トピック
フォーカルの走行音静粛化プログラム「調音施工」がリニューアル! テスラ「モデルY」で施工前後を体験してみた
- 提供:
- フォーカル・オーディオ・ジャパン株式会社
2022年11月4日 08:00
遮音材シートが新しくなった!
かつてCar Watchでも紹介したフォーカル・オーディオ・ジャパン(Focal Audio Japan)の「調音施工」が、大きな反響を呼んでいる。テスラでスタートしてはや3年、その存在が広く知られるようになり、施工可能な車種もどんどん増えて、訪れるお客さんも急激に増えた。さらに、このほど施工のキモとなる遮音材のシートが新しくなるとともに、テスラのニューモデル「モデルY」のデモカーが納車された。
新しい「アドバンス調音シート」は、既存のフォーカル製のものからビーウィズのオリジナルになり(サービス名も「調音施工 by BEWITH」に)、シートの厚みが増して材質も若干変わっている。3層構造である点は同じで、1層目がブチルゴムというベタベタくっつくものなのだが、粘着力がこれまでにも増して強力になり、業界最強レベルになったらしく、触ってみるとたしかに違いは歴然だ。
次の遮音のカナメとなるアルミの層も、従来の倍の厚さになっているので、より静かになることが期待できる。その次の吸音層も、新しいシートはより発泡を柔らかくするとともに、従来は約6mmだったところ、少し厚くした「9mm」と「7mm」の2種類が用意される。ただし、商品名の数字としては、あえて少し控えめに「8」と「6」とされている。
これらによりきちっと粘着して、いろいろなところから侵入しようとする音をできるだけシャットダウンして、さらに吸音するという一連の走行音静粛化を、より理想的にこなしてくれることが期待できる。価格は従来のものより若干高く、希望者は既存のフォーカル製シートを選ぶこともできるが、性能の違いはお値段の差よりはるかに大きいとのことだ。
商品がグレードアップしたことには違いないわけだが、この3年は施工する中島敏晴代表らにとってもいろいろなことがあったそうだ。もちろん、バッチリ効いて喜んでくれた人が圧倒的に多い半面、あまりにも期待値が高かったせいか、納得してもらえない人もいなかったわけではない。そもそも調音施工の効果は具体的に何db下がるというものではなく、あくまで“感覚”だ。「分からない」と言われてしまえばそれまでという難しさがある。
また、相手は「音」であり、とくに低周波の波長の長い音はどこからでも入ってくる上に、あるところを抑えると、また別のところが気になり出し、すべてを抑え込もうとすると際限なく手間もお金もかかり、まさしくいたちごっこになるという難しさもある。そこで、これまでのノウハウの蓄積をもとに、もっとも費用対効果に優れるように施工するわけだが、むろん万能ではないことはご承知おきいただくほかない。
そんなところで、この機に一度、整理しようではないかということで、あらためて千葉県の木更津にあるフォーカルの総本山にオジャマした。
静かだけど衝撃音は大きいモデルY
新しいテスラ モデルYに新しいシートがどれぐらい効果があるのかは未知数だが、まずは施工前のモデルYでひとまわり走行して感触を確かめておく。中島代表も興味津々の様子だったのだが、モデルYでは先発のモデル3よりも広範囲でキャビンまわりの大半にデュアルガラスが用いられているというだけあって、ちょっと走ってみた第一印象としては、かなり静かであることに中島代表も筆者も驚いた。これだけ静かだと、果たして調音施工の効果が分かるのか心配になったほどだ。
ところが、しばらく走っていると車体上側は極めて静かなのに対し、下側からはタイヤが発する音がけっこう入ってくることを確認。全体としては静かなのだが、今回はとくに“音”に着目して走ったせいもあり、一度気になり出すとずっとその音が気になってしまった。
さらに、モデルYは足まわりが引き締まっているせいか、段差や継ぎ目を通過したときの衝撃音もけっこう大きくて、突き上げも実際よりも強く感じられるように思えた。アクアラインに乗って高速巡行したときには、サー音がやや気になった。運転してもらって後席にも乗ってみたところ、やはり前席よりも音は大きめで、トノカバーのないリアから入ってくる音もそれなりにあるといった具合。おそらくそのあたりが施工により変わるはずだ。
お店に戻り、さっそく施工にとりかかる。納車したてのモデルYをバラすのはスタッフさんにとっても初めて。セオリーどおり、4輪のホイールハウスのインナーフェンダーがバラされ、遮音シートがものすごくキレイに貼りつけられていく。まさに“職人技”を目の当たりにして、恐れ入る思いだった。
そこまでは予定どおりだったのだが、なんとリアフロアが予想外の構造になっていた。モデル3ではラゲッジスペースのフロアには平らな鉄板が敷かれているだけなので簡単に施工できたところ、モデルYは本国では3列シート7人乗り仕様も設定があり、それに合わせてフロアがくり抜かれてバスタブ状の樹脂製アンダーボックスが組み込まれていたのだ。
こうなっていては、シートを貼り付けるとなるとかなり苦労するのは言うまでもなし。ここでどうしたのかが記事化されると、今後やってくるお客さんにとっては、それがスタンダードになるため、非常に重要な決断だったわけだが、しばし思案した結果、ボックスの形状に合わせてできるだけみっちりとアドバンス調音シートを貼り付けることに。思ったよりも時間も手間もだいぶかかってしまったものの、なんとか完成にいたった。
会話もオーディオも聞きとりやすく!
