人とくるまのテクノロジー展 2019

セラミックス技術を用いた「全固体電池」を展示するNGK/NTKブース

EVの安全性向上と航続距離を伸ばすために開発中

2019年5月22日~24日 開催

入場無料

NGK/NTKブースでは全固体電池のサンプルを展示。電解液に代わりセラミックスの粉を用いたもの

 自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」が5月22日、神奈川県のパシフィコ横浜・展示ホールで開幕した。会期は5月24日まで。登録が必要だが入場は無料。

 人とクルマのテクノロジー展には2輪車、4輪車用のスパークプラグでおなじみのNGK/NTK(日本特殊陶業)が出展している。このブースでは未来に向けて開発している製品として「全固体電池」を展示していた。

 現在、EV(電気自動車)などにはリチウムイオンバッテリーが使用されているが、リチウムイオンバッテリーには内部に電解液が使用されていて、この電解液はバッテリーのショートなどで火花が飛んだときに、着火しやすいという面もあった。また高温時、低温時など温度によって使用が制限されるものでもあった。

 そこで、電解液の部分をセラミックスに変えることで安全な不燃性とし、なおかつ高温(100℃)から低温(-30℃)までの広い温度レンジで高い伝導性を維持できるようにしている。

全固体電池の解説ボード

 電解液の代わりに入れるセラミックスは、シート状ではなく粉状にして充填するが、液体とは違って液漏れを防ぐような密封構造は必要ないので、同じサイズのバッテリーでもリチウムイオンバッテリーより電池容量を増やすことが可能になる。すると、EVなどでは電池搭載スペースがそのままでもエネルギー密度を高められるので、航続距離を伸ばせる可能性が出てくる。

 ただ、セラミックスの粉では粉同士の接触面でしかイオンの移動ができないので、イオンが移動しやすい電解液を使用したリチウムイオンバッテリーと比べるとイオンの移動速度の面でおよばないなど、改良すべき余地もいろいろとあって、まだリチウムイオンバッテリーの代替えにはならないという。

 しかし、広い温度レンジに適応するという性能があれば、例えば地球の環境調査において過酷な自然条件のなかで使用する機材用の電源などに適しているので、まずはその方面で使えるものにしていくとのこと。

 EVがさらに普及するには電池の安全性と航続距離の延長が重要課題なだけに、全固体電池の発展には大いに期待したいところである。

コンパクトマルチガス計測器の「NCEM-8016」

 これはコンパクトマルチガス計測器の「NCEM-8016」という機材。自動車開発の現場で使われている排ガス成分計測器は試験場に設置固定するものだが、こちらは同等の性能を持ちながらポータブル、簡易化を実現したというのが特徴。計測の精度について、現在は排出ガスに含まれるススなどの量ではなく、リアルタイムで「ススの数」を計れる精度が要求されているとのこと。これを走行しながら計測できるのがこの機材だ。加えて、車両の走行位置を計測するGPSデータや車両のエンジンの運転状況なども取り込め、すべてのデータを同期して表示することも可能となっている。

「NCEM-8016」の解説ボード
エンジンデータロガーの情報やGPSの位置情報も取り込むことができ、取り込んだデータは同期して見ることもできる
こちらは空燃比センサー。全域での計測が可能。センサー部は排出ガスを内部に取り込む形状とすることで、従来よりきめ細かい計測が可能になっている

 NGK/NTKブースでは、排出ガスの成分を計測するための最先端のセンサーやスパークプラグなども展示しているが、これらはエンジンの燃料噴射技術を進化させるもので、「クルマはやはりエンジン」と考える人にとってNGK/NTKブースは興味深いところと言えそうだ。

シリンダーヘッドの設計の自由度を高めるために開発されたスーパーロングリーチプラグ。同時にリーンバーンに対応するための高電圧対応の性能も追加される
こちらは東京モーターサイクルショーで発表されたオートバイ専用のスパークプラグ。外側電極の断面をD形状にすることで、火炎がきれいに燃え広がるようになっている。社内テストでは30-80km/hの到達時間を従来プラグ装着車より0.2秒短縮。80km/hでこのタイム差は距離にすると約4mなので、見過ごせないほどの効果だ

深田昌之