まるも亜希子の「寄り道日和」

「フィット e:HEV」で参加したJoy耐、耐久レースはやっぱり面白い

恥ずかしながら、グリッドについて教えてもらうまでまったく気が付かなかったのですが(笑)、いつの間にかわがチームのマシン、フィット4 e:HEVに流れるウインカーがついていました! 市販車のウインカーは太くてライトを囲むようなラインなんですが、こちらは細くてなめらかなラインに光るのが新鮮です。ホンダエンジニアには、こういう遊び心が受け継がれているんだなぁと感じます

 5月だというのに真冬のような寒さのモビリティリゾートもてぎ。でも、本コースには熱い熱いチームがたくさん集まっていました。年に一度の恒例イベントとなっている、「2023もてぎEnjoy耐久レース」が開催されたんです。

 ご記憶の方もいるかもしれませんが、わがチーム「TOKYO NEXT SPEED」とホンダエンジニアのコラボによる、「フィット e:HEV」の走りを鍛えるプロジェクトは2020年からの3年計画だったので、2022年12月のミニJoy耐レースの参戦をもって、終了したはず……でした。

 ところがところが、まさかの急展開! 初年度はものすごく遅かったフィット e:HEVのマシンは、だんだんと実力をつけ、最後の最後ですごくいいマシンに仕上がって、なんとハイブリッド車のクラス1優勝だけでなく、総合でも5位入賞を果たすまでに成長! この耐久レースで培ったノウハウを市販のフィット RSに注入できたという成果もあり、このまま辞めてしまうのはもったいないという話に。

 しかも、2020年のJoy耐はコロナ禍で中止になり、2021年は途中のトラブル発生でリタイア。7時間を一度も完走していないという悔しさもあり、最後にちゃんと完走して終わろうじゃないか、ということで、泣きの1回じゃないけど(笑)、有終の美を飾るべく参戦してきました!

 マシンの進化としては、前回の7時間でトラブルが出てしまった足まわりを強化したことと、奥山LPLのお茶目な遊び心(?)で“流れるウインカー”がついていてビックリ。これがちょっとかわいくて、もしかして純正アクセサリーで売り出したら人気が出そうな予感でした。

 さて、5月13日の予選はAドライバー・橋本洋平とBドライバー・桂伸一のタイム合算でグリッドを決めるレギュレーション。でも朝から雨が降っていて、橋本の時には路面はウェットなんですが、これから乾いてくるかも……という難しいコンディションでした。タイヤの選択をどうするか? 迷いながらもなかなかの好タイムをマーク。実はフィット e:HEVはウェットのサーキットでも抜群の安定感で、慣れているドライバーなら安心して走れるマシンなんです。そしてBドライバー・桂はさすがの走りで、自己最高タイムをマークして予選を終え、52台中37番グリッドを獲得したのでした。

決勝レースのスタート前には、ポールポジションから1台ずつ、こうしてグランドスタンド前の大きなエキシビジョンに映し出されるチーム紹介があるんです。カメラがこちらを映したのを見はからって、みんなで手を振ったりジャンプしたり、大騒ぎするのも楽しいひととき。でも私は見切れてました(笑)

 今回のポールポジションを獲得したのがシビック TYPE R(先代)で、2番グリッドがGRヤリスだったんですが、その戦いもすごかった! 5月14日の9時15分にレースがスタートすると、1周目から抜きつ抜かれつ、熾烈なバトルが繰り広げられ、そこに絡むロータス・エキシージやらインテグラ TYPE Rやら、バラエティに富んだマシンたち。後方ではスタートドライバーの橋本が7台抜きをやってくれるなど、のっけから湧いたピットでした。

 そして、そこからは雨が降ったりやんだりしたせいもあって、ちょっと黄旗やSCが多いレースに。レース中の給油はパドック内のガソリンスタンドで行なうというレギュレーションもJoy耐の名物ですが、SCになるとドドどっと給油に駆け込んでくるので、大行列になってかえって時間をロスしてしまったり、ピットストップやドライバー交替の規定回数をその間に終えるように調整したりと、いつになく戦略を立てるのも難しい7時間となりました。

コースからピットインする際に給油をするための通路が作られていて、エンジン停止で手押しでガソリンスタンドまで運ぶのがJoy耐の決まり。毎年、暑い中に手押しで給油しに行くのはすごく大変なんですが、その分、お祭りの神輿担ぎみたいな感じで、チームの結束力が試されるシーンでもあります。今年は寒かったので、押す方もドライバーも体にはラクだったみたいですね

 わがチームも最初のSCの間にドライバー交替を1回済ませて得をしたと思ったら、次の給油で時間がかかってロスしてしまい、プラマイゼロという感じだったでしょうか。でも、速さと燃費のバランスのよさを活かしてジリジリと順位を上げ、3時間経過くらいから総合12位あたりをいったりきたり。完走が目標と言っていたのに、こうなってくると「せめてシングルに入りたいよね」なんて欲が出てしまいますね。

 ただ、上位の多くは先代フィットで、ラップタイムはうちより5秒くらい速くて燃費もわるくない。シビック TYPE Rは残念ながらトラブルでリタイアしてしまったのですが、GRヤリスはとんでもない速さを武器に上位に食い込んでおり、追いつくのは厳しいか? そんな状況の中、ついにわがチームは10位まで上がってきて、「あと1つ上がってくれ〜」と願うラストラップ。やっぱりドラマがありました……。

 なんとGRヤリスの燃料が尽きたか、コース上でストップ! ほかにもガス欠で止まってしまったマシンがあり、正式結果としてはわがチームは7位に! トラブルなく7時間を初完走しただけでも嬉しいのに、総合でシングルに入るという結果はチームみんなの大きな自信にもつながったと思います。これで心おきなく、次のチャレンジに進める……かな?(笑)

 ひとまずは、エンジニアの皆さんが今ごろ予選と決勝レースのデータ解析を行なってくれていると思うので、みんなでJoy耐の振り返りをしつつ、盛大に打ち上げでもしたいなぁと思っています。それも含めて、耐久レースはやっぱり面白いですね。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。