陸上自衛隊、「平成23年度 富士総合火力演習」を開催
年に1度の陸自実弾演習一般公開

90式戦車の実弾射撃

2011年8月28日開催
東富士演習場



 陸上自衛隊は8月28日、「平成23年度 富士総合火力演習」を開催した。総合火力演習とは陸上自衛隊(以下陸自)における日頃の訓練成果を広く国民一般にアピールするため、1961年から毎年開催されている公開演習。演習では陸自が所有する戦闘車両や航空機などが多数登場し、実弾による射撃や戦闘機動などが披露される。会場は静岡県御殿場市にある東富士演習場畑岡地区だ。

 毎年同時期に開催されるこの演習はもちろん一般の人に公開することが趣旨であるため、毎年6月頃(今年は6月1日~7月1日まで募集されていた)に行なわれる見学者募集に応募し、抽選に当たれば誰でも見学することができる。ただし、最近ではかなりの人数が募集に殺到するため、なかなか当選するのは難しいのが実情だ。

 Car Watchは、28日の本番に先駆けて27日に実施された予行演習、及び基本的に一般には非公開となる夜間演習の模様を取材できたのでその様子をレポートしたい。

演習内容
 昼間の演習は「前段演習」と「後段演習」に分けて実施された。午前10時10分から11時15分まで実施された前段演習では、主に陸自の主要装備品を紹介する内容となっており、次々とヘリコプターや車両が登場し、その任務を紹介しながら実弾射撃演習を行なっていく。

演習場の様子。黄色い煙があるところが三段山、白い煙があるところが二段山と呼ばれ、主に長距離砲の着弾地点になっていた演習開始前には来場者が全員起立し、東日本大震災における犠牲者の方々に向け黙祷が捧げられた

 後段演習は15分の休憩を挟み、11時30分から12時までの30分間実施された。これは想定されたシナリオに沿って演習するもので、敵部隊が演習地点に向かって侵攻してくるという想定の下、観測ヘリや無人機などによる敵情偵察から、戦闘ヘリの支援を受けながらのヘリボーン作戦の様子、陸上部隊による偵察、野戦砲による遠距離射撃、普通化(歩兵部隊)による攻撃の様子や、戦車部隊による敵陣への突撃の様子などが披露された。

 会場では、普段なかなか体験することができない、砲撃の音と衝撃を体で感じることができ、戦車などの砲撃で地面が揺れるたびに観客が歓声(悲鳴?)を上げていた。

99式155mm自走りゅう弾砲。りゅう弾砲は主に戦場の後方から長距離砲撃を行ない、味方を支援する203mm自走りゅう弾砲155mmりゅう弾砲 FH70。通常は車両によって牽引されて移動するがスバルの水平対向エンジンを搭載しており短距離であれば自走も可能とのこと。ただしやはり速度は遅い
上記のりゅう弾砲を装備した特科隊(砲兵部隊)による実弾射撃。空中で炸裂するりゅう弾りゅう弾が爆発するタイミングをずらし、富士山をイメージした形に。もはや職人芸だ
92式地雷原処理車92式地雷原処理車による射撃
発射された弾頭からロープに繋がれた爆薬が進路上に展開ロープに繋がれた爆薬を爆破することで地雷原の地雷を誘爆させ道を作っていく
82式指揮通信車。開発は小松製作所高機動車(96式多目的誘導弾発射機を搭載)。車体の開発はトヨタ自動車軽装甲機動車。開発は防衛庁技術研究本部(当時)、小松製作所が生産を担当
87式偵察警戒車。開発は小松製作所96式装輪装甲車。開発は小松製作所89式装甲戦闘車。開発は三菱重工業
CH-47で空輸されてきた高機動車。本当にぎりぎりのスペースで搭載されていることが分かる
90式戦車。陸自の国産主力戦車。車体及び砲塔は三菱重工業が開発を担当した走行しながらでも安定した射撃ができる
74式戦車。同じくこちらも国産主力戦車。三菱重工業が開発を担当地形に合わせて車体の角度を変えられるのが最大の特徴演習の最後はド派手な煙幕で〆
煙幕と共に航空部隊と地上部隊が一気に会場に押し寄せて終了となる演習終了後に「がんばろう東北」の旗を掲げて登場した74式戦車

 同日19時30分から開始された夜間演習では、始めに各種夜間戦闘用の暗視装置などの紹介が行なわれた後、照明弾による射撃や、暗視装置を使った射撃などが約30分間にわたり行なわれた。演習場は当然ながら近くに市街地などが無いので、照明が無くなると光源は星明かりのみ。そんな中、暗闇に吸い込まれるように飛び、跳弾して花火のようにはじける曳光弾に歓声が上がっていた。

74式戦車に搭載された投光器によって夜間の射撃目標を照らし出す照明弾によって演習場が一気に明るくなる特科隊による夜間遠距離射撃
90式戦車による夜間射撃89式装甲戦闘車による夜間射撃

演習後は装備品展示

 昼間演習が終了すると、13時から13時45分までの間、演習に登場した装備品の展示も行なわれた。航空機など一部の展示を除き、ほとんどの車両には立ち入り禁止のロープなどは無く、間近で車両を見学することができる。

13時から開始された装備品展示の様子10式戦車はやはり人気
軽装甲機動車87式偵察警戒車96式装輪装甲車
89式装甲戦闘車92式地雷原処理車施設作業車。パワーショベルとブルドーザーの機能を一体化した車両
施設作業車後方81式自走架柱橋河川に橋を架けることができる車両。災害派遣などでも利用されるという
本番前には多数の重機が出てきて会場の地ならしを念入りに行なっていた

10式戦車を展示

 昨年に引き続き陸自の主力戦車「10式戦車」の試作車が展示され、注目を浴びていた。10式戦車は90式戦車で問題になっていた重量を軽減し、小型化した新型戦車。90式戦車の約50tに対して44tへと軽量化されながら、火力、機動力、防護力については向上しているとされている。なお「10式」は「ヒトマルシキ」と読むそうだ。開発は防衛省技術研究本部が、生産は三菱重工業が行なった。

その他の写真

(清宮信志)
2011年 8月 30日