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DeNAとヤマト運輸、次世代物流サービス「ロボネコヤマト」の実用実験を藤沢市でスタート

将来的に自動運転技術での配送サービス導入も想定

2017年4月17日~2018年3月31日 実験実施

自動運転社会を見据えた次世代プロジェクト「ロボネコヤマト」が藤沢の対象地域で実用実験を4月17日(月)より開始!
左から株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業部長 中島宏氏、藤沢市商店会連合会 理事長 齋藤光久氏、衆議院議員 星野つよし氏、国土交通大臣政務官 兼内閣府大臣政務官 根本幸典氏、内閣府副大臣 松本洋平氏、神奈川県知事 黒岩祐次氏、藤沢市長 鈴木恒夫氏、ヤマト運輸株式会社 常務執行役員 阿波誠一氏

 DeNA(ディー・エヌ・エー)とヤマト運輸は、国家戦略特区となっている神奈川県藤沢市の鵠沼海岸、辻堂東海岸、本鵠沼の各エリアを対象に“新しい受け取り方”を検証し、自動運転の技術を活用した次世代物流サービス「ロボネコヤマト」プロジェクトの実用実験を開始すると発表し、同日に藤沢市で記者発表会を開催した。

 この実用実験は4月17日~2018年3月31日の期間に、自動運転社会を見据えた次世代物流サービスの実現を目指す同プロジェクトで「ロボネコデリバリー」「ロボネコストア」の2つのサービスを実施。

 オンデマンド配送サービスの「ロボネコデリバリー」では、宅急便の荷物を「欲しいとき」に「欲しい場所」で受け取ることが可能。対象者は対象地域に住んでいるクロネコメンバーズ加入者となる。利用料金は無料。買物代行サービスの「ロボネコストア」では、対象地域の商店の商品をまとめて購入し、「欲しいとき」に「欲しい場所」で受け取れる。対象者は配送先が対象地域内であれば誰でも利用可能。利用料金は購入が3000円/1回以上の場合は無料、3000円未満/1回の場合は商品代金に加えて324円/件が必要となる。サービス開始時点で加盟店の24店舗が参加表明している。

日産自動車の商用EV(電気自動車)「e-NV200」をベースに、「ロボネコヤマト」専用カラーに装飾された配送用車両。現時点では自動運転は導入せず、ドライバーが指定された場所まで運転して配送する
愛らしい「ロボネコヤマト」のロゴとキャラクター。フロントノーズのオーナメントもメタル調の「ロボネコヤマト」に変更
配達された荷物はリアハッチからではなく、助手席側のスライドドアを開けて受け取るスタイル
荷物の受け取りは基本的に無人化されており、受取人が自分でスライドドアを開けて車内に設置されている宅配ボックスから受け取る
保管ボックスを開錠するタッチパネルディスプレイ
保管ボックスの開錠は事前に送付されたメールに表示されているバーコードを車両備え付けのバーコードリーダーに読ませるか、メールに記載されている4桁の暗証番号を入力することで本人確認を行なう

屋外で受け取る場合にどのような要望があるのか掴んでいきたい

ヤマト運輸株式会社 常務執行役員 阿波誠一氏

 記者発表会でヤマト運輸 常務執行役員の阿波誠一氏は「本プロジェクトに関しましてはディー・エヌ・エー様がお持ちの最新IT技術と物流、この癒合により地域における新しい価値創造を目指したプロジェクトとして実現をしております。そして今回のキーワードになります『ラスト・ワン・マイルにおけるオンデマンド化』の可能性を両者で模索し続けてきたということでございます」。

「我々が目指すべきものといたしましては、これから藤沢市のみなさまのご協力も兼ね備えながらやっていきますけれども、まずはこのエリア内の生活者の方が、望むときに、望む場所、望む方法によって荷物が受け取れるようになる。こういった世界を目指していきたいと思います。これにより、自由な生活スタイルが実現できるのではないかと考えております」。

「そして、本実験においてはお客様に『ロボネコヤマト』の車両を活用しながら、場所と時間を約束してもらい、屋外で待ち合わせをしているような感覚で荷物を受け取れるということを体験していただければと思っております。また、この実験のポイントといたしましては、やはり屋外で受け取られる場合、どのような場所で、どのような時間帯にご要望があるのか、こういったこともしっかりと我々は掴んでいきたいと思っております」。

