【東京モーターショー2011
フォルクスワーゲン、「クロスクーペ」「パサート オールトラック」をワールドプレミア


18台もの展示車を並べたフォルクスワーゲンブース

会期:11月30日~12月11日(一般公開日:12月3日~11日)
会場:東京ビッグサイト



 すでに海外でのモーターショーで世界デビューを果たし、多くのファンが心待ちにしている「ザ・ビートル」のジャパンプレミアだけでも話題性の大きいフォルクスワーゲンブースだが、11月30日の東京モーターショー・プレスデーにはコンセプトモデルの「クロス クーペ」、パサート ヴァリアントの派生モデル「パサート オールトラック」という2台がワールドプレミアを果たし、一気に見学者を集めることになった。

クロス クーペパサート オールトラック

 プレスブリーフィングの終盤に満を持して登場したクロス クーペは、「4ドアクーペとSUVをクロスオーバーさせる」というデザインコンセプトからスタートし、将来的なフォルクスワーゲンSUVのデザイン上での方向性を示すというモデルであることに加え、技術的にも2つの電気モーター(前後各1基)と直噴ガソリンターボのTSIエンジンを組み合わせたプラグインハイブリッド車という先進性を与えられている。

フロントグリルの水平なラインはフォルクスワーゲン車のアイデンティティキャビンを後方に移動させ、精かんですっきりしたシェイプを実現後輪をモーターで駆動する独自の4WD機構

 さらにクロス クーペはフォルクスワーゲンが新しく公開する「MQB」と呼ばれる横置きモジュールをベースにした初めての車両でもあるとのこと。通常走行中は車両前方にあるエンジンとモーターが状況に応じて使い分けられて前輪を駆動するほか、路面状況の変化などによって4WDになるときは、フロント側のモーターがTSIエンジンによって駆動され、発電機の役割を果たしてリア側モーターに電力を供給するようになっている。

グリルバーとバイキセノンのヘッドライトを一体化したこのデザインこそ、将来のフォルクスワーゲンSUVの顔になると説明プレスブリーフィングの登壇者によるフォトセッション

 また、フル充電時には40kmまでEV走行が可能な能力を備えており、100km走行するのに必要な燃料は2.7Lという環境性能を持っている。ほかにもセンタートンネル内にドライブシャフトの代わりにリチウムイオンバッテリーを配置する「電気ドライブシャフト」の採用など、ルックスだけに止まらない革新性に満ちたクルマとなっている。

クロス クーペのインテリア

 “未来のクルマ”というテイストを全面に押し出すクロス クーペとは対極的に、「パサート オールトラック」は2012年春に欧州市場で発売を予定する現実的なモデル。エンジンは160馬力と210馬力のTSI(直噴ターボガソリン)エンジンと、140馬力のTDI(直噴ターボディーゼル)の3種類を用意し、TSIエンジン車ではDSGと4WDシステムの4モーションを介して路面に伝え、TDIエンジン車でも4モーションをオプション設定している。

パサート オールトラック

 ラフロードへの対応力では、パサート ヴァリアントからアプローチ&デパーチャーアングルを拡大。また、ティグアンやトゥアレグなどのSUVに搭載されているオフロードドライブプログラムを乗用系車種に初めて投入しており、これによってヒルディセント機能やエレクトロディファレンシャルロック(EDS)の素早い作動などが得られ、下り坂や泥濘路などの安心感が飛躍的に高められる。

パサート オールトラック18インチのタイヤ&ホイールもオプション設定
パサート オールトラックのインテリア灰皿カバーに「ALLTRACK」のロゴが入る

 

2012年4月から予約の受け付けをスタート!

