F1カメラマン熱田護の「気合いで撮る!」

第101回:Congratulations M4X!! レッドブルのフェルスタッペン選手のチャンピオン決定で幕を閉じたラスベガスGP。僕の今季F1取材も終了です

 ラスベガスGP、今回で2度目の開催。

 僕の個人的なことですが、このラスベガスで今期のF1取材の最終レースなんです。ですからフェルスタッペン選手のチャンピオン決定の写真を撮れたらいいなとは思っていました。

 条件として、ほぼノリス選手の前でチェッカーを受ければいいという感じ。でも現状のレッドブルのパフォーマンスを見てみると簡単でないことは多くの人が感じていたとは思いますが、まさにその通りな展開でした。

 このシーンは、レース終盤、一度は抜いたフェラーリ2台に追いつかれ抜かれていく様子です。

 ノリス選手はこのときかなり後方を走っていたので無理せずペースを維持するということであったとは思うのですが、そのパフォーマンスは他のチームの伸び代に対して去年までとは明らかに低いというのは否めないと思います。

 この調子であると来季はかなり厳しくなりそうですよね。そうならないように開発を進めているとは思うんですけど、さてどうなることでしょう。

 FP2終了直後の表情。このとき17位でした。

 まだFP2ですし、どのようなセットで出した順位かは関係ないとはいえ、17位ってのはこの時点では何かうまくいってなかったのかもしれません。

 国歌斉唱のあと、レッドブルの2人が何か話しながら歩いてきました。

 チャンピオンチームとはいえ、その勢いは過去のものとなりつつあります。盛者必衰の理をあらわす……。

 予選はフェルスタッペン選手が5位、ペレス選手が16位。ペレス選手にはいろいろな噂が出ても仕方のないほどの低調ぶり。

 レースはフェルスタッペン選手が5位、ペレス選手が10位。ノリス選手がフェルスタッペン選手の約27秒後のチェッカーで6位。

 その結果でフェルスタッペン選手のドライバーズタイトル獲得が決定しました。

 チャンピオン獲得記念撮影のあと、レッドブルでぬれたジャケットでホスピタリティーに戻る途中のフェルスタッペン選手。4年連続チャンピオンです!

 素晴らしいと思います、彼の現状のずば抜けた才能があってこその記録。

 上の写真を撮った直後、パドックで吉野さんに会いました。

 とにかく今はホッとしてますとのことでした。

 ホンダとして、チームからの要求に応えつつ(もっとパフォーマンスを上げてくれないか……とかね)、万が一でも壊れてしまってはいけない。そのプレッシャーたるや、ものすごいと思います。

 とにかく、連続チャンピオンを支えているのはホンダPUあってのことは間違いないことですからね。

 おめでとうございます!

 ともかく、チャンピオン決定のグランプリに立ち会えてよかった!

 ハースの小松代表、レース後の深夜2時半過ぎにホスピタリティーに押しかけて話をうかがいました。

 この表情を見て分かる通り、超ご機嫌でした!

 決してカレーライスが楽しみとかそういうわけではありません。でもね、このカレーライスが僕がラスベガスで食べた食事の中でぶっちぎりで1番おいしかったのは間違いないんです……まあそんなことはいいとして、ハースがどのように今回戦ったのかを小松さんのお話で復習していただけるとうれしいです。


小松代表:今回のニコの8位は、本当に超うれしい! 会心のレースって感じで達成感がものすごいあるレースでした。

 まず、前回のブラジルGPのレース後に、任せているいろんな部署がやることなすこと間違えて判断したレースをしてしまってノーポイントになってしまい、ブチ切れてしまったんです……。

 それを今回は猛反省して、200%考えてから、声のトーンまで考え、一言一言、言葉を選んで発言し、みんなに落ち着ちついて見直しをして考えてもらうように指示を出すようにしたんです。そうするとリアクションが見違えるようによくなったんですね。今回は何も破綻しなかった。それをベースに今回はレースに臨んだわけです。

 とにかくこれまで以上にチーム内でコミュニケーションをしました。ファクトリーベースの人たち、タイヤエンジニア、ストラテジスト、レースエンジニア、パフォーマンスエンジニア、ドライバーも僕も含めて、その連携が最高に完璧近くの出来栄えのコミュニケーションが取れたことがよかった。

