NVIDIA「GPU Technology Conference 2018」
【GTC 2018】NVIDIA、3D CAD性能を大幅に強化したVoltaアーキテクチャ「Quadro GV100」「Quadro vDWS」最新情報説明会
「Quadro GV100」は、エルザから142万円前後(実売予想価格)で入手可能
2018年3月30日 07:24
- 2018年3月26日~29日(現地時間)開催
- San Jose McEnery Convention Center
自動運転やAI(人工知能)向けの半導体&ソリューションメーカーであるNVIDIAは、3月26日~29日(現地時間、以下同)の4日間にわたり、米国 カリフォルニア州サンノゼ市の「San Jose McEnery Convention Center」において同社製品に関する技術カンファレンス「GPU Technology Conference 2018」(以下、GTC 2018)を開催している。
この中でNVIDIAは報道関係者などを対応に、同社のプロフェッショナル向けGPUとなる「Quadro(クアドラ)」の最新情報を説明した。
同社は、会期2日目にあたる3月27日にジェンスン・フアン CEOの講演を行なったが、その中でQuadroの最新製品となる「Quadro GV100」を発表した。また、同時にVDI(Virtual Desktop Infrastructure)向けのGPUサービスとなるQuadro vDWS(Virtual Data Center Workstation)のハードウェアの選択肢として新たにTesla V100を追加したことを明らかにした。
従来のPascal世代のGPUアーキテクチャに比べて高い処理能力を備えるVoltaアーキテクチャのGPUが追加されたことで、自動車メーカーなどがCATIAなどの3D CADソフトウェアを利用する場合の性能が大きく向上することになる。
搭載メモリが倍になり、GV100を搭載したQuadro GV100
NVIDIA プロフェッショナルビジュアライゼーション 製品マーケティング 上席部長 サンディープ・グプテ氏は、「今回は、オンプレミスのワークステーション向けのQuadro GV100、そしてクラウドデータセンターのGPUを利用するQuadro vDWSの両方にVoltaアーキテクチャの製品を投入した。これにより、顧客はオンプレミスのワークステーションを利用している場合でも、VDIから利用する場合でもVoltaを選べるようになった」と述べ、Voltaアーキテクチャに更新されたのが、今回のGTCでの発表の特徴だと述べた。
今回NVIDIAが発表したQuadroは、どちらもGV100(ジーブイワンハンドレッド)という開発コードネームのGPUダイに基づいた製品になる。GV100は、2017年のGTCで発表されたTesla V100に最初に採用され、その後GeForce TITAN Vなどにも展開されたほか、今回のGTC 2018では搭載されているメモリ(HBM2)が32GBに増量(昨年版のGV100は16GBだった)された製品が発表されている。
オンプレミスのワークステーション用uadro GV100は、PCI Express形状のビデオカードで、DisplayPort 1.4に対応したディスプレイ出力が4つ用意されている。Quadro GV100は5120個のCUDAコアを内蔵しており、32GBのHBM2メモリを搭載。、浮動小数点単精度(FP32)時が14.8TLOPS、倍精度(FP64)時が7.4TFLOPSとなり、前世代のQuadro GP100がFP32時が10.3TFLOPS、FP64時が5.2FLOPSだったので、大きく性能が向上していることが分かる。Quadro GV100は、専用の端子を利用して2枚をNVLinkと呼ばれるGPU専用のインターコネクトで接続して1つのGPUとして利用することが可能だ。この場合は、1万240個のCUDAコア、64GBメモリのGPUとして利用することが可能だ。
また、今回のQuadro GV100はVoltaアーキテクチャになっているので、VoltaアーキテクチャのGPUが必要になるリアルタイム・レイトレーシング機能のRTXに対応している。NVIDIAがすでに投入しているOptiX、今後MicrosoftがリリースするMicrosoft DXR、VulkanなどのAPIを利用してリアルタイム・レイトレーシングを利用することが可能になる。
このRTXが、Quadroのターゲットとなるようなプロフェッショナルアプリケーションからいつ利用できるようになるかについてグプテ氏は、「プロ用のアプリケーションは、コンシューマ向けのアプリケーションなどに比べると数年単位で時間がかかることが考えられる。しかし、多くのISVがレイトレーシングに興味を持ってくれており、今後徐々に実装されていくだろう」と述べ3D CADなどのプロ向けのソフトウェアに入るまでは時間がかかるだろうと説明した。
なお、Quadro GV100の市場想定価格(MSRP)に関してグプテ氏は「9000ドルと想定している、すでにNVIDIA.comで販売開始されているほか、HP、Dell、LenovoなどのOEMメーカーや、日本ではエルザ ジャパンや菱洋エレクトロなどのディトリビュータからも提供される予定だ」とのこと。NVIDIA.comではすでに8999ドルで販売が開始されているほか、国内ではエルザ ジャパンがオープンプライス(実売予想価格:142万円前後)で、4月下旬からの販売を予定している。
Quadro vDWSに関してもTesla V100ベースのVoltaアーキテクチャに進化
NVIDIAのクラウド向けのQuadroソリューションとなるQuadro vDWSに関しても、今回GP100を利用したサービスが追加されることが発表された。具体的にはデータセンターにTesla V100がインストールされ、VoltaアーキテクチャのGPUがVDI環境から利用可能になる。日本でもホンダR&Dの事例のように、データセンターにQuadroやTeslaなどをインストールして、エンジニアのVDI環境から利用できるようにするなどVDIの事例は増えつつある。これまではPascal世代のGPUまでのサポートになっていたが、今後はVolta世代のGPUもVDI環境から利用できるようになることが特徴となる。
性能に関しても明らかにされており、同じ16GB HBM2メモリ搭載版同士の比較で、Tesla V100を搭載した場合は、前世代のTesla P100に比較して、Ansys Discovery Live(リアルタイムシミュレーションツール)で55%の、V-Ray(レイトレーシング)で80%の性能向上が確認できているという。
また、NVIDIAはvGPU(VDI環境で利用できる仮想GPU)が有効になっているVDIで、ライブマイグレーション(クライアントOSが稼働したまま物理的なデータセンター間やサーバー間を移動すること)の機能をサポートすると明らかにした。対象となるハイパーバイザーはCitirx XenMotionで、すでに対応のパッチなどを当てることで利用することが可能になっている。VMware環境では現状サスペンド/レジュームでの対応になっているが、近い将来に提供されるアップデートこちらもライブマイグレーションに対応する予定だと説明した。