インプレッション

フォルクスワーゲン「ゴルフ」「ゴルフ ヴァリアント」(2017年マイナーチェンジ)

マイナーチェンジでどこが変わった?

 フォルクスワーゲンの大黒柱「ゴルフ」(7代目)がマイナーチェンジを受けて5月25日に発表された。このマイナーチェンジはGTEを除くゴルフ全モデルに及ぶ。

 ゴルフ7のデビューは2012年11月。2013年6月には日本でも販売が開始され、この年、輸入車として初めて2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。ゴルフは常にこのクラスのベンチマークとして国内外のメーカーから注目を集めるが、そのインパクトが日本の自動車業界に与えた影響は大きい。

 ゴルフ7はプラットフォームをモジュール化し、生産効率、剛性、軽量化を図り、世界の自動車メーカーに衝撃を与えたモジュラー・トランスバース・マトリックス(MQB)を採用した最初のモデルで、以降のフォルクスワーゲン新型車はMQBコンセプトの下に開発されている。基幹車種だけに搭載エンジンは豊富で、1.2リッターターボ、1.4リッターターボ、2.0リッターターボ、それに1.8リッターターボの基本的に4種類のエンジンがあり、メインは1.2リッターと1.4リッターになる。

 今回試乗したゴルフ TSI ハイラインは1.4リッターターボに7速デュアルクラッチトランスミッション(DSG)が組み合わされ、リアサスペンションも1.2リッターモデルのトーションビームからマルチリンクとなって乗り心地、ハンドリングも味わいが変わる。

TSI ハイラインに搭載される直列4気筒DOHC 1.4リッターターボエンジンは最高出力103kW(140PS)/4500-6000rpm、最大トルク250Nm(25.5kgm)/1500-3500rpmを発生

 今回のマイナーチェンジで通称“ゴルフ7.5”になっても、ベースのプラットフォームやエンジン、トランスミッション、サスペンションに変更はない。ただ、パフォーマンスモデルのGTIやRはそれぞれ10PS、30PSとパワーアップされている。

 大きな変更点は内外装の一部と先進装備、インターフェイスで、大きく変わったのはインターフェイスだがそこは後述するとして、外見で2017年モデルと分かる箇所を見てみよう。

 まずヘッドライトがキセノンからLEDになり、Lo/Hi各ヘッドライトを囲むL字型のLEDデイライトが装備され、目つきがキリリとした。また、フロントのバンパー形状も若干変更されている。テールランプもLEDになり、特にハイラインのハッチバックには流れるように点灯するLEDターンランプが「テクノロジーパッケージ」としてオプション設定された(Rは標準設定)。フォルクスワーゲンとしては初採用の装備になる。このテクノロジーパッケージには「インテリジェント・ヘッドライト」も含まれ、対向車や先行車の位置によって自動的に照射範囲を変える予防安全システムも含まれる。

 後ろにまわるとリアバンパーの衣装変更により、テールパイプがバンパー一体型になっていた。実際に排出ガスがここから吐き出されるわけではないが、前後の細部にわたる意匠変更でゴルフの質感がかなり向上した。

 先進安全ではプリクラッシュブレーキシステムが「ティグアン」と同じシステムになり、エンブレム内蔵のレーダーセンサーによって歩行者検知機能も備えられた。もちろん全車速域で前車への追従機能を持ち、万が一の場合はブレーキをスタンバイ状態にして、自動ブレーキをかけることにより被害を軽減する。5~65km/hでは歩行者検知機能の範囲内となり、万が一の際の被害軽減を図ることができるのも大きなポイントだ。

 また、渋滞時にハンドルに手を添えていればストップ&ゴーで前車に追従するトラフィック・アシストが機能する。同じグループのアウディで先行搭載して始まった機能だが、ゴルフでもコンフォートライン以上のグレードに標準装備となった。

今回試乗した「ゴルフ TSI ハイライン」のボディサイズは4265×1800×1480mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2635mm。価格は325万9000円
エクステリアでは新デザインのフロント/リアバンパーを採用するほか、ハイラインのみ17インチアルミホイールのデザインが刷新されている(タイヤサイズは225/45 R17)
新造形のLEDヘッドライトはTSI ハイライン、GTI、Rに標準装備。TSI コンフォートラインはオプション設定となる
ゴルフ/ゴルフ ヴァリアントともにLEDのテールランプを標準装備。ゴルフ(ハッチバック)ではウインカーが流れるように光る「ダイナミックターンインジケーター」をフォルクスワーゲンとして初採用している
こちらは「ゴルフ ヴァリアント TSI ハイライン」(339万9000円)。ボディサイズは4575×1800×1485mm(全長×全幅×全高)と従来どおり。ボディカラーはピュアホワイト
ゴルフ LEDヘッドライトの点灯シーン(21秒)
ゴルフ LEDテールランプの点灯シーン(20秒)

 インテリアについて、ハイラインではシート生地がマイクロフリースになっているが、最も大きな違いはオプションとなる純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」だ。ディスプレイが従来の8インチから9.2インチとなり、得られる情報も広範囲に広がっている。