 まず、レースが始まって10周目くらいにどんどんいろんなチームがピットに入り始めましたよね。そこを入らないということにしたことが今回の成績を得た一番の原因です。

 でも、あの状況でピットインを伸ばすのつらいでしょ! そこをチームみんなが信念を持ってピットインを伸ばせたこと、ニコが14ラップ目、ケビンが17ラップ目が1回目のピットイン。本当に難しいレースだったと思うんです。

 タイヤのグレイニングの状況も当初予想していたよりわるかったですし、ハードスタートのドライバーも16周、17周くらいで終わっているくらいですからね。

 その路面状況で対処できたのは、まさに準備の賜物ですよ。

 第2スティントはハードで残り17周くらいまで引っ張りました。本当はもっと引っ張りたかったんですけど、後ろからアロンソが来ていたので角田選手の後ろでギャップを確保してアロンソ選手の前で出したかったんですよね。アロンソ選手の直前になってしまうとプッシュしてタイヤが終わってしまうのを避けたかったんです。

 今のハースにとって見ているドライバーは、ガスリー選手、オコン選手、角田選手しかいないんです。その対応をあらかじめ準備していたことが功を奏したわけです。

 異業種ですけど、最近ラグビーのエディー・ジョーンズさんと出会って日本代表の練習を見せてもらったんです。そのときにいろんな細かいシナリオを想定して練習を繰り返していたんです。その考え方をそのままF1で使うというのとは違いますけど、頭の中にインプットしてあるといろいろな物事の対処に使えるんですよね。だから本当にいろいろなスポーツのマネージメントの仕方から、今の自分の仕事に活かせていることはすごく多いです。

 いやね、今までの8位の中で今回が1番いい内容のレース。もうチーム内の一体感が素晴らしい! 今回、トヨタの加地さんが来ていたんですけど、感激してました!

 だから、今回のレースのやり方を新しいベースラインとして今後もやるということにしました! みんなが自信を持ってレースに臨むということです。


 レース後にチームホスピタリティーの撤収作業を手伝うF1チーム代表って、他にいるんでしょうか?? 僕は見たことないですね。

 その裏のバックストレートエンドでの角田選手とヒュルケンベルグ選手の攻防をどうぞ!

 この次の周に同じ場所でヒュルケンベルグ選手が前に出ました。

 こうして、そのレースの内容を聞けるとレースがさらに興味深く知れるし面白くなる。各チーム、同じようにライバルに負けないように細かくやっているんですよね。

 この8位でハースは50ポイントを得て再び選手権6位となりました。

 7位には49ポイントでアルピーヌ、8位には46ポイントでRBです。

 この6位争いは、どう見ても面白い! ぜひあと2戦注目してみてください。その順位によって、チームへの分配金が全然違うので1つでも上にいきたいのです。翌年のチーム財政に大きく影響します。

 レースを勝ったのは、ポールからスタートしたラッセル選手。序盤に一度だけ、この場面でルクレール選手に並ばれただけで、あとは独走状態でチェッカーでした。

 表彰台はホームストレート上に出された大きな台の上で行なわれるのがラスベガス流。

 2位は予選10位からの追い上げでハミルトン選手でした。さすがのレース巧者です!

 今回はメルセデスのマシンがこのコースに合わせられたということですね。

 ノリス選手のグリッド。スタート位置の確認用のテープを貼っているんですけど……いいのかな?