「また、同時にリスクも当然あると考えております。これは生活道路の導線上において受け渡しする際、安全というものについては十分に対策を練らなければならないと考え、開始時には地域のご協力がなくては成し得ないと考えております。当然ながら、安全強化のところもしっかりと備えながら対応していきたいと考えております」。

「さらに地域内での多様化するニーズに応えるためにも、宅配の進化と同時に“次世代の物流”と呼べる新しい運び方を加えたネットワークを地域に提供し続けたいと思い、まさにそれが送る人、運ぶ人、そして受け取る人のもっと自由な生活スタイルの実現に貢献できると考えております」とプロジェクトの狙いについて語った。

「ロボネコヤマト」はDeNAが持つサービス設計ノウハウとヤマト運輸の物流ネットワークを組み合わせて生まれたプロジェクト

自動運転技術については順次発展を

株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業部長 中島宏氏

 ディー・エヌ・エー 執行役員 オートモーティブ事業部長の中島宏氏は「『ロボネコデリバリー』は、ヤマト運輸様の宅急便のお荷物を、欲しい時に欲しい場所で受け取れるサービスになります。クロネコメンバーズを開きますと、実証実験のエリアにお住まいの方は自動的にロボネコデリバリーで依頼をする画面が出てきます。これを選択していただくと、受け取り場所を指定できる画面になります」。

「事前に我々のスタッフが実際にロボネコの車両が止まれて安全に荷物を受け取っていただけるだろうという場所を選定しておりますので、そのなかからどこで受け取るのかと、(道路の)どちら側で受け取るのかという所を指定していただくと、実際にその日のその時間帯に10分単位で受け取る時間を選択していただけます。実際に配送車両が到着すると、荷物受け取りの際に暗証番号を入れていただくか、バーコードを掲げていただいて認証することで自分宛の荷物が入っているボックスが開けられるようになります。そこから荷物を取り出していただいて、自分でドアを閉めていただくという流れで実際のサービスを体験いただけるという形になります」。

「ロボネコデリバリー」のサービス内容

「『ロボネコストア』は、いつものお店の商品を欲しいときに欲しい場所でお受け取りいただける、お買い物代行のサービスになります。こちらも5つのステップで受け取ることができるというサービスになりますが、ロボネコデリバリーと同じ流れで荷物を受け取っていただけますので、実際にサービスを使っていただける方々にはストレスなくなじんで頂けるんじゃないかなと思っております。ロボネコストアのサイトにアクセスいただくと、加盟店の商品がズラッと並び、カートに入れて購入手続きまで済ませられます。すでに加盟店の方々は、食品スーパー、ドラッグストア、地域の商店、飲食店など24件の加盟店の参加表明をいただいております。4月17日からのスタートの際には12の加盟店の方に出店いただいた状態でスタートして、順次この加盟店の数を拡大していくという予定で進めております」と2つのサービスの詳細について説明。

「ロボネコストア」のサービス内容

 さらに中島氏は未来に向けた展望として「今回の取り組みに関しましては、自動運転技術とそれを活用したサービス、その双方の発展と実現というところを目指しておりますが、解決していく課題に関すると、昨今の社会課題にあります人手不足ですとか、多様化するニーズにどう応えていくのかという形のなかで、新しいテクノロジーは必須であろうという所が我々の考え方でして、こういったテクノロジーを活用して課題解決に向かっていくということです」。

「実際に運輸業界の業務を担っていただくドライバーの方は、異常に高いスキルが必要です。とくに重い荷物を素早く運ぶというような体力面、そしてセールススキルを含めたコミュニケーションスキル、加えて安全な運転技術も高いものが要求されるという、これらを満たしていないと担えないというところでございます。今回のロボネコのような取り組みを通じまして、より広い対象の方にこういった業務を担っていただけるのではないか、雇用の拡大をサポートできるのではないかという可能性を感じております。従って運転技術は順次、運転支援技術から自動運転技術という形で発展していくと、この運転技術の部分もカバー範囲が広くなっていくのではないかということを想定しております」と期待を込めて語った。

