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“そうかえん”こと「平成29年度富士総合火力演習」レポート

2017年8月24日~27日 実施

平成29年度富士総合火力演習に登場した「水陸両用車(AAV)」

 陸上自衛隊は8月24日、東富士演習場(静岡県御殿場市)畑岡地区において、「平成29年度富士総合火力演習」を実施。関係者や報道陣などに公開した。この日は学校予行と呼ばれる演習で、一日空けた8月26日に教育演習、8月27日に本番となる公開演習のスケジュールで行なわれる。

富士総合火力演習が実施される東富士演習場。例年、早朝は富士山が見えるが演習開始時刻には雲に隠れてしまうことが多い。さて、今年は?

 公開演習となる8月27日の10時~12時には、「FRESH!」「ニコニコ生放送」「スカパー!」「ひかりTV」などによるライブ配信が予定されている。「FRESH!」および「ニコニコ生放送」では、9時30分頃から広報映像の配信も行なわれる。

 富士総合火力演習は昭和36年から実施されている陸上自衛隊における国内最大規模となる演習。昭和41年からは陸上自衛隊の広報活動の一環および日ごろの訓練の成果を披露すべく、一般にも公開されており「総火演(そうかえん)」の略称で知られる。

 この演習では普段はなかなか見ることができない戦車や自走砲といった車両、ヘリコプターなどによる実弾射撃を間近で体感できるとあって、人気が非常に高いことでも知られている。見学には事前の申し込みが必要となっており、昨年までは往復はがきによる申し込みも受け付けていたが、今年はインターネットのみとなった。競争倍率は平成25年度が約20倍、平成26年度が約24倍、平成27年度が約29倍、平成28年度が約29倍、そして今年は応募総数15万361通で約29倍と、例年と変わらぬプラチナチケットとなった。

 平成29年度の総火演には富士教導団をはじめ航空自衛隊など人員約2400名、戦車・装甲車約80両、各種火砲約60門、航空機約20機、その他車両約700両と多くの部隊が参加。実施されるプログラムは例年通り、陸上自衛隊の主要装備品を紹介する前段演習、「島嶼(しょ)部に対する攻撃への対応」をシミュレーションした後段演習の2部構成。開始前と終了後には富士学校音楽隊などによる演奏が行なわれたほか、終了後には参加した車両を間近で見学できる装備品展示も行なわれた。

「16式機動戦闘車(MCV)」「水陸両用車(AAV)」の機動展示も行われた前段演習

演習の説明や陸上自衛隊の広報ビデオ、実弾演習できない車両の映像などの表示用に大型ビジョンを用意

 10時から行われた前段演習では遠距離(特科火力)、中距離(迫撃砲、誘導弾)、近距離(対人障害、普通科火力)とレンジが異なる3タイプの装備を紹介するところからスタート。異なる火力を用いて富士山方向に設けられた目標地域へと攻撃を加えていく。続いてヘリ火力、対空火力、戦車火力と、見た目にも迫力のある主要装備が、実弾射撃を交えながら次々に登場する。中でもやはり注目となるのは74式、90式、10式の3世代の各戦車による迫力ある射撃シーンや、履帯ならではの機動力を活かした急旋回急加速といったシーン。

 今年はさらに本年度以降新編される即応機動連隊を中心に配備される予定となっている「16式機動戦闘車(MCV)」、水陸移動団に配備予定の「水陸両用車(AAV)」の機動展示も行われた。また、約1時間に及ぶ前段演習の最後には空挺部隊による自由降下も実施された。

99式自走155mmりゅう弾砲
203mm自走りゅう弾砲
牽引による運搬だけでなく短距離の自走も可能な155mmりゅう弾砲 FH70
炸裂した火炎を使って富士山を描くお馴染みのシーン。異なる火力による時間差まで計算して射撃する必要があり高い技量を要する
81mm迫撃砲 L16を積んだカーゴを牽引する73式小型トラック
高機動車により牽引される120mm迫撃砲 RT
120mm迫撃砲 RTの発射シーン
高機動車に搭載される中距離多目的誘導弾
96式多目的誘導弾の発射機を搭載する高機動車
96式装輪装甲車
12.7mm重機関銃または96式40mm自動てき弾銃を搭載
乗員が01式軽対戦車誘導弾を発射
後部には乗員の搭乗スペースがある
89式装甲戦闘車
スバルがライセンス生産するAH-1S
同じくAH-64D
87式自走高射機関砲
74式戦車
90式戦車
ドーザーを装備した90式戦車
高い機動力を持つ
発射シーン
10式戦車
16式機動戦闘車(MCV)
水陸両用車(AAV)
空挺部隊による降下

「島嶼部に対する攻撃への対応」シナリオに沿った後段演習

 休憩を挟んで行われる後段演習では、ここ数年のテーマとなっている「島嶼(しょ)部に対する攻撃への対応」シナリオに沿って展開していく。陸上自衛隊だけに留まらず海上および航空自衛隊との連携により「部隊配置」「機動展開」「奪回」と3段階のフェーズで進行する。

 シナリオでは、まず洋上や島嶼部に展開した部隊への攻撃などからなる部隊配置からはじまる。続いて先遣部隊による機動展開および兵站支援など機動展開を実施。最終段階となる奪回では偵察部隊による偵察からはじまり、支援射撃、地雷などの障害処理、対空援護、戦車部隊での攻撃と、それぞれの部隊が連携して作戦が遂行されていく。前段演習と異なり次々と作戦が進んでいく密度の高い内容となっており、40分の予定時間は息つく暇もなくあっと言う間に過ぎてしまうことになる。

後段演習では島嶼(しょ)部に対する攻撃への対応シナリオを実施
中距離多目的誘導弾による艦艇および陸上部隊への攻撃
F-2戦闘機が支援。雲が低かったものの例年より低高度を飛行したためか姿を確認することができた
爆撃のイメージ
観測ヘリコプターOH-6Dによる偵察
多用途ヘリコプターUH-1J
UH-1Jが偵察部隊を輸送
オートバイによる偵察部隊
多用途ヘリコプターUH-60JAと輸送ヘリコプターCH-47JAが人員を輸送
AH-64Dが部隊を援護
CH-47JAは高機動車も搭載可能
コンパクトなボディで高い機動力を持った87式偵察警戒車
戦車火力が上陸部隊に直接攻撃を行ない島嶼部を奪回
煙幕とともに全部隊が突入し総火演のフィナーレ
演習前後および演習間に行われる会場整備では多彩な車両が活躍