 ノリス選手、今回で今年のチャンピオン獲得はなしになりました。

 マクラーレンのマシン自体のパフォーマンスが足りなかったようですね。

 ガスリー選手の予選3位ってのはびっくり! これは素晴らしい結果だと思います。でもレースでは煙を噴きながらピットインリタイアとなりました。

 水曜日の23時30分からRBのカラーリング発表。爽やかな明るい青。

 ドラパレ後にハミルトン選手と会話しながらトラックから降りてきました。

 角田選手の予選は7位獲得! レースはペレス選手を抑えて9位、2ポイント獲得。

 ラスベガスのアイコンでもあるスフィア。巨大な光る球。

 いろいろなパターンの絵柄があるんですが、7~8種類くらいかな……それが順番に現れるんです。正直、絵になるのとそうでないのがあるんですよね。

 スフィアのアップ。LEDの集合体です。

 狭い14コーナーに3台で並んで入るという……。

 昼間はコースの一部は一般車が通ります。

 コースの金属製のガードレールとコンクリートウォールとの間にある発泡スチロール。これが緩衝材になるわけですね。

 FP1が始まる前の路面には砂埃が大量にたまっている状況です。きっと、走り出しはツルツルでしょうね。

 コース脇にいるカメラマンや、マーシャルの方々はこの粉塵をまともに浴びています。ので、1日の撮影のあと、メディアセンターに帰ってウェットティッシュで顔をふくと真っ黒になります。

 コース脇にはゴミがたくさんあって、テレビで映っていたかどうかは分かりませんが、ゴミがコースに入っているのをよく見ました。

 まあ、なんと申しますか、ラスベガスというとキラキラ美しくてVIP集う場所というイメージがあると思うんですけれども、去年より明らかに路上生活者の数は増えているし、街中のゴミの量も多い。いつも行くフードコートでは白人と黒人がケンカを始める。僕がフードコートでハンバーガー(ハンバーガー&ポテト&コーヒーで5500円!)を食べているところに、余っているハンバガーをくれないかと聞いてくる路上生活者がいる、などなど……。

 僕が見た印象だと、とても夢のある場所ではなくなっている感じがします。

 まあ、高級ホテルにいればそんなことも感じないのかもしれませんが、今年はそう感じました。

 木曜日から土曜日まで毎日、ホテルの部屋に寝ていようとなんだろうと、セキュリティーのチェックがきます。ドンドンドン! とノックの音が半端ないです。

 セキュリティーのおじさんが各部屋に入ってカーテンをめくって銃などをセットしいないかをチェックして出て行きます。午前中の10時前後に来ます。

 まあ、それもラスベガスのビッグイベントのあるときの風物詩と思うしかありませんよね。

 このまま、ラスベガスGPは続くのでしょうか?

 キラキラのパドックにいたキラキラの方たち。

 パドックになぜかワンコのネームタグ屋さん! 聞くと、ワンコの名前を受付で書けばタグを作ってくれるそうです。

 もちろんお願いして作ってもらいました! 無料であります!

 うちのワンコの名前は大吉。

 なぜ2個あるかというと、尾張さんが僕にサプライズプレゼントしてくれました! うれしかった!

 本格的なすし屋さんまで! すごく食べてみたかったけど、そんな時間もなく……。

 メディアセンターのご飯。出していただけるだけありがたいのです。でも、どうしてもおいしくない。なんでこうなるのかという繰り返し。

 でも外に出て、目ん玉飛び出るような値段のご飯を食べる気もないし、時間もない。

 そこで、やっぱり持ってくるべきはこれらになるわけです。

 でもね、その絶対必要な熱湯が、ぬるい……。

 なんで、お湯くらい、熱くできないのよ! ぷんぷん!! と怒っても仕方ないので、ぬるいカップ麺を食べるのです……。

 ラスベガスといえばプレスリーさん。今年も人数は減りましたが、もちろんいましたよ!

 コラピント選手のクラッシュがありましたけど、無事に終わったラスベガスGP。木曜日、金曜日は寒かったけれど、土曜日のレースは少し気温が上がってそんなに寒くはなかったです。

 でも、夜中に行なうというスケジュールは、なかなか取材するわれわれにとっても調子が狂いますね。

 今回で僕の今年のF1取材は終了。このコラムを読んでいただいた皆さん、ありがとうございました! まだ2戦ありますので、どうかF1を楽しんでください。僕もテレビ観戦します。

 来年も開幕戦から行く予定です。

 年末にセナ選手の写真展を開催しますのでよかったら来場ください! 詳しくは、僕のXとFacebookに書きます。会場でお会いできたらうれしいです。ぜひ声がけくださいね!

熱田 護

(あつた まもる)1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1985年ヴェガ インターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。1992年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。 広告のほか、「デジタルカメラマガジン」などで作品を発表。2019年にF1取材500戦をまとめた写真集「500GP」を、2022年にF1写真集「Champion」をインプレスから発行。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツ写真協会(JSPA)会員。