 操作系がスッキリしたので最初はスイッチを捜して戸惑ったが、すぐに使いやすいことが分かった。オーディオは画面の上をジェスチャーで左右にスワイプすると曲や放送局を変えることができる。その他の車両情報、エコドライブ情報もここで得られる。

 さらにAndroidやiPhoneとBluetoothでつなぐことで、運転席以外からもオーディオ、カーナビ操作などができる。カーナビの場合、最終決定はドライバー側で画面から決定するが、今後につながる技術になるだろう。なお、カーナビは手慣れたゼンリンのソフトで動くため、GooglemapなどをDiscover Proに表示することはできない。

ゴルフ TSI ハイラインのインテリアでは、シート表皮を従来のアルカンターラ&ファブリックからマイクロフリースに変更
ジャスチャーコントロール機能を搭載する純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」。5月25日に発表されたスマートフォン向けアプリ「Volkswagen Media Control」に対応し、アプリ側から目的地設定などが行なえる
「Discover Pro」の画面はカーナビ表示のほか3分割での表示も可能。左側のカーナビ画面は固定で、右側に車両ステータスや走行時間、携帯電話の接続状態などを表示できる。切り替えは指で長押しして変更可能

 メータークラスターは「パサート GTE」で初採用されたフルデジタル化した12.3インチの液晶ディスプレイを備え、カーナビをはじめとしてさまざまな情報をピックアップすることができる。クッキリハッキリで非常に見やすいモニターだ。このフル液晶メーターもオプションのテクノロジーパッケージに含まれる。

フルデジタル化した12.3インチの液晶ディスプレイを備えるデジタルメータークラスター「Active info Display」

さすが世界のベンチマーク!

 さて、ゴルフ7に改めて乗ると、最初にハンドルを握った時の感慨が蘇った。ガッチリした箱に入っている安心感、オン・ザ・レール感覚で安定したハンドリング、決して柔らかくはないが節度ある快適な乗り心地。4年を経過しても少しも色褪せないのはさすが世界のベンチマーク、ゴルフだと感じ入った。

 静粛性ではハッチバックの常でロードノイズは入ってくるものの、風切り音やメカニカルノイズなどの雑音は入ってこない。高速道路から市街地、あるいは郊外路のちょっと荒れた道でも音や上下動による疲労は少ない。

 ヴァリアントもハッチバックと同レベルの静粛性を目指しているが、ラゲッジルームの空間があるだけに少しザワついた音が発生する。後席だともう少し大きく感じそうだが、このクラスでは十分に静かなワゴンだと思う。

 ハンドリングは前後のロールが抑えられた、スマートなコーナリング姿勢を見せる。決して過敏ではなく、操舵した分シットリと向きを変える感じだ。操舵力は基本的に重め。ドライブモードをスポーツにするとさらに重くなり、ガッチリした感触となる。EPS(電動パワーステアリング)の設定は自由度があるのでカスタムモードで好みの重さに設定できるが、個人的にはもう少し軽い操舵力モードがあってもよいと感じた。

「Discover Pro」の画面で走行モードの選択が行なえる。走行モードとして「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」を用意するのは従来も同様だが、新たにモードごとの背景画面が与えられた

 エンジンパフォーマンスは140PS/250Nmもあるのでお釣りがくるほど十分で、力不足を感じたことはまったくなかった。そういえば2.0リッターターボを搭載するGTIの迫力ある動力性能が感動的だったことを思い出した。

 7速DSGは、低速での変速やバックギヤに入れた時などにDSG特有のギヤの継ぎ目を感じることはあるが比較的滑らかで、速度が乗ってしまうと素早い変速に心地よさを感じる。ドライブモードをスポーツにするとアクセルレスポンスが向上し、シフトポイントも高い回転をキープするが、これらもカスタムモードで好みに応じて組み合わせることができる。

 ちなみにエコモードではアクセルのツキが鈍くなるが、日常的に不便さを感じたことはなく、ゴルフの安心、しっかり感をそのままに違和感なくドライブすることができたので、ゆったり走りたいときはエコモードもいいなと感じた次第である。試乗当日は気温が上がったものの、少なくとも30℃に届かない外気温では省エネモードになるエアコンのパワー不足を感じることはなかった。

 ゴルフのラゲッジルームは大きく、大抵のものを飲み込むことができる。ましてやヴァリアントでは広大な容量と張り出しの少ないラゲッジルームで他車にない勝手のよさも魅力。後席はどちらもレッグルームが広く、フラットで座りやすいシートだ。もちろんシートバックは分割で畳める。

 ヴァリアントの乗り心地は若干硬めに設定されているが、しっかり締まった感じで突き上げ感を伴うものではないし、ハッチバックと比較すると初めてそうかな? と思えるレベルである。

ヴァリアントのラゲッジルームのレイアウト例

 内外装の質感、それにアップデートされたインフォティテイメントシステムでブラッシュアップされたゴルフ7.5。幅のあるグレード展開で目的に応じて好みのゴルフが見つかるだろう。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:高橋 学