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ランボルギーニ、ニュル最速マシン「ウラカン・ペルフォルマンテ」の速さの理由を解説するワークショップレポート
「軽量化」「エアロダイナミクス」「パワートレーン」「シャシー」について解説
2017年6月10日 00:00
- 2017年6月8日 開催
ランボルギーニ ジャパンは、6月8日に渋谷ヒカリエ(東京都渋谷区渋谷)で「ウラカン・ペルフォルマンテ」のジャパンプレミアを行なった。発表会やランボルギーニ首脳陣へのインタビューの模様はすでに公開済みだ。
今回のジャパンプレミアには、ランボルギーニよりアドバンスト・コンポジット部門でチーフを務めるルチアーノ・デ・オト氏も出席。発表会での車両説明を行なっただけでなく、発表会後に開催されたウラカン・ペルフォルマンテに採用された技術に関するワークショップで講義も行なった。本稿ではそのワークショップの模様を紹介する。
ウラカン・ペルフォルマンテのコア技術と言えるのが「フォージド・コンポジット」だ。この技術は、2008年に原材料のサプライヤーが短繊維複合素材の製造を始めたことがスタートになったもの。それまでのカーボンファイバーは長繊維を使ったものが主流だったが、この開発によりランボルギーニは短繊維を用いたカーボンファイバーの可能性を感じたという。
そして2010年にランボルギーニはその技術を製品化し、フォージド・コンポジットと命名。特徴はレジンを母材とし、カーボンの短繊維を埋め込むことで従来のカーボンファイバー・コンポジット素材では不可能とされていた軽量構造の維持や、複雑な構造の実現の両方を可能としたところだ。
フォージド・コンポジットは、まず2013年に「セスト・エレメント」のタブ全体に使用された。2014年には使用する箇所を増やす取り組みを行ない、ウラカンのエンジン・ベイ・コンパーメントやインテリアにも採用。そして今回のウラカン・ペルフォルマンテではフロント、リアスポイラー、エンジンボンネット、リアバンパー、エアロダイナミックディフューザーなど構造的ボディパーツにもフォージド・コンポジットが採用されていて、フォージド・コンポジット非採用ボディと比較すると、車体重量を約40kg削減することに成功している。
エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ(ALA)について
デ・オト氏が次に解説したのはウラカン・ペルフォルマンテに採用されているアクティブ・エアロダイナミクス「エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ(ALA)」について。
リアウイングの角度を走行中に可変させることで空力の特性を変化させるシステムはすでにあるが、それらはウイング自体を動かすためのハイドロ機構や動力も必要になる。そのため、空力の効果はあっても重量が増えてしまうものだった。
それに対してALAでは、ウイング自体を動かすのではなく、ウイングステーに設けたエアインテークからウイング構造内部に走行風を取り入れ、その風を外に排出するときにウイングの上面、下面の風の流れに対して影響を与え、ウイング効果に変化を出すシステム。大がかりな装置が不要なので軽量で済むのも特徴となっており、デ・オト氏は「ランボルギーニはクルマの軽量化におけるリーディングカンパニーでもあるので、性能を求めるためとは言え重量を増やすわけにはいかなかった」と付け加える。
さて、そのALAの動作だが、機能のON/OFFはエアインテークの入り口に付けてある電動バルブを制御することで行ない、バルブが閉じた状態(ALA OFF)ではウイングを流れる風はウイングによって車体後方に跳ね上げられ、高いダウンフォースを生んでいる。この状態では高速時のコーナリングにおいて高い安定感を生むが、高速域の加速時やトップスピードを伸ばしたいときには抵抗になるという面もあった。
そこでALAをONにするとバルブが開き、走行風をウイング内のダクトに取り入れる。ダクトに入った空気はウイングの下面に設けられたスリットから外へ排出されるが、このときの空気の流れがウイング下面とウイング上面の空気の流れに変化を与え、ウイングでのドラッグを軽減する。これによって加速力やトップスピードを伸ばすことが可能になるということだ。
エアロ・ベクタリングについて
ALA仕様のリアウイングにはもう1つ特徴があった。それが「エアロ・ベクタリング」という機能が使える点だ。
このエアロ・ベクタリングとは、ウイングに掛かる空気トルクを左右で変えることができるというもの。使用例として挙げられたスライドでは、コーナリング時にトラクションが抜け気味になるIN側のリアタイヤに対して、イン側のウイング面に大きな縦の空気トルクを掛けてトラクションを向上させることが表されていた。
これを実現するために、ウラカン・ペルフォルマンテのリアウイング内部構造はセンター部を境に2つの部屋に分かれていて、ストレートの加速時などでは左右の働きは同調しているが、例えば右コーナーを曲がる時は「右のインテークのみ」バルブを閉めることで「ウイング右寄りの風の流れのみ」がダウンフォースが強い物となる。すると右タイヤのトラクションをアップさせることができるというわけだ。
同様に、左コーナーのときは左のインテークを閉じればウイングの左面のみダウンフォースが強く出るということだ。このインテークの開け閉じはECUによって最適に制御されるので、ドライバー側での操作は一切必要ない。デ・オト氏は「ドライバーは楽しむだけ」と語っている。
V10エンジンおよびシャシーについて
ウラカン・ペルフォルマンテは、エンジンについてもパフォーマンスアップがされている。エンジンの主な変更点を挙げると、まずエアインテークの形状を見直している部分がある。これによって吸入時の圧損による吸入ロスが19%も削減したという。
エンジン本体にも変更があり、チタン製バルブを採用したのと同時に、バルブリフト量を高めて(ウラカン LP-610が11mmリフトに対して12mmリフトへ変更)吸排気効率をアップ。ちなみにレブリミットに変更はない。
また排気系も見直され、成果として排圧が180ミリバール低減されている。排気系は効率のアップだけでなく軽量化も行なっていて、排気系まわりのパーツ重量はウラカン クーペ用より10kg軽くなっている。
こうした変更の結果、エンジンはウラカン LP-610対して最高出力で30PS向上の470kW(640PS)/8000rpm。最大トルクは40Nmアップの600Nm/6500rpmとなっている。
このエンジンに対して駆動系も最適化。トランスミッションは7速デュアルクラッチトランスミッション「ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ(LDF)」。ウラカン・ペルフォルマンテは電子制御の4WDを採用しており、走行シーンに合わせて前後トルク配分を切り替えることが可能になっている。
切り替えはステアリングに付くスイッチで行ない、モードは3つ。基本モードである「ストラーダ」では前後のトルク配分はフロント30%/リア70%のトルク配分となり、「スポルト」にすると約100%のトルクがリアに配分される。そして「コルサ」モードにすると走行状況に応じて配分されるという内容だ。
以上がワークショップで語られた内容になる。ウラカン・ペルフォルマンテには高剛性で軽量な構造と革新的な空力システム、そしてハイパワーなエンジンにそれを生かすシャシーが採用されていることがよく分かるものだった。