「ロボネコデリバリー」は、クロネコメンバーズの配送選択画面で「ロボネコオプション」を選択。「ロボネコストア」はECサイトでロボネコストア内の商品を注文し、配送希望の時間枠と受け取り場所を指定。到着の3分前にもうすぐ到着することが登録した電話番号に連絡される
内閣府副大臣 松本洋平氏

 内閣府副大臣の松本洋平氏は、国家戦略特区の担当副大臣も務めており、「政府は一昨年の日本再興戦略におきまして、特区で完全自動走行“レベル4”を見据えた臨床実験を行なうことを決定をいたしました。これを受けまして国家戦略特区では昨年来、各地で自動走行の実証を重ねて参りました。とくに2016年の2月には、藤沢市、そしてディー・エヌ・エー等のご協力のもと、ここ藤沢市の公道で全国で初めて買い物客が乗車をする住民参加型の実証を行なっています」。

「他方で、こうした実証には特区ですら煩雑な手続きや事前規制が伴います。このため、これらを抜本的に見直すサンドボックスを盛り込んだ改正特区法案を本国会に提出している所であります。本日発表されました『ロボネコヤマト』プロジェクトにつきましても、自動走行社会を見据えた新しい宅配サービスの実証とお聞きしております。具体的には受取人が指定した日時、場所に来た車両に直接出向いて荷物を受け取ることで、ドライバーの負担軽減に資するものと聞いております」。

「今後、自動運転技術等が活用されるとも聞いており、こうしたIT技術と物流サービスとを組み合わせたわが国の最先端の第4次産業に繋がるものと考えております。また、こうした新しい取り組みを進めていくためには、地域のみなさま方のご協力、ご理解というものが必要不可欠と考えております。引き続きまして、神奈川県や藤沢市、ディー・エヌ・エー、ヤマト運輸のみなさまともしっかりとタッグを組みまして、必要な規制、制度改革の実現等を通じて強力にバックアップして参りたいと考えております」と挨拶した。

国土交通大臣政務官 兼内閣府大臣政務官 根本幸典氏

 また、国土交通大臣政務官 兼内閣府大臣政務官の根本幸典氏は、「本年を生産性革命前進の年と位置づけ、小さなインプットでできるだけ多くのアウトプットを生み出す、物流生産性革命のさらなる推進を図って参ります。物流生産性の観点からは、さまざまなライフスタイルにおいて荷物の受け取り手法を多様化させ、合わせて再配達を抑制することは大変重要な課題であります。自動運転の社会実装を見据えた新しい受け取り方を検証するため、利用者が、望むときに望む場所で荷物を受け取れるオンデマンド配送サービス『ロボネコデリバリー』と、地元の商店の商品をインターネット上でまとめて購入し、運んでもらえる『ロボネコストア』の2つのサービスについて、実用実験に取り組まれることは大変有意義であると考えております」とコメントした。

衆議院議員 星野つよし氏

 地元選出の衆議院議員である星野つよし氏は、「自動運転技術には政府のなかで、また与党のなかで取り組ませていただいている問題でありまして、政府が今進めているサンドボックスの先人を切っているのが、神奈川県の藤沢市という自負もございます。この『ロボネコヤマト』も市民の方に多く利用をしてもらえる。そのなかで課題も出てくると思いますので、本当の意味での本番に向けて実験、経験を積んでもらいたいと思います」と祝辞を述べた。

神奈川県知事 黒岩祐次氏

 神奈川県知事の黒岩祐次氏は「最近、ニュースなどで自動運転システムの話題をたくさん見ます。しかし、この分野において神奈川、そして藤沢はこれまで圧倒的な勢いでリードしてきたという自負があります。特区を活用して縦貫道路の高速道路を使って初めての自動運転システムの実証実験をやって、そのクルマに私自身も乗りました。それがわずか3年前のことであります。今回、この宅配といったことのなかで、『ロボネコヤマト』のプロジェクトがスタートするといったこと。連日ニュースで人手不足によって宅配業界がどうなるのかといったことが報じられ、みなさまが不安に思っているときに、まさにタイムリーに、この自動運転システムとの合体ということをみなさんにご提示できることになった。つまり国家戦略特区は、新しい時代を作るという使命があるんだと、これを我々は最大限に活用していくと、そんな自負を改めて思う所であります」と力強くコメントした。