは、センターディスプレイがフレームレス8.8インチと横長大画面になり、前方視界を阻害することなく見やすくなった。ソフトトップではマツダコネクトが装備されスマホを通じて車両に状態を知ることも可能となった。操作系もシンプルだ。

 レザーパッケージは、ドアトリムやセンターコンソールにも合成皮革が採用され、上質感を出している。標準型のインテリアもシンプルで好感を持っているが、こちらは代替え組にもうれしい進化だろう。

フロントグリル左前にレーダーセンサーが搭載され、先進安全装備となる「MRCC(マツダ・レーダークルーズ・コントロール)」や「スマート・ブレーキ・サポート(後退時左右接近物検知機能・SBS-RC)」などが装備された

 大きな進化はADAS系で、フロントグリル左側に設定されたレーダーセンサーで、ACCでの追従運転が可能となったことが大きい(ただしSグレードとNR-Aには設定なし)。さらに15km/h以下での後退中に左右、後方から接近してきた車両を検知して衝突が避けられないと判断した時はブレーキをかけることで被害を軽減する機能も備わった。これらはATおよびMT問わず全車に装備される。

 MT車はさらに、スタビリティコントロールがサーキットでも使えるモード「DSC-TRACK」が追加されたのがポイント。DSCスイッチの上に配置してあり、サーキットなどでスピンモードに入った時に姿勢を制御するという。通常のテールスライドでは介入しないモードで、サーキット走行時、特にウェット路面でドライバーをサポートするに違いない。

チェッカーフラッグ柄があるのが「DSC-TRACK」モードのスイッチ

 楽しい試乗を終えて改めて思ったのは、ロードスターはマツダの財産であると同時に日本の宝であり、いつまでも平和の象徴であるライトウェイトスポーツカーが楽しめる世界であってほしいということだった。

 価格はソフトトップのグレード「S」で比較すると、20万9000円ほどアップして289万8500円(MT)となった。さらに「SレザーパッケージVセレクション」は、レーダークルーズコントロール(ACC)やシートヒーター、マツダコネクト、アンシンメトリックLSDを装備し355万3000円(MT)と従来の同グレードのSレザーパッケージホワイトセレクションより25万5200円高くなるが、こちらも納得の価格設定だ。ちなみにRF VSはMTで415万4700円に設定されている。

ロードスターはマツダの財産であると同時に日本の宝である

ビッグマイナーチェンジのポイント

 デザイン面は、ロードスターらしさに磨きをかけていくため「More Road Star」のスローガンのもとデザイン開発が実施され、「魅力あふれる豊かな表情」「ライトウェイトスポーツの機能美」「誰にでも愛される普遍性」の3つの切り口を継承している。

ヘッドライトはフルLEDタイプに進化
リアコンビランプもフルLED化。ジェットエンジンのアフターバーナーをイメージしたデザインを採用している
16インチホイールは機能性と軽さを重視したパフォーマンスを感じるデザインを採用
17インチホイールは華やかで大きく見えるデザインで、切削タイプも設定している
漆黒の文字盤とともにシャープな指針となり、立体メモリのシンプル化も図られている
縦長の7インチディスプレイから8.8インチのワイドモニターに変更したほか、ソフトウエアも新世代のマツダCONNECTにアップデートを実施
フレームレスのルームミラーを採用し、視認性を向上。SOSコールのスイッチも新設している
センターコンソールはプラスチックのハードパーツからクッション入りの表皮巻きに変更。ステッチも入り質感を向上させている

新たにS Leather Package V Selection追加

 今回の大幅改良では、ベージュのソフトトップカラーを採用した「S Leather Package V Selection」が追加された。ボディ同色の電動リモコン式ドアミラーやナッパレザーシート、合成皮革のドアトリム、インパネ、センターコンソールに加え、高輝度塗装の16インチアルミホイールなどを採用している。

ベージュのソフトトップカラーを採用した「S Leather Package V Selection」の価格は6速MTが355万3000円、6速ATが366万8500円
試乗車のボディカラーはソウルレッドクリスタルメタリック
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