ジャパンプレミアでも注目点多数!
 ついに日本のファンの前に姿を現すことになった「ザ・ビートル」だが、このタイミングに合わせて車両価格や主要諸元といったデータが公開された。

ザ・ビートル主要諸元
仕様2ドア、右ハンドル、1.2リッターTSIエンジン+7速DSG
車両型式DBA-16CBZ
全長×全幅×全高4,270×1,815×1,495mm
エンジン1.2リッター直列4気筒SOHC インタークーラー付ターボ
最高出力77kW(105PS)/5,000 rpm
最大トルク175Nm(17.8kgm)/1,500-4,100rpm
10・15モード燃費17.2km/L
車両重量1,280kg(電動パノラマスライディングルーフ装着車は1,310kg)
ボディカラー全6色
キャンディホワイト、トルネードレッド
サターンイエロー、デニムブルー
ディープブラックパールエフェクト
リフレックスシルバーメタリック

 注目の車両価格は、ザ・ビートル デザインのファブリック仕様が250万円、ザ・ビートル デザインのレザーパッケージ仕様が303万円となっており、レザーパッケージ仕様車は2012年の4月以降、全国のフォルクスワーゲン正規ディーラーでの予約を受け付けると発表された。ファブリック仕様の導入開始については追ってアナウンスするとのこと。

 ザ・ビートルについては過去のイベントレポートなどで紹介されているが、今回の東京モーターショーでは2台の通常版に加え、ザ・ビートルを使ったコンセプトモデル「ザ・ビートル フェンダー」が展示されている。

ザ・ビートル フェンダーの外装色はピアノブラック2本出しのエキゾーストパイプはクローム仕上げ
ギターを連想させるダッシュパネルバックドアにフェンダーのロゴが入る

 フェンダーギターの名器「テレキャスター」をモチーフとしたブラックの外観に加え、内装では2色のウッドパネルでダッシュボードを彩り、ラゲッジスペースの右脇には真空管アンプ(400W/10ch)まで備えるこだわりの1台となっている。

ラゲッジスペースの右脇には真空管アンプを設置!
ボディカラーはトルネードレッドボディカラーはキャンディホワイト
レザーパッケージ仕様車はバイキセノンヘッドライトを標準装備ザ・ビートルのタイヤ
ザ・ビートルのインテリア
パワートレーンは1.2LのTSIエンジン+7速DSG
リアシートは5:5の分割可倒式

 全般的に先進性やクリーンなイメージで統一されていたフォルクスワーゲンブースの中で、部分的にファニーな空間演出を施された一角に展示されていたのが「ニューブリー」。かつて同社が出展した「マイクロバス コンセプト」からぐっと小ぶりになったボディサイズは日本市場とのマッチングもよさそうで、ターンテーブルの上で回転するニューブリーに、多くの来場者が足を止めていた。

コンセプトカーのニューブリーディスプレイコントローラーとしてiPadを使用する

 EVとして生まれ変わったブリー(マイクロバス)は、最大容量40kWhというリチウムイオン電池を載せ、1回の充電で300kmの航続距離を獲得している。また、EVでありながら、ガソリンエンジンなどの既存のシステムにコンバート可能な設計になっている点もユニークと言えるだろう。

ニューブリーのインテリア
前後ベンチシートで6人乗り仕様となる

 「クロストゥーラン」は人気モデルである「トゥーラン」(日本市場では「ゴルフ トゥーラン」)の派生車種。力強いホイールアーチやバンパーなどの黒い樹脂プロテクターを備え、ホイールは16インチから17インチにサイズアップ。悪路走行用に強化されたサスペンションによって車高と最低地上高がともに10mm高められた本格派だが、日本ではその人気から現在でもゴルフトゥーランがバックオーダーを抱え続ける状況で、売りたくても導入できない事情があるのだという。

クロストゥーラン
クロストゥーランのインテリア

 また、フォルクスワーゲンの資料には掲載されていなかったが、「パサートCC」の後継車種となる「CC」も日本初公開となった。メカニカルコンポーネントはパサートCCから継承するものの、内外装は大幅に一新。日本での発売は2012年の下半期になる予定だ。

CC
CCのインテリアCCのタイヤ
ブース内にはフェイスリフトしたばかりのティグアンや発売されて間もないゴルフ カブリオレも展示されていた

 このほか、東展示棟1階のブース以外でも、西展示棟4階の「SMART MOBILITY CITY 2011」に隣接する特設ブースで、1人乗りEVの「ニルス」を展示。多方面から自動車社会の将来像を模索しているフォルクスワーゲンの企業姿勢をうかがわせていた。

西展示棟4階の特設ブースコンセプトカーのニルス
4輪にサイクルフェンダーを装着

(佐久間 秀)
2011年 12月 1日