まるも亜希子の「寄り道日和」

「XC90」に見るボルボのフラグシップの「今」

ボルボを代表するモデルとして位置付けられているXC90。最新EVと共通するモチーフが多く取り入れられ、モダンで優雅なデザインに刷新されました

 日本導入から9年目を迎えてもなお、日本のみならず世界で堅調に売れ続けているという、ボルボXC90が大幅改良を受け、試乗する機会をいただきました。マイルドハイブリッドとPHEVがあり、今回ドライブしたのはPHEV。大きな変更点はデザインやインターフェースが主なところなのですが、なにせXC90自体に試乗するのがおそらく5年以上ぶりということで、あらためてボルボのフラグシップの「今」を知る機会になりました。

 まずデザイン。サイドから見るとより顕著なんですが、プロポーションがとてもスタイリッシュになりましたよね。前輪の位置を従来より10cmほど前に出すことで低く長くなったフロントフードから、伸びやかなルーフラインへとつながっていきます。フロントマスクも刷新しており、ボルボといえばアイアンマークのエンブレム。そのエンブレムを挟んで斜めのラインが並ぶグリルのデザインが、とても個性的だなと感じます。ヘッドライトも、EX30などとイメージを統一するトールハンマーデザインとなりました。

 インテリアはお馴染みの北欧デザインで、とてもモダンで温もりのある空間になっていますが、レザーフリーに取り組むモデルが増えているボルボの中で、XC90にはレザーシートが残されているんですよね。もちろん、スウェーデンとフィンランドの森林から採取された松脂とリサイクル素材でつくられたものや、100%リサイクルポリエステルを使用したファブリックも用意されていますが、「Ultra」グレードは柔らかな高級ナッパレザーのインテリアが標準装備。もはや、本革=高級だという既成概念は崩れているものの、どことなくしっとりとした肌触りはレザーならではかなぁと感じました。

 そして、近年静かなブームになりつつある3列シート7人乗りSUV。でも3列目シートは完全にエマージェンシー用と割り切っているクルマもあれば、身長制限を設けているクルマもあったり、メーカーによって考え方はそれぞれ。ボルボもXC90の3列目シートは身長170cmまでの2名に十分なスペースを提供するとしています。

3列目シートを使用してしまうと、荷物がほとんど積めない! となるモデルもある中で、XC90はたっぷりのラゲッジ容量を確保。3列目シートもしっかりとしたつくりで、乗り心地がよかったです

 実際に座ってみると、まず2列目シートを前に倒してスライドする操作が、少しコツと力はいるもののワンアクションで、3列目へのアクセスはしやすい方だと感じました。座って2列目シートを自分で元に戻す操作もしやすく、「体育座り感」がそれほどキツくないです。クッションはしっかりと厚みがあり、背もたれとヘッドレストの高さは座高番長の私でも大丈夫。2人並んで座ってみても、左右の座面の間に小物トレーが設置されていてゆとりがあり、肩がくっつくようなことがないんです。窓が大きくとられており、ガラスルーフも標準装備。左右の窓際にもドリンクホルダーと小物入れが設置されているので、これなら少しくらい長い時間でもリラックスして乗っていられそうだと感じました。

 また2列目シートには、ボルボならではの「インテグレーテッド・チャイルド・クッション」が標準装備なのもいいですよね。これは4歳以上の子どもが適正にシートベルトが使用できる、つまりジュニアシートの役目を果たしてくれる機能で、家族にジュニアシートが必要な子どもがいなかったとしても、友人のお子さんを急遽乗せてあげることになったとか、お孫さんがたまに来るとか、そういう時にワンタッチで早替わりするのはすごくいいと思います。

チャイルドセーフティに関して、どのメーカーよりも熱心に探求し、商品に反映させてきた歴史を自負するボルボ。このインテグレーテッド・チャイルド・クッションもさまざまなモデルに搭載されています

 さて、XC90のPHEVは、2.0リッターターボエンジンとCISGのコンビをフロントに搭載し、リアに電気モーター、センターに18.8kWhのリチウムイオンバッテリを搭載して、EVだけでも最大73kmの走行が可能。日本で使用するのであれば、都心部で一般道と首都高くらいの速度域なら、一度もエンジンがかからずに走行できるほど、モーター優先で効率よく走ることができるといいます。

 確かに今回は青山とお台場を往復したところ、往路は私が見ていた限りではほぼEV走行だったと思います。帰路でバッテリ容量が少なくなってきて初めて、エンジンがかかったような気配がしましたが、それでも室内はとても静かで、一体感のある上質なドライブを楽しむことができました。あとは1294万円というお値段をどう捉えるか……? 全長4955mm、全幅1960mmのサイズや最小回転半径6.0mの取り回し性能が暮らしの中で許容できるかどうか……? というところ。個人的には3列シートSUVのPHEVとして、すごく魅力的で売れているのも納得です。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。