そして、いよいよ実走チェック! 一抹の不安を抱えつつ走り出すと……、やっぱり静かになってる! 走り出してほどなく、ごく低い車速でもざらついた感触が払拭されていて、車内がシーンとした感じになっているのが分かった。
木更津のアウトレット周辺の一般道を上限50km/hぐらいで走ると、荒れた路面でのザラザラ、ポコポコした音や、段差や継ぎ目を乗り越えたときの衝撃音も、消えてはいないが音のレベルとしてはだいぶ下がっていて、音が遠く離れた場所から聞こえるようになったと感じられた。やや高めのサー音は聞こえなくないものの、音量はだいぶ下がっていた。
それはアクアラインを走っても同じ。車速が高まるに連れて、施工前はもっと聞こえたはずの音が、施工後は全体的に小さくなっているのに加えて、上がり幅もゆるやかになっている。
さらに印象的だったのが、カーオーディオの音がクリアに聞こえるようになったのと、車内の会話明瞭度が格段に上がったことだ。施工前はさまざまな音によってマスキングされていたのが、人間の耳にとって敏感な帯域のノイズが低減されたことで、相対的に声が通りやすくなり、聞き取りやすくなったおかげに違いない。
中島代表によると、人間の声というのは男性が100Hz~1kHzぐらい、女性が200Hz~2kHzぐらいの帯域であり、調音施工でもっとも効果があるのが80Hz~2kHzの帯域なので、ちょうど上手いこと会話とかぶる音が消えてくれることになる。
後席に乗ってみても違いは歴然! 後ろから入ってくる音もだいぶ静かになっている。とはいえ前席に比べると、いくぶん侵入する音の存在が感じられたのは、おそらく例のボックスにシートを貼り付けた際に、完全にカバーされず少しだけ隙間ができたからだと思われ、もう少し改善する余地はありそうだが、それでも効果は明らかだ。いずれにしても、何もしなくてももともと静かだと感じたモデルYでも、施工することで効果があることが確認できた。
ただし、冒頭でも述べたとおり、低周波のゴーとかザーという音もいくぶん低減しているが、中低~高周波の音に比べると効果が薄いのは事実だ。そこははっきりとお伝えしておこう。それでも低周波の音というのは、実は会話明瞭度にはそれほど影響しない。その低周波の音を消すためにさらにお金をかけるよりも、寄与度の大きい中低~高周波の音を消したほうがはるかに合理的で費用対効果が高い。
また、ゴー音やザー音はあまり消せなくても、段差や継ぎ目を通過したときのガツガツという突き上げ音が施工前はもっと響く感覚があったところ、よい意味で音が鈍くなって、ずいぶんまろやかになっている。それだけで乗り味がグッと上質になる。
「調音」というのは、「遮音」でなければ「整音」でもない。人がクルマの中で少しでも快適に過ごせるよう、その環境を整えるために音の面で最適化するというもの。効果があるかどうかは路面によるところが大きいわけだが、今回の試走からしても、多くの人がよく走るであろう路面ほど、より大きな効果を得られると考えてよさそうだ。
なお、今回の内容で料金は15万円程度になる予定とのこと。それぐらいの出費でこんなに変わるのだったら大いにアリだとあらためて思った次第である。同じ内容の調音施工を実施している店舗は本記事掲載時点で全国で7店舗あり、中島代表によると現在、認定制度を構築しはじめているところで、専門の講習を受けたスタッフが今後は徐々に増えていき、より全国で施工を受けやすくなっていく予定という。興味のある方はぜひ問い合わせてみるとよいだろう。
Photo:佐藤正巳