日下部保雄の悠悠閑閑
プジョー「5008」
2021年7月12日 00:00
香港-北京ラリーのようなユニークで面白いラリーは当面出会えそうもないが、いつか復活することを願っている。きっと当時とは違う景色を見ることができるに違いない。
さてだいぶ前の話だが、琵琶湖までショートトリップをした。クルマはプジョー「5008」。7シーターのワゴンだ。トラベルWatchの取材でもあって相方との会話も弾みクルマも旅も楽しいものだった
プジョーと言えばフリクションのないショックアブソーバーを思い出す。5008も相変わらずしなやかだった。今も内製品を使っているのだろうか? そのフィロソフィーは生きているのを感じた。少し硬めのアシは大きな突き上げでもスッキリと収束させるのはさすがだ。
各シートの座り心地ではフロントシートは硬めだがホールド感があり、琵琶湖までの往復も疲れ知らず。セカンドシートはきちんと3座あり、互換性がありそうな平等のサイズなのがフランス車らしい。
そしてサードシート。小さくてホールド感がないのでチョイノリ程度だが、あると何かと安心だ。
プジョーの3列目で思い出すのは、多分1983年頃だと思うが英国RACラリーに遠征した時のこと。ランサーターボのエンジンが早々に死んでしまった我々は翌日SSを見に行くことになり、現地のサービススタッフが所有するプジョー505SWのお世話になった。7人が乗り込みギュウギュウだったが、僕が乗ったサードシートではヘッドクリアランスがミニマム。しかしフランス車らしいのはシートが厚くて意外と心地良かったこと。ミニバンが発達しなかった欧州ではこの3列目シートを普通に使っており、荷物が多い時は小さなトレーラーを牽引していたのもカッコよかった。
さて5008、プジョー独特の小さなハンドルはかすかな動きにも反応するので苦手なのだが、手のひらで押すようにホールドすると落ち着いた。相方を演じてくれたモデルさんにも少しアドバイスすると飲みこみの早い人ですっかり慣れて楽しそうに運転していた。市街地ではハンドル舵角が少なくて済むのも小径ハンドルのメリットの1つだ。
そしてトルクがあって燃費のよいディーゼルターボはわずかな振動感を伴ってクルージングするのがなんとも愛らしくクルマらしい。
旅の往復はACCを使ったがプジョーのそれはハンドルに隠れて手探りでスイッチを探り当てるまでが大変だった。何回かトライしているうちに指が自然と動くようになったのでなんでも慣れてしまえば楽なもんだ。
琵琶湖までの約450kmは東名から新東名を使ったが改めて感じたのは新東名のよく考えられたレイアウト。コーナーもアップダウンも少ないクルマにとって無理のない設計になっていることを改めて実感した。
例えば新東名は東名より内陸側を通っているのでトンネルが多数あるがトンネル自体が広く、照明もLEDで明るく、トンネルを掘削して出た土はサービスエリアなどの盛り土に使われている。新東名のSAやPAがおおむね高い位置にあるのは、進入では自然と速度が落ち、本線への合流では自然と加速する。これは新東名の建設中にNEXCO中日本の広報さんから受けた説明どおりだ。
遠いと思っていた琵琶湖も流れる景色や、会話を楽しんでいるうちにいつの間にか到着してしまった。大きく広がる琵琶湖が夕景に染まってゆくのはいいものだ。太平洋の荒々しい波と趣が異なり大らかで優しい。
自動車や鉄道が発達する前は水運が物流の主役。その時代の琵琶湖にはどんな船が行き交っていたんだろう。
クルマで移動できる便利な世の中、琵琶湖までノンビリと休み休みで7時間ほどだった。クルマの便利さを満喫する一方で、時間がノンビリと静かに流れていた時代を考えることがある。皆さんはそんな時ないですか?
ところで最近のモータースポーツは話題に事欠かない。勝田貴元選手のサファリ総合2位おめでとうございます! そしてお父さんの勝田範彦選手、JRCでGRヤリスでの初優勝おめでとうございます! そしてそしてレッドブル・ホンダの5連勝、素晴らしい!! 相変わらず大手メディアにはあまり取り上げられることはないが心の中では「オシ!」と叫んでいるのです。