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NDロードスターのワンメイクレース「グローバル MX-5 カップ ジャパン」の参戦マシン試乗会レポート

「トップドライバーを夢見るドライバーにステップアップの機会を与えたい」と山本修弘アンバサダー

2016年8月25日 開催

 来シーズンから国内の主要サーキットでシリーズ戦が開催される「GLOBAL MX-5 CUP JAPAN(グローバル MX-5 カップ ジャパン)」。グローバル MX-5 カップとは、2016年からアメリカでシリーズ戦が開始されたNDロードスターのワンメイクレース。来シーズンから国内で開始されるグローバル MX-5 カップ ジャパンは、アメリカとまったく同じ車両とルールによって戦うことになり、その名のとおりグローバルで戦われるレースシリーズになる。

 アメリカではNCロードスター時代の2006年よりMX-5 カップがスタートしていて、多くのジェントルマンドライバーやトッププロを目指す若手ドライバーが参戦する人気のレースカテゴリーとして育ってきた。北米マツダがサポートする育成プログラムとなる「ラダーシステム」の第一歩がこのMX-5 カップになる。シリーズチャンピオンや上位入賞者には上位クラスへの参戦権が与えられ、ステップアップを希望するドライバーは、結果を残すことでトッププロを目指せる。スポーツカー選手権のカテゴリーではIMSA(国際モータースポーツ協会)に参戦しているプロトタイプカーや、フォーミュラではスターマツダやインディライツの参戦資格が上位カテゴリーとなり、このシリーズで活躍するドライバーはMX-5 カップ出身者も多い。

 マツダは、アメリカのグラスルーツのレースで圧倒的な支持を受けている。若手を育成して上位カテゴリーへステップアップさせる道筋を確立しているのが理由の1つといえる。アメリカでの成功例を日本でも展開しようとするのがグローバル MX-5 カップ ジャパンで、シリーズの上位入賞者にはアメリカで開催される世界一決定戦への出場権が付与されることが発表されている。

長年ロードスターの主査を務めてきた山本修弘氏。7月からアンバサダーという立場でロードスターの魅力を伝えていくことになった

 そして、8月25日には来年の参戦を検討しているドライバーやマシンの購入希望者に向けた試乗会が筑波サーキットで開催された。現場を訪れたロードスターアンバサダーの山本修弘氏は、「アメリカではMX-5 カップによって『ラダーシステム』が確立されました。日本でもトップドライバーを夢見る若手や、速さはあるけどチャンスに恵まれなかった可能性のあるドライバーにステップアップの機会を与えたいと思っています。また、ベテランドライバーでも戦いがいのあるレースシリーズとして展開していきたいです」と、シリーズの意図を語っていた。

 MX-5 カップで活躍し、ラダーシステムによって現在ではIMSAのプロトタイプカーをドライブするトム・ロング選手は「アメリカで今年からスタートしたグローバル MX-5 カップは、毎戦40台以上のエントリーがあり、カップカーはすでに100台の注文を受けています。これまでのMX-5 カップ以上に盛り上がっています。車両のテストを以前から担当してきましたが、耐久性と品質という点を重視してさまざまなドライバーが満足できる仕様に仕上げてきました」と、北米で盛り上がっているシリーズとマシンの特徴についてコメントしている。

グローバル MX-5 カップ ジャパン参戦車両の試乗会が筑波サーキットで開催された
トム・ロング選手は、MX-5 カップで好成績を残すことでステップアップしたドライバー。現在はIMSAのプロトタイプカーのステアリングを握るほか、グローバル MX-5 カップ マシンのテストも行なっている
今年の9月にひと足先に開催されるグローバル MX-5 カップ世界戦には、日本代表として堤優威選手と北平絵奈美選手の両名がエントリーする

 試乗用に用意されたマシンは2017年モデルのMX-5 カップカーで、今年からアメリカで開催されているグローバル MX-5 カップのマシンからアップデートを受けている。試乗会は2時間の枠が設けられていて、参戦を希望する14名のドライバーがステアリングを握った。各ドライバーに割り振られた時間は15分で、筑波サーキットを5周ほど走ることになった。

2017年仕様へとアップデートされたグローバル MX-5 カップのマシン。ベース車両は北米仕様の2.0リッターの左ハンドルで、専用のロールケージやサスペンション、タイヤ、ホイール、ブレーキなどが装備される。レギュレーションによりエンジンとトランスミッション、ECUは封印。厳格なイコールコンディションが整えられていて、車両側で変更できるのはシートやハーネスぐらい。調整可能な箇所はサスペンションで、車高や2wayの減衰力、アライメントがセッティング要素となる。価格は788万4000円
タイヤはBF Goodrichのスリックを履く。ホイールはレイズがグローバル MX- 5カップ専用モデルを供給する。専用のインセットと「MAZDA MX-5 GLOBAL CUP」のマシニングが特徴。ブレーキキャリパーは北米ではオプション品となるブレンボ。パッドはPAGID製
2017年仕様のアップデートとして強化品のエンジンマウント、ミッションマウント、デフマウントを装備している。トランスミッションも強化モデルを装備している

 スーパー耐久シリーズに参戦している井尻薫選手は、「クルマはしっかりと作り上げたレースカーという印象ですね。エンジンは2.0リッターのノーマルということで一緒に走ったNCロードスターとほぼ同等。耐久性を意識してか少しパワーを絞っている感じも受けました。ただ、パワーの出し方は自然で、レブリミットまでしっかりと回ります。タイヤは絶対的なグリップは高くないですが、コントロール性が高く、はっきりとグリップ感が分かります。決勝レースが45分ということで耐久性を高めているのでしょう」と述べたほか、参加していたほかのドライバーに聞くと「タイヤのグリップレベルは高くないですが、耐久性を高めるためという狙いが分かります。コストも抑えることができるのでよいと思います。マシンについては、アンダーとオーバーを自由に出せるのでドライバーの腕の勝負になるはずです。セッティングを詰めていけばかなり速くなると思うのと、ベストなセッティングを見つけるのが勝負の分かれ目になるでしょう」とレースカーのイメージを語っていた。

スーパー耐久に参戦しているデミオ ディーゼルのステアリングを握る井尻薫選手。レース参戦のほかにも自動車メーカーのドライビングアドバイザーなどで活躍している

 レースカーの試乗会とともに、すでに2017年の概要も発表されている。来シーズンは、富士スピードウェイや鈴鹿、もてぎ、岡山国際、菅生の5戦が予定されていて、スケジュールの詳細は2017年の東京オートサロンで公開される。初年度の賞金総額は500万円。また、初年度に年間エントリーした場合にはボーナスとして25万円を用意。年間の上位ランキングドライバーは、米国・ラグナセカで開催される世界戦への招待も発表されている。

 このように、グラスルーツのレースを大切にするマツダが協賛する新たなレースカテゴリー「グローバル MX-5 カップ ジャパン」。多くのエントラントが集まることを期待したい。

試乗会はひと枠15分間で実施された。NCのレースカーが先導し、その後方をグローバル MX-5 カップカーが走行する。ドライバーのスキルにもよるが、1分6秒~10秒程度で周回していた
ドライバーの技量の差が全面に出るようなレギュレーションを採用。決勝レースは45分で、サスペンション以外はほぼ触れるところがない
2017年シーズンは計5戦が予定されていて、年間の賞金総額は500万円。初年度の年間エントリー者にはボーナス賞金も用意される
マシンや補修パーツの販売はキャロッセが担当する